第三十五話「神の領域」
気が付くと俺は真っ白い空間にいた。
死んだのか、俺は。
「そのとおりだよ」
不意に声が聞こえてきた。
「誰だ。お前は!?」
「君たちが神と呼んでるものさ」
神……だと。
「君たちはよっぽどのことをしてくれたね」
「当然さ、俺はお前が憎いからな」
「あんなことをして、意味があると思ったの?」
こいつ。
人を見下した口調をしやがって。
「ああ、あったさ、お前を困らせてやった」
「そうだね」
しばらく間が経つと神は俺にこう言ってきた。
「君は次の人生でカルマを解消してこなければならない」
「カルマ?」
「君の罪だよ」
そうだな。俺には罪がある。だが
「俺は前から疑問だったんだよ」
俺は神に言ってやった。
ずっと前から思ってた疑問。
人間は自分がやったことには責任を取る必要がある。
それは神にも当てはまるんじゃないか?
神にはそれらを幸福にする義務がある。
その旨を神に伝えた。
そしたら神は
「私にはそれほどの力はないよ」
と言ってきた。
どういうことだ。
お前は全知全能じゃ
「それは人間が作った言葉だ」
それじゃあこの世界が不幸なのは
「全て人間の業さ」
フハハハハ、なんてことだ。
神には力が無くて、世界が不幸なのが人間の仕業。
それだと俺がやってたことがあまりにも皮肉すぎて笑える。
「さて、君はどうする?」
神は言ってきた。
俺に生まれ変わってカルマを解消してこいと
だが誰がそんなこと聞くもんか。
俺はもう疲れたよ。
今までやってきたことが無駄だったんだ。
もう、何もしたくない。
永遠の闇の中でずっと眠りにつきたい。
「私はね。思うんだ」
「何が?」
「君なら世界を幸福に変えられるんじゃないかって」
アハハ、そんなことできるはずが
「君は私に抗った。その力は偉大だった」
「…………」
「私はね、君ほどの力があれば世界を幸福に変えられると思うんだ」
「アルファートと同じことをいうのな」
「だねえ。だけど今度は破壊じゃなくてちゃんとした世界を作ればいい」
「…………」
「私と一緒に幸福な世界を作らないか」
幸福な世界。
俺が一番望んだもの。
「そう。君が望むもの。私も望んでいる」
皮肉だ。
あまりにも皮肉すぎる。
俺が悪だと憎んだ神でさえ幸福を望んでいるなんて
どの道世界は幸福にならない。
俺は……もう。
「勝さあん」
「勝!!」
不意にあいつらの声が聞こえてきた。
俺の目の前にあいつらが現れた。
「お前ら……」
「私は勝さんと過ごせて楽しかったです。」
「康夫……」
「もう思い残すことはありません。私は次の人生では医者になろうかと思っています。」
「どうして、そんなにあっさりと」
「結構考えたんですよ?」
康夫の表情は穏やかだった。
「お前は後悔していないのか?」
「だからさっきも言ったじゃないですか勝さんと過ごせて楽しかったって、後悔なんてありませんよ」
「そうか」
「だから勝さん。自分を責めないでください」
「康夫……」
「それでは私は行きますね。次の人生が待ってるので」
康夫は消えた。
「勝!!」
神奈が俺に抱きついてきた。
「大好き」
「俺はお前に大好きだなんて言われる資格なんてねえよ」
「どうして?」
「俺はお前を守れなかった」
「何言ってるのよ。勝は私を充分守ったよ」
「俺は……俺は……」
「康夫も言ってたけど勝、自分を責めないで」
「神奈……」
「来世で私たち、出会えるといいね。そしてカップルになったりとか!」
「…………」
「ねえ、勝は私のこと好き?」
「そりゃ決まってるだろ! 大好きさ」
「ありがと、それだけが聞きたかったんだ」
神奈は俺の頬にキスした後、こう言った。
「勝、来世で会おうね! それじゃ、バイバイ」
そして神奈は消えた。
「なあ、神様」
「ん?」
「俺に幸福な世界が作れるんだろうか?」
「君の力なら作れる、私はそうふんでるよ」
「そうか」
そうだな。
諦めちゃいけないな。
康夫も神奈も前に進もうとしてる。
俺も負けていられない!
「神様、俺、決めたよ」
「何を?」
「俺は幸福な世界を作る。今度はちゃんとした方法で!」
「君になら出来るさ」
「今までごめんな。お前を憎んだりして」
「いや、憎まれてるのは慣れてるからいいよ」
「お前も大変だなあ」
「そうさ、人は何か不幸があれば自分の人生を呪い私を恨む」
「俺もそうだったんだな」
神様の声は悲しげだった。
「俺、お前が恨まれない世界を作ってみせるよ」
「そうか、ありがとう」
「それじゃあな、神様」
「ちょっと待って欲しい」
「どうした?」
神は俺を引き止め、俺にこう言ってきた。
「アルファートを説得してほしい」




