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46.ラスボス

2022/2/12 3話目の投稿です

「ああ、こういうことか」


 安村の記憶を読んだトーマは安村の言葉の意味を理解した。

 人間、大人も子供も大した違いはない。まともな人はわざわざ他人の欠点を探してあげつらうようなことはしないが、まともでない少数派は概して声が大きく徒党を組む。子供よりも大人の方が情報収集力があるだけタチが悪いこともある。

 これは安村の主観的な記憶であることを踏まえてもどういう扱いをされていたのか想像がつく。

 トーマは岸辺当真の記憶を一部取り込んだため自分で経験したかのように感じることができる。弱い馬鹿ほど自分より弱い立場の相手に酷なことをすると痛感していた。

 基本的にトーマの権限は夢の世界の中だけで有効なものだが、試してみたところ夢の世界を知っている人、強く現実逃避を望んでいる人の記憶には触れることが出来た。

 触れて伝わる記憶はあいまいなものだが、夢遊症罹患者は多かれ少なかれ安村と同質のストレスを抱えていた。ただの被害妄想ではないことは明らかだった。


「よし、決めた」

「トーマ、どうしたの?」


 ベッドから立ち上がったトーマに声をかけてきたのは沙雪ではなくフィオナだ。必要なやり取りを終えた沙雪は夢の中で微睡むことにしたらしい。なんでも、トーマのそばに自分がいるのは解釈違いなのだとか。


「悪魔たちへの対応を決めたんだ。今も安村さんを目覚めさせようと何かしてきているし、次の戦略を練っている頃だと思う。だからこっちもやりようを考えてたんだけど、今決まった」

「今のトーマなら悪魔が何人来てもどうでもできそうだけど」

「力でいくら倒しても次が来るだけだからな。ここらで綺麗に終わらせる」


 一度夢の世界で殺された悪魔は夢の世界へ戻れない。

 安村の例がある以上絶対ではないが、再侵入できる人が希少なことは間違いない。

 とはいえ、国都大学の研究所は人を雇うことで増員が可能だ。無尽蔵ではないだろうが底が見えない。

 いくらトーマが強くなろうともいつどこで誰が襲われるか分からないのではストレスが溜まる。何かしようと考えているところに水を差されたら困る。


「悪魔をこの世界に入らせない方法があるの?」

「ある。ちょっと手間はかかるけどな」


 安村の記憶を読んだことで悪魔がこの世界に入ってくる方法が分かった。安村自身が詳しい理屈を理解していないのでざっくりした情報だがそれで十分だった。

 夢想世界は全ての人の意識と繋がっている。接続の強さに個人差はあれど、誰もが夢想世界に立ち入る素養を持っている。

 ただし、普通に生きているだけなら夢想世界に立ち入ることはない。繋がっていると言ってもそれはひどくおぼろげで、そこにあると知っていても気付くことが難しいくらいか細い繋がりでしかない。

 よしんば繋がりを辿ったとしても夢想世界の門は固く閉ざされている。本人がよほど強く望まない限り門が開くことはない。

 夢遊症患者とは夢想世界との繋がりが深く、現実以外の世界を強く望んだことで夢想世界の門を開いてしまった人のことである。

 対して悪魔は、暗示で思考を、機械で脳波を誤魔化すことで世界を騙し夢想世界へ侵入している。

 余談ではあるが、悪魔たちは夢想世界へ入る手法は確立しているが、どういう理屈で夢の世界へ入っているかおぼろげにしか分かっていない。麻酔と同じである。

 失礼な話ではあるが、トーマにとっては安村の身の上よりも安村が悪魔たちから受けた研修内容の方が勉強になった。


「安村さんが見せてくれた記憶の中に良い情報があったから活用させてもらう」

「私に手伝えることはある?」

「俺ひとりで十分だから大丈夫。そもそも俺がやることだってあんまりないからな」

「そうなんだ? 何をするの?」


 問われてトーマはにやりと見るからに悪そうに笑った。


「ラスボスになるの」


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