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畜生も人の子だった頃があるんですよ

ある日の昼下がり、暖かな日の射す窓辺に佇む人影が二人。


1人は人形のように動かず、もう1人はカリカリとスケッチブックにペンを走らせている。


「お兄ちゃん」


「どうした妹よ」


「ちゃんと笑ってください。 私が描きたいのは笑顔の絵です」


「そりゃあ難しい注文だなマイシスター。 お兄ちゃんの表情筋は今夏季休暇中で必要最低限の要員しか配置されてないんだ」


「何を言っているのかは分かりませんが、今は春です」


「もう四季の概念を理解したのか橘花。 頭良いな。 撫でてやる」


「そういうのはいいからそこから動かないでください。 描いてる途中です」


「へーいへい」


怒られた少年は渋々窓際に戻る。 こうして日に何度か可愛い妹のデッサンに付き合わされるのが日課だ。


「ところで橘花ちゃん」


「何ですか? あと橘花ちゃんはやめてください」


「お兄ちゃんずっと日に当たってるから背中暑くなってきたんだけど、あとどれ位で描き終わる?」


「そうですね。 大まかには描き終えてるので────あと1時間程」


「そこをなんと今だけ?」


「そんなテレビ通販みたいなサービスはありません」


会話のバリュエーションが年齢1桁同士とは思えないが、それはそれこれはこれ。 良くも悪くも奏士の影響で、少女────橘花も幾分か大人びている。 『大人びている』で説明できるレベルなのかは不明。


こんなやり取りもいつも通りなので、少年は諦めてマネキンに戻る。 可愛い妹の頼みなら苦手な日光もなんのその、だ。


それから本当に1時間、橘花は描き続けたが、少年はその1時間を可愛い可愛いマイシスターの悩んでいる顔や真剣な眼差し、上手く行って満足そうな笑顔を堪能したので苦にはならなかった。 幼くしてシスコンを開花させているというか生まれつきというか。 数少ない人の子要素だ。


「描けたか妹よ」


「♪」


普段のしっかり者がどこへやら。 橘花はスケッチブックを抱きしめ、年相応の笑顔を見せ、少年はそれを見てほんの僅かに微笑む。


「……お兄ちゃん今笑いました?」


「気のせいだろ」


「ぜーったい笑いましたー!」


「気のせいと言うとろうに。 しつこい娘はブルスコファーの刑に処す」


「ちょっと! 撫でないでください!」


と、口では言いつつも身体は正直な妹さん。 少年の優しいタッチを恥ずかしそうにしながら受け入れている。


「お主の髪はふわふわで撫で心地が良いな。 オカン似だ」


「もう…………お兄ちゃんは似てませんね。 お父さんの髪は硬い方ですし」


「あれだろ。 隔世遺伝ってやつだ」


「かくせーいでん?」


「なるほどここまで知らんか。 要するに、親じゃなくて爺ちゃん婆ちゃんに似てるって意味だ」


「へぇ〜 お兄ちゃんは相変わらず物知りですね」


「お兄ちゃんこれでもちょっと頭いいのが取り柄だからな。 後は顔の良さくらいしかない」


「…………」


「何か言いたげだな妹よ。 正直に言っていいんだぞ」


「……お兄ちゃんは一般的に見てカッコイイ顔立ちとは遠いかと」


「本当に正直だな。 俺は赤の他人よりお前がかっこいいと思えるだけでいいんだぞ」


「いえ、お兄ちゃんは特にカッコよくは無いです」


「裏切るなよ。 お前だけは俺をイケメンだと思っていてくれよ俺が恥ずかしいだろ」


「お兄ちゃんはずっと恥ずかしいしないですか」


「うちの妹は毒舌」


わざとらしく悲しそうな演技をしながらも撫でる手は止めない少年。 最悪な事に、根元は変わらないらしい。


「お兄ちゃん明日は暇ですか?」


「デートの誘いならいつでも」


「違います。 明日は外で絵を描きたいので聞いただけです」


「つまりデートか」


「……もうそれでいいです」


少女は呆れた顔で少年に撫でられ続ける。 距離感といい見た目の似てなさといい、本当に兄妹か疑わしくなるが一応実の兄妹である。 2人とも幼いので微笑ましいが、このまま成長したとしたら恐ろしい。 作品変わっちゃう。


「2人ともお絵描きは終わった?」


「あ、お母さん」


「多分終わった」


「そう。 なら、手を洗っていらっしゃい。 おやつのドーナツあるわよ」


「ドーナツ! お兄ちゃん行きますよ!」


「急に元気に…………橘花ちゃんはお兄ちゃんよりドーナツの方が好きなん?」


「はい!」


「お兄ちゃん泣きそう」


なんて冗談を言いながら、お兄ちゃんこと少年は橘花に手を引かれ、洗面台へ行く。


ちょっと愛が深すぎてシスコン気味なことを除けば、なんて事ない仲良し兄妹の日常。


しかし、その日常も過去の話。




むか~しむかしのそのむかし とある少年がいました


幼子ながらとても賢く、それでいて周回プレイを疑う程にとても強かでした。


ある日、少年は自分が同年代と比べると飛び抜けて────否、人の世と比較しても異端な程に頭の良いことを理解しました。


それに加え、己の異様さにも気付きました。

精神構造も、思考も、何もかもが常人とは違う。 恐らく元々の道徳心だとか、人として生きるために必要な倫理が欠けているのだろう、と。


それからというもの、少年は一切を偽り、凡人として振る舞いました。


そんな、人の世に生まれながら人とは似て非なる者

名を柳奏士

存在しない人間の昔話である

はいどーもみなさんこんにちは

確定申告という序盤から出てる裏ボスが倒せない作者です。 理由は主にやる気


……これ以上特に何も無いのでこの辺で

では

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