冷徹と狡猾
「そろそろ行きましょうか。」
「りょーかーい。」
そんな会話をしながら席を立つ。
「頑張ってき〜!」
そう光莉からの声に、
「ありがと〜」
と軽く返して下へ向かう。
「そういえば、輪さんはどこ出身なの?」
向かう最中無言であったため、なんとなく話しかけてみる。
「私は新潟出身よ。」
「あ、意外と近いね。僕は長野なんだよね。」
そこで会話は終わってしまう。
「あ、お疲れさまです。」
寿春が向こうから歩いてきた、気まずそうな召姫とげっそりとした時雨に声をかける。
「お疲れさま。今からだよね?頑張って…」
げっそりとした声で時雨が言う。
「大丈夫なんですか?」
「うん、大丈夫だよ…」
そんなことを話していると、輪は寿春の手を握って
「道草売ってないで行くわよ。」
寿春はそのまま戦闘場まで連行された。残された2人はポカーンとした表情をしている。
「あの2人距離近くない?」
「ね、思った。」
しかし、寿春は特になにか思うことはなかった。鈍感というわけではない。彼は恋愛に全く興味がないのだ。彼には、恋愛をしている暇などないのだ。そして、2人は手を繋いだまま戦闘場に着く。先生や観戦席の光莉も少し困惑しているようだ。狛はマイペースに鼻歌を歌っている。互いに向き合い、寿春は変身を始める。彼は黒と赤をベースとした色の軍服で、黒と赤の上着を羽織っている。また、軍帽を被り腰には日本刀を携えている。しかし
「あれ?輪さん変身しないの?」
見ると、輪は変身していない。
「私はこれでいいのよ。先生、始めてちょうだい。」
「え?でも…なぜ変身しないのじゃ?」
「とにかく、私が良いと言えばいいの。」
「まあ、わかった…。それでは!第3試合始め!なのじゃ〜!」
一瞬のことだった。気づいたときには、輪は寿春の眼前にまで迫っていた。そして、彼女はいつの間にか変身をしており、黒いローブを羽織り、下には白黒の服を着ている。そして、手に持つ大鎌で寿春を両断しようとしていた。
「うぉあっっ!!」
なんとか刀で防ぐことに成功し、大鎌をはじき返して距離を取る。
(すごいね。あの一瞬で変身してみせた…しかも、この身体能力は魔法じゃないよ。)
心の中でそう言う舞冬に、寿春は
(なんとなく察してたけど、マジか…)
「いや、びっくりだよ。まさか、魔法を使わずここまで動けるなんて…」
その頃、観客席では…
「え?なに今の?!マジヤバくない?!」
「嘘でしょ…あの一瞬で変身を…?」
「魔法なしであのスピードなわけなくない?!」
「わ〜!速いね〜すごいなぁ〜」
と言った反応をしている。そんな中凪先生は…
(今年の1年は豊作じゃのう。平均的の実力が非常に高いのじゃ。特に、鏡姉弟と屋頭輪…この二人別格じゃな。ワシも手を抜いたら負けかねないだろうしのう。しっかし、輪くんは狡猾よのう。鏡姉弟に自分が近接主体と悟らせぬために変身せず、スタートの合図と同時に神業と言えるほどの速度で変身するのじゃから。)
「すごいね…輪さん…こりゃ、手加減してるようじゃ死にかねないね…」
「元より、手加減なんてするんじゃないわよ。」
「じゃあ、そのお言葉に甘えて…」
寿春の優しい雰囲気がなくなり、威圧感が増したように輪は感じた。
「全力でいくぞ。」
それからは、尋常じゃない速度の近接戦闘が展開される。観客席では…
光莉は興奮気味に
「まって!速すぎ!追えないんだけど?!」
時雨は驚愕して
「寿春くんはまだしも…輪ちゃん…化け物過ぎない?」
狛はニコニコと
「速いね〜光同士がぶつかり合ってるみた〜い」
召姫は諦めの苦笑を浮かべている
「そうだね〜速すぎだよねぇ…」
一瞬、輪の大鎌より寿春の刀のほうが速く動いた。刀は大鎌をはじき飛ばし、大鎌が輪の手から離れてしまう。寿春は、その隙を見逃すはずがない。峰打ちではあるものの、輪の首元に刀を当てて
「まだやる?」
と吐き捨てる。
「いいえ、これは流石に私の負けだわ。降参するわ。」
「勝負あり!勝者!寿春なのじゃ〜!」
なぜか寿春には、勝者に負けた輪はどこか嬉しそうにしているように見えた。その後、全員が下の戦闘場に集められた。
「魔法少女は、チームで活動をしていることは知っているかのう?6人1チームで、担当の区域の魔族の討伐を協力して行うのが主流じゃのう。そのチームは、この学校のクラスがそのまま反映されることがほとんどなのじゃ。1年生の間はチーム内で戦闘訓練をして、お互いの改善点を模索していくのじゃが、2年生以降は他クラス…つまりチーム同士で対決することになるからのう。1回1回の授業を大切にするんじゃぞ。それでは、2時間目の授業を終了とするのじゃ。次の授業は寮案内じゃから、教室の荷物をまとめて寮に集合なのじゃ。終わり次第、本日は解散とするからのう。」
そう言って、凪先生は体育館を出ていった。他の皆も、後を追うように体育館を後にした。




