裏で暗躍する貴族
木人形を使えば授業中でもバレずに抜け出せる。
2人で身分を隠しながら、裏で暗躍している汚職貴族達の命を断ちに行く。
「金か、金が欲しいのか!?」
「いくらでもやる、だから命だけは」
定番のような命乞いをしながら、汚職貴族は僕達に何かを言ってきていた。
それでも、僕達には言葉は届かない。
シルヴィは魔法陣を変形させて作り出した剣で、その醜い顔を真っ二つに両断する。
「口を動かす暇があれば、腕を動かしなさいよ。」
魔法陣の剣に付いた血痕をナプキンで拭き取る。
そして、シルヴィの身に付けている指輪へと吸い込まれるように収納された。
「シルヴィ、その指輪は?」
僕は人差し指に通されている奇妙な形をした指輪を見て思わず口を開いた。
「これはですね。」
「簡単に言えば魔力を収納できる指輪です。」
シルヴィが指輪から様々な魔法陣を出し入れする。
火炎魔法や水魔法といった様々な種類の魔法陣だ。
中には鉄魔法や光魔法といった珍しい魔法陣も混じり込んでいる。
「この指輪はありとあらゆる魔法を収納できる、発動する射程距離は数m程度ですが。」
近付くだけで魔法を取り込む事が出来る指輪。
そんな指輪の逸話なんて、僕は一度も耳にした事が無い。
これは伝説級の魔道具なのだろうか。
「……」
「シルヴィ、敵が来ています。」
僕は足音が聞こえてきている方向を見て言う。
「キャシー、敵は」
「およそ何秒後に扉を開けてくるのですか?」
足音の距離から何秒後かを頭の中で計算する。
「30秒後、といった所です。」
「30秒ですか、ティータイムは無理そうですね。」
僕の言った通り、敵は30秒後にドアを開けて中へと入ってきた。
「囚えろ、侵入者だ!!」
騎士達が扉から部屋の中へと入り込んでくる。
「キャシー、目的は達成したので帰りますよ。」
そう言いながらシルヴィは両手に魔法陣を構える。
両手の魔法陣を天井へと放つ、カッターのように鋭い魔法陣が天井を破壊した。
「なんだ、天井が崩れたぞ!?」
騎士達の目の前で崩れた天井の瓦礫が落ちる、それにより追跡が困難となる。
「急いで戻れば昼休憩の間に木人形と入れ替われる時間くらいは残っている筈。」
魔法陣を剣に変形させ、窓ガラスを叩き斬る。
「シルヴィ、ここは4階ですよ!?」
この高さから飛び降りれば、ただでは済まない。
「まず、貴方がする事は質問では無く。」
「私の手を握りしめる事ですよ、キャシー。」
窓枠に脚を掛けたまま手を僕の方へと差し向ける。
信じろと言うのだろうか、僕は躊躇なくシルヴィの手を握り締める。
「私の手を離さないでくださいね。」
シルヴィは魔法陣を鞭の形に変形させ、向こう側の建物に引っ掛ける。
そして、鞭の持ち手から徐々に指輪へと吸い込まれていく。
その吸い込まれていく勢いを利用して、向こう側の建物へと僕達は引っ張られる。
「何ですか今の!?」
「指輪が魔力を取り込む勢いを利用して移動しただけですよ。」
「指輪が魔力を収納する時。」
「魔力を引き寄せて収納するか、使用者を引き寄せて魔力を収納するか。」
「私はそれをコントロールできます。」
シルヴィは魔法陣を前に軽く投げる。
指輪を向けると同時にシルヴィの身体は魔法陣の方へと引き寄せられた。
魔法陣が指輪に吸い込まれると同時に引き寄せられる力は収束する。
「キャシー、今の貴方が会得しなければいけないのは魔法陣を自在に操る術です。」
「昼休憩の時にビシバシ教え込むので覚悟しておいてくださいね。」
「お、お手柔らかにお願いしますよ、シルヴィ。」
身分を隠す為に被っていた覆面を取り外しながら、僕達は学院の方へと急いで向かった。




