さすがに同情なのじゃ。
「それじゃあそろそろ行きましょうか?」
「うん、そうね。」
第1試合が終わり、第2試合の召姫と時雨が立ち上がる。
「それじゃ、寿春くんまた後でね〜」
「はーい、いってらっしゃーい。」
そう言って、2人が下へ向かう。そうして、一人で退屈していた寿春に声がかかる。
「隣…いいかしら?」
声の方向に視線をやると、そこには【屋頭輪】がいた。
「あぁ、もちろん。どうぞ。」
寿春の言葉を聞いて、輪は無言で隣に座る。
「さっきの戦闘を見て、貴方はなにを思ったのかしら。」
輪はアリーナの中心部にいる光莉と狛を見据えながら問う。
「え?そうてすね…ダークマター、チート魔法かと思ったけど、消費魔力も多いし、あそこまで精密に扱えるのはなかなかできないなって思いましたね。」
「そうね。夜原狛は、好奇心旺盛で裏表のないように見えて、狡猾よ。魔力操作で魔力総量が少ないかのように見せているのだから。それを初見で見抜くあたり、流石だわ。」
以前狛と関わりがあったのだろうか。輪は彼女のことを淡々と語る。
「以前から狛さんと関わりがあったんですか?」
「まあ、そんなところね。」
「なんだか、クラスに知り合いがいるの、すごい羨ましいです。まあ、僕には姉がいますけど、やっぱり唯一の男ってのは浮いてる気がして…」
そう言う寿春に、輪は即答する。
「浮いてるわね。」
「えっ?!ま…まあそれはそうなんでしょうけど…」
「人類初の魔法が使える男なのよ?浮いてないわけないじゃない。ただ、安心しなさい。それも、時間の問題だわ。」
「そうですかね?ならいいんですけれど…」
「それと、一つ言わせてくれないかしら。」
「?なんですか?」
「敬語…私には辞めてくれないかしら。」
「あ、そうですか?わかりました。あっ…わ…わかった…」
「ゆっくり慣れていってくれれば構わないわ。」
「わかった…ありがと!」
そう言った寿春の心の中では、
(この輪さんは…何回目なんだろ。口ぶりからして、巻き戻ってきてる可能性は高いと思うけど…)
(っ……)
(ん?お姉ちゃんどうかしたの?)
(いや、なんでもないわ…)
「ほら、そろそろ第2試合が始まるわよ。」
視線を中央にやる。そこには、既に召姫と時雨が向かい合って待機しており、少し空気がピリついているのを感じる。そして、互いに変身を始める。時雨は特になにかを持っている様子はないが、召姫は手に槍を持っている。
「では、第2試合はじめ!なのじゃ〜」
はじめの合図とともに、召姫は魔法陣を2つ展開する。その間に、時雨は手で指鉄砲の形を作り、その指の先から魔法陣が現れる。
「《スターウルフ》!!《ステラアウル》!!」
「《エアショット》!!」
召姫の近くに、大きいオオカミ(スターウルフ)とフクロウ(ステラアウル)が現れる。時雨は、空気の塊を圧縮して召姫に放つ。召姫はすかさず槍で弾く。
「だよね…じゃあ…私の得意で戦ってもらおうか!」
時雨がそう言うと、時雨はとんでもなく高く跳躍した。詠唱もなしに、あそこまで跳躍できることに皆驚いている。
「どうやってそんな跳んだの?!もしかして…結構鍛えてたり?」
「それはトップシークレットだよ!」
そう言いながら、手を頭上に掲げる。大きな魔法陣が出現し、時雨は叫ぶ。
「《マシンガンレイン》!!」
目には見えない空気弾が、無数に放たれる。召姫はスターウルフに乗ると、空中を駆けながら回避する。その弾幕をかいくぐったステラアウルが時雨に攻撃を仕掛けるが、既のところで回避され、ステラアウルは空気弾をもろに食らってしまう。
「あそこまでの跳躍力…すごいね」
寿春がぼそっと呟くと
「いや、あれは彼女の【魔導具】によるものよ。」
魔導具とは、変身時に獲得する専用の武具のこと。
「え?でも、時雨さんに魔導具なんて…あ!」
「そう、彼女のあのブーツ。あれは魔導具なんじゃないかしら?跳躍力を強化する効果があると予測できるわね。」
「なるほど…たしかにその可能性はあるか。」
今も時雨は空中で足場を作り、不可視の空気弾を乱射している。ステラアウルを即撃沈させたところか、火力は申し分ない。しかも、ブーツのおかげで移動速度が非常に速い。そのため、接近できてもすぐ距離を取られてしまう。時雨が圧倒的有利だ。
「んー…さすがに降参かな…」
そう召姫が呟く。だが、時雨は言う。
「召姫ちゃん…手抜いてたりはしない?」
「え?」
「なんだかね、奥の手がありそうな雰囲気するのよね。勘違いならいいんだけれど…」
「いや、これは…さすがに可哀想っていうか…」
「情け無用!やるなら全力できてよね!」
「ほ…本当にいいの?」
「もちろん!」
「後悔しないでね?」
そう言って、召姫はスターウルフを解除し叫ぶ。
「あ…《アストラルスパイダー》」
その言葉と同時に、大きなクモが出現する。時雨の顔が少しずつ青ざめていく。
「…………え?」
クモが動き出そうとすると
「まって!!無理無理無理無理無理無理!!」
そう言ってさっきより断然大きい魔法陣を展開し
「こっち来ないでぇ!!!《ブレイクキャノン》!!《ブレイクキャノン》!!《ブレイクキャノン》!!」
明らかに魔力消費が尋常じゃない大技を連発する時雨。しかし、アストラルスパイダーは自身の糸で防壁を作り、すべての弾の威力を殺し切る。そして、魔力不足になった時雨は、そのまま落下してしまう。落下地点にクモの巣を張ってあったため怪我はないが、精神的に満身創痍であった。
「しょ…勝負あり!勝者…召姫…なのじゃ!」
さすがの凪先生も同情の視線を時雨に向けている。
「まあ、初見はあんな反応になるよね…私もそうだった…ごめんね?」
そう言って召姫は時雨に手を差し伸べている。
「えげつないわね。やっぱ沙倉召姫とは戦いたくないわね。」
輪がボソッと呟く。




