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畜生はどうやったって所詮畜生

人生最後の夏休みだってのに、その初日を読書で埋める名采配。 だって外暑いし。


解放した障子から入る風と、心地よい風鈴の音。


庭からは蝉の声が忙しなく鳴り響き、ページを捲る音と見事なコントラストを演出している。


隣には冷えた麦茶と山積みの本。 回る扇風機と、風を独り占めしようとする重政。


そして、背中を支えるのはお手製ダメにするクッション。


完璧だ。 これ以上無いくらい完璧な休日だ。 今俺の幸せメーターが見えるのなら90はキープしているだろう。


夏休みは隅から隅まで謳歌するのではなく、約40日という数に物を言わせた無駄使いこそ真理。 焦ってものんびりでも同じってフ○クブックローで言ってたし。


日々の忙しさを忘れるこの安息。 今日1日は買い出しも、掃除も、仕事も、何一つ手をつけない。 今の俺は無敵だ。


思えば、職権乱用で学園に入らされてから数年。 なんやかんやでロクな休みが無かったが、学園に入る前は毎日こんな感じだった気がする。 俺は今、俺を取り戻したんだ。


強いて言えば、取り戻す過程でとんでもないオマケが付いてきたくらいか。


「ん〜っ♪」


「重い。 邪魔。 退け」


「……絶対に嫌 (スリスリ)」


こんな感じでクソデカオナモミがね。 人の上にずっと居座ってる。 具体的には飯食って読書始めた時から。 つまり最初から。 なんなら昨日から。


厄介すぎる銀色のオナモミこと紅葉さんは、人がクッションに背中を預けたと分かると退路を封じるかの様に人に跨ってやりたい放題。


背中に腕を回して精一杯のハグから始まり、頬擦り、匂い嗅ぎ、服を捲って地肌へダイブ。


紅葉の座ってる位置が怪しいが、まだ挿入ってないからセーフだと思いたい。 これ密着騎乗位と対面どっちだ? 俺が完全な仰向けじゃないから分からん。


「紅葉、服を捲るな。 次中に入ってきたら庭に追い出すぞ」


「……奏士が前をそんなに開けてるのが悪い」


えぇなんか逆ギレされたんだけど。 緩めにしないと夏場暑いやろがい。


「……普段は作務衣なのになんで今日は甚平?」


「その日作業するか休むかで変わる。 あと気温」


作務衣はね、どうしても甚平に比べると通気性で劣るというか、甚平が日本の猛暑を想定して作られてるから何もかも優秀すぎるというか。


俺の感想だけど、甚平は冬場でも中に着込めば暖かいから年中優秀。 足を除いて。 上半身は暖かいけど足クソ寒いで。 ミニスカJKの気分。


「君の無駄な視力とシワの少ない脳でも分かると思いますけど、こう見えて僕読書中なんですよ」


「……それは言われなくても分かる」


「それは良かった。 なら読書中の人を邪魔してはダメって事もわかってくれるかな?」


「……『ずっと一緒』って約束した奏士は例外」


なるほどクソカス高利貸しより悪徳すぎる。 マジで長野の祖父母宅に追い返したろか。 クーリングオフしたい。 まだ2日だしできるだろ。


「『ずっと一緒』とは言ってないし、君まだ仕事終わってないでしょ。 昨日瑠姫さんから圧かけられたのお忘れ?」


昨日の夜、瑠姫さんから何故か俺の携帯に電話があってね。 締切近いのに作画担当から原稿届いてないから早く描かせろって俺が怒られたよね。 どうやらあの猿も俺が保護者だと思っているらしい。


紅葉ちゃんこう見えて自立した大人────自立…………自立かぁ…………収入以外してないかなぁ…………これは俺に来ても仕方ないかぁ。


「……今はこの幸せを噛み締める方が先。 原稿は向こうにストックがあるから1回くらい落としても大丈夫」


「奏士くんちゃんとしてない人は嫌い」


「……ダウト。 奏士は私が大好き」


なんでドヤ顔されてんだ俺。 前々から紅葉には「ちょっと嫌い」って申告してると思うんだけどな。 さてはコイツ仲直りの喜びで何もかもどうでも良くなってるな?


「漫画描きたくない?」


「……奏士が構ってくれたら描く気力が出るかもしれない」


ナルホド俺はダル絡みされてる気がするな。 重政貸すから大人しく描けよもう。 描きながら手のマッサージ代わりに重政の背中撫でたり揉むと気持ちええぞ。


「……俺本読みたいから、今紅葉が漫画描いてくれたら夜遊んであげてもいい」


「……じゃあ奏士が撫でてくれたら漫画描く」


なんで交換条件出された? もしかして初日なのに冷静な俺が悪いのか?


奏士くんの生き方『ソレはソレ、コレはコレ』だから、もしかすると俺も馬鹿になった方がいいのか? いやぁでも僕達一応創作家だしそれで飯食ってるし……


「……ぎゅうしてくれたら描く」


アレ要求つり上がってね? いつの間にレート変動あった? 為替相場じゃねぇんだぞ。 もしかしてこっちの通貨大暴落ですかーっ? アレロシアの通貨ってルーブルで合ってたっけ?


「…… (じぃ〜っ)」


めっちゃ見られてる。 身長差と現在の相対位置を利用した上目遣い。 そ、奏士くんそんな上目遣いになんて負けないんだからねっ!


なぜなら上目遣いしなくても負けてるんだから! このツンデレ情けないな。 だってこのままだと紅葉ちゃん動こうとしないしぃ……怒られるの俺だし。 あの編集猿は紅葉には甘いけど俺は長年の付き合いだからか厳しいんだ。


「……奏士が他の女のこと考えてる」


「お主そんなタイプじゃないでしょ」


「……瑠姫さんのおっぱいのこと考えてた」


確かに『これだから乳のデカイ女は態度もデカイ』とか考えていたけども。 紅葉のニュアンスだと俺が他所の女を妄想してるヤバいやつみたいになるだろ。


「…………」


「……何?」


「…………いや、なんでも」


ただちょーっと「そういやコイツも乳と態度のデカイ女だったなぁ」とか思ってないですから。 全然そんなこと考えてませんから。


異様に喉が乾いて、机の上の麦茶を1口。 あ〜冷えた麦茶うめ〜 適合だァ! やっすいグルメ細胞だな。


いやでも1人くらいは居そうだな麦茶が適合食材な人。 まぁあの世界麦茶出てこないけど。


「ほら早く漫画を描きなさいグルメイラストレーター」


「……私を勝手にトリコ世界の住人にしないで」


しまったさっきまでトリコのこと考えてたからついうっかり。 この世でグルメ付いてもトリコ世界の住人にならないのはグルメ漫画家くらい。 あとは多分グルメ付ければ住民票移る。 グルメリポーターはアニオリで存在するし。


「……ぎゅう」


紅葉が両手を伸ばして身を預けてきたので、渋々、本当に渋々紅葉の背に腕を回す。 け、決してしたかったとは思ってないんだからね! いやホント。 未だに人との触れ合いが慣れないよね。 やはり畜生、犬畜生猫畜生こと最高。 呼び方に愛あります?


「〜♡」


そっと抱くと、紅葉もコアラみたいに抱きしめてくる。 奏士くん今休日モードで耐久力低いから力は抑えて欲しいな。


「……撫でて」


「へい」


背中に回した片方を解いて紅葉の頭に添える。 まあまこれはいつも通り。 紅葉を撫でることは慣れた。多分自称姉のあの人より上手い。 ずっと人妻呼びしてたから名前は忘れた。


「…………よきにはからえ」


征夷紅葉大将軍は完全に脱力している。 あ〜重い。 重いな〜


「……奏士は撫でるのが上手いから私の専属撫で師として雇ってもいい」


「謹んでお断りします」


私これでも忙しい身でして。 今現在『紅葉のお世話』も追加されてるからね。


「ほら、お前のお望み通りやったぞ。 約束したからにはちゃんと漫画を描くんだ」


「……まだ1つ残ってる」


「約束野後付けはダメ」


「……誰も2つだけとは言ってない」


成程違法契約でしたか。 そりゃクーリングオフも出来ないわけだ。 貴方を器物損壊と詐欺罪で訴えます! 裁判所にも問答無用で来てもらいます! ワザップじゃねぇか。


「次は何だ言ってみろ」


「……奏士からキスしてくれたら漫画描く」


「そうか。 なら瑠姫さんに作画引退の連絡しないとな」


本を閉じてスマホを手に取ったら紅葉手首を掴まれた。 速い。


「何をする小娘」


「……奏士がみっともない姿を見せたから止めてあげた」


「奏士くん照れ屋だからされるのはいいけどするのは苦手なの」


「……裏声気持ち悪い」


「渾身なのに」


何故か重政にも不評なんだよね俺の裏声。 猫には苦手な音域なのか?


いやでも泉ちゃんもにも不評なんだよな。 コレは俺以外に不評なのか?


「……昨日から3回した」


「えぇしましたね」


穴から出る前、夜寝る前、朝起きて直ぐの3回。 よーく覚えてますとも色んな意味で。


「……3回とも私からだった」


「そりゃ無許可不意打ちでしてればそうだろうよ」


3回も奪われてんだよ。 せめて事前に許可取れよそれか言えよ今からするって。


「……4回目は奏士からして欲しい」


「何故だ。 お前がしたいならすればいいだろ俺は受け止めるぞ」


「……奏士はこういう時男を見せれる素敵な人」


「どこでその情報掴まされた? ワザップか?」


「……私の脳内」


ソースワザップの方がマシだった。 クソ情報元じゃねぇか。


「……」


紅葉から無言の圧のプレゼント。 こっち見んな! 俺ちゃんチキンなんだぞ! ピヨピヨするだろうが! 威勢だけはいいなコイツ。 異性は良くないのに。 異性というか紅葉というか。


「……んー」


紅葉はもう準備万端。 後は俺の勇気だけらしい。 奏士くん照れちゃう。 照れすぎて照り焼きになっちゃう。 実はあまり照り焼きが好きじゃない僕。


……よし。


大丈夫。 飯食った後歯磨きしたし、口臭も大丈夫────だと思う。


別にテクを見せる必要は無いんだし、触れるだけ触れるだけ。


さっき潤したばかりの喉がもう乾いてきた。 高血糖か?


念の為、誰も(+重政)見てないことを確認する。 こういう時は邪魔が入るのが世の常だ。


あ、そういえばベルは図書館に居るんだった。 なら大丈夫か。


溢れそうな唾で喉を潤し、そっと紅葉の頬に触れる。


よし後は行くだけ頑張れ私。 フレフレわっし。 頑張れ頑張れアタイ。 一人称おかしくなってる。 おじさん緊張するとコロコロ変わるんだ。 コレら全て顔色一つ変えずにモノローグ出せるって俺凄くね?


重政は空気を読んでかそれともただ眠いだけか、扇風機の前で仰向けになって寝ている。 流石に飼い猫とはいえこういうのを見られるのは少し、ね。


ゆっくりと顔を近付け、お互いの息が合わさり、影が重なっ『ピーンポーン!』


「チッ!」


お約束というかなんというか、いい所で呼び鈴が鳴った。


お互い意識の外から来たからビックリして固まっちゃった。 あぶねーR18になるところだった。


てか、今重政舌打ちしなかった? あの畜生狸寝入りか? 猫のくせに。


『ピーンポーン!』


再び呼び鈴が鳴る。 宅配かと思ってパソコンで監視カメラを確認すると、玄関前には馬鹿野郎が4人野郎。


全員見覚えあるけど、今日でコイツら今世とサヨナラだから名前まで思い出す必要は無いな。 蔵から槍とか出さないと。


「「「「やーなーぎーくーんー! あーそーぼー!」」」」


4人揃って小学生みたいな呼び出し。 妙に息ピッタリなのがムカつく。


「…………」


なんで俺がこんなに冷静なのかって? そりゃあ俺以上にブチ切れてるのが目の前に居るからさHAHA。 紅葉ちゃん逢瀬を邪魔されて殺意マシマシ。


それにしても、何しに来たんだアイツら。 夏休み初日か男が4人揃ってら野郎の家に来るとか暇なんか? 彼女と乳くりあってろよ乳無い人居るけど。


あ、そういやアイツらと今日遊ぶ約束してたっけ。 やっべそんなことクソどうでもよすぎて忘れてた。


まいっか。 今日死ぬ野郎よりこれからを生きる紅葉の方が大事だし。 約束を守ると言ったな? あれは嘘だ。


「柳君遊びに来たよー」


「暑いから早く入れてー」


「早くしないと滝鞠が脱ぎ始めるぞー!」


「ねぇ毎回ボクを脱がせてダシにしようとするのやめてよ」


「でもこの前柳が『焔の出汁なら高く売れそう』って話してたぞ。 後輩の女の子と」


「……奏士?」


「あれは商売の話だ。 男に興味は無い」


焔の残り湯は学園の男子に売れると思ったんだけどな。 風呂に入れて回収する方法が思いつかなかったから頓挫したけど。


「そんなこと言ってる内に柳みーっけ!」


呼び出しに応じなかったらコイツら庭に入ってきたんだけど? 不法侵入じゃありませんこと?


「女を抱いてるぞ! 逃がすなー!」


「確保確保ー!」


「柳くん、諦めてお縄につこうか」


すいません不法侵入なんですけど。 このバカ4人妙に手馴れてやがる。 連携も上手いし。 さてはコイツら練習してやがったな? 俺が毎回逃げるから。


「……邪魔された」


「諦めろ紅葉。 人生はそんなもんだ」

はいどーも皆さんこんにちは

最近筋肉痛にならないと物足りなさを感じる作者です。


それはそうと皆さん5月です。 いつの間にか春が終わります。 最近は暑い日が増えましたね。


季節の変わり目はどうしても睡眠時間増えてしまいます。 後体調不良の日が増えます。 お腹がゴロゴロ……


ではこの辺で

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