野郎には野郎なりの悩みとかがあったりなかったり
「────ん……」
夏休みも始まってから7日目だが、今日も飽きずに朝が来た。 最近暑いからか目覚ましより早く目覚める。
毎日毎日どうせ沈んで夜になるってのに、お天道様は懲りない。 眩しいし暑いしギラギラサマーだし。 要するに暑い。
だとしても起きなければ今日は始まらないし、明日は来ない。 正直このまま布団の船で微睡みの海を漂いたいが、世界がそうは許してくれないので起きよう。
まったく、今日は素敵な日だ。
庭では植えた向日葵の花が咲いてる。 小鳥たちも囀ってる。
こんな日にはお前みたいなヤツは地獄で燃えてしまえばいい。 あー唐突なGルート始まっちゃったかー。 まぁ言うてこのセリフ終盤だけど。
それにしても暑い。 これは本当にG(GIRAGIRA)ルート始まったか? 夏君毎年毎年本気出さなくていいよ。 ずっと言ってんじゃん「ここ10年で1番の猛暑」って。 猛暑猛暑もういいっしょ。
さて、俺の頭が今日も絶好調だと分かったところで、だ。
「……すぅ……すぅ……」
暑い理由八割くらいコレのせいなんじゃないかな。 なぁそう思うだろ夏だってのに人にしがみついて寝てるお猫さんよォ?
重政ですらちゃんと自分の寝床で寝てるってのに、紅葉さんは今日も今日とて人の寝床に潜り込んで我が物顔。
「…… (スリスリ)」
紅葉さんいつもの。 一緒に居たいのは分かるけど、俺の右腕がそろそろ血を欲してるから離れて欲しいな。
あと酸素も欲してる。 厨二病かと思ったらうっ血だった。
それにしても紅葉ちゃんってば下着姿で寝て…………風邪引いちゃうでしょ。 暑いから脱ぎたくなるのは分かるけど、我が家は重政の為に涼しいし寝る時は体温下がるんだからちゃんと服着ないと。
チャーグル!!
よし、腕抜けた。 紅葉には変わりに抱き枕でも抱いてもらおう。
おぉ、右腕に血が満たされていく。 我が怒りを右腕に!
血が巡り始めたことでなんだか右腕が輝いてる気がする。
あ、蚊。
\ヒオコシハマカセロ!/
蚊が焼いてる方でしたか。 人の腕で何ピザ焼いてんだコイツ。 潰そ。
早速殺生を行った訳ですが、まぁ大丈夫だろう。 「一寸の虫にも五分の魂」と言う言葉があるけど蚊は所詮畜生だし。 こんなんで地獄に落とされてたら閻魔様まいっちゃうよ。
死後の審判でも控訴とかあるのかしら。 あれ最大10回やるけど、それぞれ一審全部で十審なのか、全部合わせて一審になるのかで変わりそうだよね。 朝から何の話?
そんな脳内雑談をしてる間に本体は養父っと着替え、義母っと朝の鍛錬へと向かう。 なんか複雑なご家庭そう。
そんな私と彼女は異母兄妹。 夫が多妻な事を認める異母の意図とは。 なんか素麺みたいになった。 奏士君異母モノはそこまで。 結局は他人の女だし……人のモノ盗っちゃダメってポケモンで習うだろ普通。
…………行くか。 そろそろ莇もランニングから戻ってくる頃だし、道場開けなきゃな。
「すぴー……」
……………………いいなぁ。 俺も涼しい部屋で寝てたい。 紅葉の鼻提灯が今は羨ましい。
でもそろそろ必殺技編み出せそうだから鍛錬したい自分もいる。 貴方未だにそんな事してらっしゃるの? 暇は人を狂わせるものだよ。
まぁ俺の場合は生まれた時から狂ってたけど。 狂って狂っってクルクル回って最終的に踊り狂って死のうとしたら無理矢理止められた感じだけどね。
────────────────────────────
「…………むぅ」
「にゃ? (んだ?)」
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「……あ゛っづぅ…………」
何度拭っても止まらぬ汗をまた拭う。
空調完備な我が家において唯一、年中過酷な場所。 その名は道場。 別名サウナ。 サウナみたいな道場なのか、道場みたいなサウナなのか。
でもサウナってより砂漠に近いかも。 夏は暑いし冬は寒い。 夏を朝と仮定した場合だけど。
「奏士殿の場合、暑さの理由は大半がその長い髪では?」
共に鍛錬に励む莇も涼しい顔して汗ダックダク。 汗を拭うこの仕草ですら何故か男として負けた気がするのは何故だ? 顔か? イケメンだからこうも違うのか?
「こんなもん切っても大差無い。 毎年毎年ニューレコードかましてくる夏が悪い」
「それはそれとして切ればよろしいのでは?」
「…………こうも付き合い長いと愛着がなぁ……あと重政が俺と認識してくれるかどうか」
ある程度は匂いと気配で察してくれると思うけど、猫ってのは急な変化が嫌いだしな。 重政が俺だと分からず威嚇したら────────あー考えただけでゲロ吐いちゃいそう。 ゲロゲロゲロゲロクワックワックワッ。 あれゲロ吐きすぎて目をかっぴらいてる歌じゃなかったっけ?
「大丈夫では? シルエット1つで変わる程浅い関係でもないでしょう」
「いーや分からんぞ。 俺は紅葉やベルが髪切ったら人見知り発揮する自信がある」
「お嬢様は兎も角、紅葉殿は貴方の恋人では?」
恋人……恋人かぁ…………
「どうしました? 苦い顔を……とてもブサイクになっていますが」
「うーむ……いやなぁ…………」
「……あ、申し訳ない。 ブサイクなのは元からでしたね」
「君は踊り狂って死ぬ♠」
「これは失礼。 私がイケメンだから相対的にブサイクなだけで、奏士殿はフツメンでしたね」
「君は死ぬ」
踊り狂う暇すら与えず消す。 アーラ不思議♥ 莇が消えちゃった♠ まぁやってることは同じか。 腕だけか本体もろともかの違いなだけ。
「おっと冗談が過ぎましたね。 では私はこの辺で。 先にシャワーお借りします」
「まぁ待て。 シャワーなら後で血を好きなだけ浴びせてやるから少し付き合えよ」
「奏士殿の返り血ですか?」
「お前のだよ」
何コイツ最初から勝ちを確信してんだ? 勝ち誇った時、そいつは既に勝ち誇ってるんだぜ? ジョースターじゃなくて小泉の方だったわ。
「たまには相手しろよ。何だかんだで最近組手してないだろ」
「組手と言いますが、あなた毎回変な技を試し打ちしてるだけでマトモにやったのは数回ですが」
だってこんなにも条件満たしてるヤツそうそういないんだもん。
・ある程度動けて
・そこそこ強くて
・頑丈で
・殴っても心が痛まない
練習用サンドバッグとしては上出来だよね。 やっぱシャドーボクシングじゃなくて実戦に限る。
「今日は何を試すおつもりで?」
「今日は文具で行こうと思う。 ペンは剣よりも強し、これぞ文武両道だ」
「そんな文武両道を認めるほど世界は大らかでは無いかと」
大丈夫、俺が認めればそれは文武両道だ。
というか、俺漫画家でもあり一流派の師範代でもあるから文字通り文武両道だよな。 なら俺が何をしようとそれは文武両道にならないか? ならないか。 何時になれば僕は師範代から師範になれるんですか?
「ちなみにボールペンは配慮してフリクションにしてある。 タトゥーみたいに残ったら面倒だし」
「どっちにしろダメージ変わらないのでペンは捨てて欲しいのですが」
え〜
じゃあ定規とか使うか。 小学校でしか見ないクソでかい分度器の盾とクソデカ定規の剣だ。 うーわ俺めっちゃクソガキ。
「……それ買ったんですか?」
「ああ、1つ1万した」
両手合わせて2万5千弱の出費。 なお、今後こいつらの出番は未定。
「この為だけに?」
「…………まぁいつか使う時が来るだろ」
多分紅葉に貸したら嬉々として振り回す。 あの娘は感性が男寄りなんだ。 少年ハート持ち合わせてるからデカイ物は好き。
「あまり無駄な買い物を増やすと苦労しますよ。 結婚資金や養育費がありますし」
「大丈夫だろ俺金あるし」
どうも、出る金も入る金も馬鹿みたいな額な私です。 奏士君の才能はもしかしたらこの頭脳じゃなくて金を稼ぐことなのかもしれない。 頭脳の副産物か。
「……じゃあ行くぞ。 くたばりあそばせっ!」
「いえ私まだ素d危なっ!!」
「ちぃ!」
莇が武器を取る前に脳天直撃唐竹割りで仕留めてやろうと思ったのに。 流石に何度も組手してるから徐々に読まれてるな。
「くっ、あなたがそう来るなら私も遠慮はしません!」
莇は上手いこと躱しながら武器のかかった壁まで移動し、四節棍を構える。 珍しい。
「何だ急にヌンチャクなんか使って。 ボディーガードから中国拳法に味変か?」
「いえ、先日華さんと功夫映画を見た際に面白そうだな、と」
「ふーん…………ちなみにどこで映画を見た?」
「華さんのお部屋でですか?」
「……その後は?」
「華さんにチャイナ服を着せましたが」
「なるほどなるほど…………そういや、まだお前の誕生日祝ったことって無かったよな。 今から祝ってやるよ」
「いえ結構です。 あと私の誕生日はまだ先ですが」
「何言ってんだ。 今日がお前の逆誕生日だ」
「それは要するに命日ではっぶな!」
クソッ! 一息で3回斬ったハズなのに神回避された。 切れたのは髪だけか。 やっぱ使い慣れない武器だとまだ馴染まないな。
※授業用定規は武器ではありません。
「避けんな! 首だせ首だせ首を出せ!」
「私の知る限り、カタツムリの歌はそんな殺意の高いものではなかったハズでは!?」
「日本には古来より『替え歌』という文化がある!」
定規で斬り、分度器で受け止める。 「面白そう」で選んだのに莇はもう棍を使いこなしている。 やはり積み重ねた土台の差か。
あとはまぁ、俺のが本来武器じゃないからか。 分度器は持ち手があるからいいけど、普通に定規持ちにくいわ。
「どうせしたんだろ? チャイナ服着せたあと『イっチャイナYO!』とか言ったんだろ? 『このチャイナ服丁度いい穴あるじゃねぇか』とか思ったんだろ?」
「何を見てきたかのように!」
莇の攻撃を受け止める度、徐々に分度器の傷が増えて振動が腕にまで伝わってくる。 やっぱ武器じゃないから脆いな。
「こっちはよォ……色々ラインとか立ち位置とか考えて苦悩しながら対応してるってのによぉ…………今日こそ俺の逆恨みを受け止めろ!」
「なんて醜い逆恨み! 貴方要するに傷付ける覚悟も離れる覚悟も無いカスではないですか!」
「おい正論やめろ。 今の俺には特効薬より効く」
4倍弱点くらい効く。 例えるなら悪岩に格闘かました時くらい効いてる。 なんか例え的に割と耐えそう。
「他人から始まったお前とは違ってなぁ……こっちはある程度お互いさらけ出した後な上、複雑に絡まりすぎて下手に動かすと後戻り出来なくなるんだよ。 難しい時期なんだよ」
「それ以前に、奏士殿が紅葉殿をちゃんと女性として見てないのが原因では?」
「なんだ? ヌンチャクから正論に武器でも切り替えたか? さっきから異様に刺さるぞこれ。 防御貫通とかマジかよ」
スッゴイ痛い。 分度器構えてるのに容赦なく刺さる。 僕正論言われるの嫌い。
「前々から思っていましたし、お2人がお付き合いを初めてからこの一週間嫌でも見てましたが…………貴方、流石に紅葉殿に任せ過ぎでは?」
ほーうなるほどなるほど。 さては精神攻撃の使い手だな? オラそんなメンタル強くねぇだよ。 復興早いだけで壊れないわけじゃねぇんだ。
「受け身と言いますか……あくまで求められたから受け入れているだけで自ら手を伸ばすことはしていませんし」
聞いてた? オラノメンタルハボドボドダァ! あと1回されたら崩れちゃいそう。
「言うなれば、奏士殿はあまりにも冷静過ぎる。 付き合いたての高揚感も浮いているような緩さも無い。 未だに紅葉殿を飼い猫か娘のように見ている」
あーあ、どうしよう。 正論の嵐で奏士君の心壊れちゃった。 貴重な残機が1個減っちゃった。 それ実質メンタル不死身では?
莇の精神攻撃に攻撃の手も止まっちゃった。 これ以上は俺が可哀想だからやめよ? どこまでも自分大好きか。 大好きだ!
「もっとこう……多少は男としての欲を前に出さないと女性は離れてしまいますよ? 流石の奏士殿も、2次元がどうだとか言い続けるほど甘い覚悟の持ち主ではないでしょう」
いえ今でも2次元の方が好きですが? なんか買われてるみたいだけど、奏士君根本がカス野郎だから仮に紅葉がベルに変わったら容赦なく2次元に行くよ?
「……なんかなぁ…………紅葉の想いも分かってはいるんだけどな。 イマイチ踏み切れないというか今までが酷すぎて引け目を感じてるというか」
「ただ恥ずかしがってるだけでは?」
「言うなよ。こちとらプロはプロでも所詮童貞。 理解と実行は別モンだ」
あとやっぱ、どうしても紅葉を妹の大事な人、即ち『保護対象』として見ちゃってなー。 ここら辺が難しいんだ。 男である前に兄であろうとしちゃう。 守護ろうとしちゃう。
「……まぁ、貴方には貴方の速度がありますし、焦っても仕方ない部分もありますが────」
そう言いながら莇はスマホを取りに行き、誰かと通話をした後戻ってきた。 何何? 公開処刑の準備?
「貴方には華さんとの一件で手を貸して頂いた恩がありますので、ここで返すと致しましょう」
「……何かしたっけ」
やべぇガチで何も覚えてない。 なんかムカついたからウッキウキでコイツ殴った気はするけど後は殆どゴルゴってた記憶しかない。
「では私はこの辺で。 お嬢様を起こしに行かねばなりませんので」
「いや、お前一度もそんな事してなかっただろ」
「気まぐれです。 奏士殿は朝食の準備をお願いします」
「は?」
「奏士殿。 私もまだ半年ですが、女性は優しくするだけが優しさではありませんよ」
「は?」
莇は武器を戻し、タオルを取って道場を出る。
……俺何されんの? 遺書の更新してないから準備期間欲しいんだけど。
ところで、俺の鬱憤はどうすればいいの? この定規と分度器次いつ出すか分からないのに? 高い買い物だったのに?
えぇ…………どうしよ。 とりあえず部屋帰って重政にじゃれつこ。
はいどーもみなさんこんにちは
人間は頑張っても5連勤までが限界だと常日頃から思う作者です。 6連勤から毎回頭おかしくなります。
今何故か頭が下ネタとブラックジョークに支配されているので、下手なこと言う前に退散します。 それでは




