第十三話「悲しい世界」
さて。
俺たちは家の近所の公園にいる。
「もうあんな馬鹿なことはしないでね」
「馬鹿なこと?」
「新木の口車に乗せられて、牢獄にまで入れられちゃって」
「ああ、俺も馬鹿だったよ。あっ」
俺は思い出したかのように口を開いた。
「そういやお前、名前聞いてなかったな」
「自己紹介が遅れたみたいだね。私は天峰神奈」
「そっちのお前は?」
俺は男性のほうの名前も聞いてみた。
「私は加藤康夫です。人から良く普通の名前だなといじられます」
こいつらの名前は分かった。
だがまだ聞くべきところがある。
「お前の能力は?」
「はっ私ですか?」
まずは加藤康夫からだ。
「私の能力は透明になれる力みたいです。我ながら地味な力ですね」
「いや、お前のおかげで助かった。お前がいなければ俺の神への反逆は終わっていただろう」
「そこまで言って頂けるとは! 光栄です」
「で、お前の能力は?」
俺は神奈の能力を聞いてみた。
「私の能力は分かってると思うけど?」
「情報を知る力だな。そこまでは分かる」
「それで?」
「どこまでの情報が分かるかだ。例えば。」
「例えば?」
「俺の能力をどこまで知っている」
「貴方の能力ね」
彼女はいつものポーズでしばらく考えたあとこう答えた。
「貴方の能力は成長するみたいだね」
「成長?」
「うん」
そういえばアルファートが言ってたな。
悪を成敗すればするほどお前の力は強まるっと。
それが能力の成長なんだろうか?
「ちなみにどこまで成長してるとか分かるのか?」
「だいたい分かるよ。半径8469キロメートルまでワープできること」
それから、彼女は次々と俺の能力を明かしてくれた。
この女。使える。
「お前の能力は素晴らしいな」
「素晴らしいのは貴方の能力よ。勝君」
「…………」
「貴方は神に挑むほどの力を持っている」
「…………」
「私は貴方のその力で世界を壊して欲しいと思ってるよ」
そう言った彼女の瞳は、悲しみを消してほしいと願っているようにも見えた。
そう。世界は悲しみに満ち溢れている。
俺の過去も悲しいものばかり。
恐らく彼女の過去もそうだったのだろう。
悲しいことばかりじゃない。
そんな言葉もある。
だが俺の世界には。
俺の瞳に映る世界には。
悲しみしか無かった。
「神よ。どうしてこの世界は悲しみに満ち溢れているのでしょう?」
俺はこんなことを何度も呟いていた。
だが、神は俺のこの問いに、答えを返してくれることは無かった。
悲しみを終わらせる。
「そうだ。勝」
アルファートの声が聞こえる。
「お前のこの力なら悲しみを終わらせられると私は思っている」
とても邪神が言う言葉とは思えんな。
「どうあがいたところで私が邪神なのは変わらないさ」
アルファートのその言葉がやけに悲しみに満ち溢れていたように聞こえた。
なあ。神よ。
お前はなぜ悲しみを作った。
俺はそれを何度もお前に聞いた。
でもお前は答えを返してくれなかったな。
でももういい。
俺は力を手に入れたんだ。
俺はこの力で作るんだ。
悲しみの無い……世界を。




