10年以上前のことは思い出せるのにさっき食べたご飯のことは思い出せない
最近老化が加速してる気がする By作者
「──というのが初めてあった頃の話なんだが、はいここまでに何か質問は?」
「……奏士は昔から気持ち悪かった」
「第一声それか」
んもー 紅葉ちゃんってば1ヶ月ぶりの発声なのに〜
Q.あれからどうなった?
A.まだ何も進んでないが?
という感じでね。 昔話みたいな口調でお話してたらこのザマですよ。
なんせ未だに落とし穴からは出れてないし、正面の紅葉様は人を馬鹿にした目で見てくるし、僕は飽きてきた。 思いつきでやったけどやっぱ普通に話した方が早いし楽。
「……なんで語り口調?」
「なんか雰囲気出るかなって」
「……途中からボロボロだったからやらなくていい」
紅葉さんはこの通りダメな人を見る目。 なんかこの娘当たり強くない? パワーアタッカー? それともメタビート? 僕メタビ嫌い。 私怨止めろ。
いやでも待てよ? 俺は元々ダメな人なんだから当たり強いも何も無いか。 良かった何も変わらずいつも通りだ。 現実逃避を超えた何か。
「…………」
紅葉が喋らなくなって妙な空気が流れる。 何これ俺が悪いの? それとも今紅葉ちゃまの中で整理してる途中? 私嘘の看破は得意だけど思考を読むのはあんま得意じゃないのよね。 パワハラの鬼じゃないし。
「前に思考を読むのは得意」とか言ってただろって? おいおいそんな野暮なことは言うなよそんな設定忘れてるに決まってるだろ。 いやまぁ実際相手が単純な思考してる時じゃないと頭を読むなんて難しいんだけどさ。
「…………だいたい理解できた」
「何が?」
ごめん考え事してて話聞いてなかった。 あ、俺の話か。
「……奏士の話と私の記憶は概ね一致する」
「つーと?」
「……奏士が嘘つきじゃなければ間違いは────奏士は嘘つきだから信じきれない」
「何を」
僕のどこが不誠実な嘘つきカス野郎だって言うんだ! 私は四方八方どこから見てもラブアンドピースに満ちた星喰い蛇じゃないか! 嘘つきカス野郎じゃねぇか。 そもそもさっきから一人称がコロコロ変わってる時点で信頼度は地の底定期。 じゃあ俺の信頼度最初からマイナス……?
閑話休題 なんか「かんわ」って地名の九つの大学の総称でかんわ九大ってありそうだよね。 休題しろよ。
「……今思い返しても酷い出会い」
「そりゃそうだ」
お互いに人見知りな上、あの頃の俺は妹以外の人間に興味が無くて畜生と同じだった。 まだ子供だったし、あんな感じになるのも仕方なかろうて。 まだ険悪になってないだけマシ。
「……でも、何回か会ってるうちに仲良くなれた」
「俺じゃなくてお前と妹がだけどな」
あの日の翌日も公園に行くと紅葉が居て、翌々日も紅葉が居て。
最初は目が合うと顔を背けられたり、ササッと逃げられたりした。
それでも日を重ねるにつれ紅葉側も警戒心が薄れてきたのか、離れた場所からこっちを観察するようになり、しれっと隣で一緒に絵を描いていたり終いには目が合うとパタパタ寄ってきたり。 まるで子猫だ。
「……ちゃんと奏士とも仲良しだった」
紅葉は頬を膨らませて不満顔。 子どもか。
そうは言っても、本当に俺は妹の付き添いで公園に来ているだけなのでそれ以外の塵芥は眼中に無かったというか紅葉の事は「変なのに懐かれたな」程度だったというか。
だって妹と歩いてたら背後の物陰からチラチラ銀髪が見え隠れするんだぜ? 好奇心はあるけどまだ警戒もあるから近付けない猫のそれじゃん。
「……奏士だって『頭から離れなかった』って言った」
「あれなー」
確かに、出会った当初は紅葉の事が妙に印象に残ったけどあれはもう解決したというか。
最初はさ、『珍しいなー』って思ってたよ?
でもさ、徐々に紅葉が気を許して行く内に図々しくなってきたというか、この女クソだと思い始めたというか。
決定的なのは、ある日描いた絵を妹に賞賛されていた時の話。
あろうことか、昔の紅葉、ロリ葉は「自分の方が上手い」とか抜かして俺より上手い絵をささっと描きやがった。
今でも思い出せる。 絵が完成した時の紅葉のドヤ顔。 盗られる妹。 圧倒的敗北感。
あの時俺はやっと理解した。 なぜあの日、紅葉の事が妙に頭から離れなかったのか。
俺は本能で理解していたんだ。『この女嫌いだ』と。 今思えば、昔からその予感は当たっていたんだな。
「……まぁ、昔から紅葉の事はちょっと嫌いだったって話だな」
「……自己完結しないで」
え〜今のモノローグ伝わってない感じっこ? 再説明だるいんだけど。
て訳でかくかくしかじか。 感じで書くと斯く斯く然々になるらしい。
「……嫉妬みっともない」
「嫉妬じゃない。 本能的直感だ」
「……大好きな妹を盗られた妬み」
すいませんなんかやけに鋭い剣でチクチク刺してくるんですけどここから入れる保険とかってあります?
えぇ……はい。 相手を被害者にできるぐらいのプランで。 それもう保険のレベルじゃなくね?
「……しょうがないからよしよししてあげる」
「要らん。 触れるな邪魔くさい」
人が手を払い除けても紅葉は近寄ってよしよし撫でてくる。 妙に優しい手つきだ。 ママかよ。 奏士くん自分の親のことなんて呼んでたか思い出せない。
「……♪」
そのまま紅葉が満足するまで降参すること5分。 ちょっと元気になった紅葉がそこに居た。 お前はウォンバットか。
「……もっといっぱいお話しよ」
ワクワク顔でお目目キラッキランランな紅葉さんは前のめり。 相手倒すと力と妖力上がりそう。 それ『まえのめり』の方じゃね? 『かたながり』と同じやつ。
「つってもなぁ。 何がしたいのかによる」
「……全」
「日が変わるわ」
「……じゃあ一緒に遊んだお話」
「……まぁ、それくらいなら」
今はせめてこの思い出話に花を咲かせるとしよう。 最後に胡蝶の夢を見るくらいは許されるだろうし。
自分が蝶か人か。 もうどうでもいい話だ。
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「……一緒に駄菓子屋に行った」
「あのババア昔から同じ見た目だったな」
「……3人で店番もした」
「ババアが競馬見たいとか抜かしやがったからな」
「……その後、ご褒美に貰ったお菓子を食べた」
「あれ総額だと一人150円くらいだぞ。 しかも店の余り物。 無垢な子供を騙すなんて酷い妖怪だよ」
「……初めてお互いの名前を知った事もあった」
「お互いに暫く知らないまま遊んでたな」
「……奏士はすぐ私の事を『お前』って呼んできた」
「名前も知らんのに何と呼べと? 『畜生』って呼ばないだけマシだ」
「……しかも、名前を教える時も最初は偽名だった」
「そりゃ対して知りもしない上に嫌いな相手に本名名乗るわけないだろ」
「……それにしても登柳士は安直すぎる」
「どうやら自分が花伝紅葉と名乗ったのをお忘れの様で」
「……だってあの頃から奏士は変な人だった」
「もうお互い様だ」
「……みんなで日向ぼっこもした」
「一緒に遊ぶ予定だったのにお互いにスケッチブック忘れたからな」
「……橘花と二人で奏士を枕にした」
「俺は妹にだけ貸し出したのに横から遠慮なく密入国してきやがってよ」
「……橘花だけ奏士を独占しててズルかった」
「その代わりにお前も時々橘花を独占するだろ。 ノーカンだノーカン」
「……いっぱいお散歩した」
「嫌がる俺を無理やり連れてな」
「……でも、橘花が手を繋ぐと奏士は嬉々として歩いた」
「妹の手を握れるなら散歩でも何でもするだろ」
「……私が言った時は心の底から嫌そうな顔で拒否した」
「だってお前橘花じゃないし……」
「……近付いたら逃げようとしたこともあった」
「おっと流れ変わってきたな」
「……ちょっと触れようとしただけで威圧してくるし意地でも避けた」
「そりゃ避けるだろ急に手を握ろうとしたり抱きついてきたら」
「……橘花一強環境だったから、子供の反骨精神に火がついた」
「子供のおちゃめなら仕方ないな」
「……毎日ずっと一緒だった」
「だな。 朝起きて遊んで昼飯食ってまた遊んで。 朝から夕方までずっとだ」
「……ママに『勉強もしなさい』って怒られた」
「未熟者め。 俺ら兄妹は遊んでいてもちゃんと勉強したぞ」
「……喧嘩もした」
「喧嘩の理由が『橘花にはプレゼントをあげて私には何もくれなかった』っていうお前の一方的かつ身勝手な振る舞いだけどな」
「……ちょっとは特別扱いされたかった」
「だからあの後、橘花に何故か俺が正座で怒られてお前に渋々渡したんだろ」
「……ちゃんと今でも大切に保管してる」
「…………物持ちいいようで」
「……皆で記念写真も撮った」
「嫌がる人を無理やり捕まえてな」
「……ママがお友達のことを知りたがってた」
「間違っても俺の事は説明するなよ? お前のためにも橘花だけにしておけ……ってのはもう無理か」
「……写真を見せたら2人とも喜んでた」
「それはアルバムを見れば分かる」
「……ずっと遊びたかったけど、奏士がもうダメって言った」
「そりゃそうだろ。 お前らと違ってこっちは学校があるんだ。 春休みみたいに平日も一日中遊べる訳じゃない」
「……初めて奏士が年上だって知った」
「だってのにお前は1歳態度変えなかったな。 ずっとタメ口だし図々しいしナチュラルに人を煽ってくるし」
「……もう、奏士に年上らしさは無かった」
「猫かよ。 懐いた途端に主張強くなりやがって」
「……一緒に居られないと思って、ちょっと絶望した」
「まぁその後、2人共今年から入学なこと指摘されてお前逃げたよな」
「……流石に醜態晒して恥ずかしかった」
「バカ丸出しで流石に呆れたぞ」
「……あの時と同じこと言ってる」
「だって馬鹿すぎるだろ」
「……悪口ばかり言う意地悪にはお仕置」
「おい頭を揺するな。 お前は二狼か」
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「……思い出いっぱい」
ついさっきまで全部忘れてたくせに……
とは言わなかった俺賢い。 よくやった俺。
「……でも、最後に奏士は嘘ついた」
嘘つきと呼ばれても心当たりがありすぎて分からないカス野郎はどこのドイツ? アイツ?コイツ?ソイツ? 遊戯王?
「……『明日も遊ぼ』って約束したのに、2人公園に共来なかった」
「…………」
「……ずっと待ってた」
「…………」
「……次の日も、その次の日も待ってた」
「…………」
紅葉は、何も言わない俺の頭を両側から掴んで向き合わせる。
あまりにも眩しすぎて、直視したら焼き尽くされそうなその眼には決意が見える。 紅葉も、『踏み込む』と決めたらしい。
「……2人に何があったのか、教えて」
はいどーもみなさんこんにちは
やっと! やっっっと!! 確定申告を討伐した作者です
締切ギリギリにやるのは様式美みたいなものです。
なんと言いますか、確定申告ってこんな複雑でしたっけ? マイナポータル連携してe-tax連携して取得して入力して連携して設定して連携して……電子申告で色々省けるのはありがたいですが、二度と使いたくはないですね。 確定申告諸共。
これを全てやらなくていい年末調整がどれだけありがたいか改めて身に染みるいい機会(皮肉)でした。 さらば確定申告
とはいえ、初めての電子申告なのでこれで本当に確定申告が済んでいるのか不明な所もあったり。 ボスは蘇るのが定説なので。
ではこの辺で。 確定申告が終わった影響か、1時~18時という大爆睡大寝坊をしたのは畜生のみんな以外には内緒。 休日潰れました。
そして最近寝ても疲れが取れにくくなったことに老化を感じます。 もう若い肉体ではないんだなぁ、と。




