ジャンヌ・セレスティア
マリア魔法学院では定期的に魔力を試すテストが行われる。
良い魔法を扱えれば、それなりに良い成績になるという仕組みという事だ。
「それでは始め!」
先生であるジェーン・モリスの掛け声と共に生徒達が用意されている的に魔法を放つ。
どの魔法も的を壊すか溶かすか燃やすかだ。
良い成績を取るには的を完璧に破壊するしか無い。
「シルヴィばかり見てたせいかな、皆の魔法がショボく見える気がします。」
魔法陣を剣や鞭といった何かに変形させるといった技術は誰1人として知らなそうだった。
「確かにショボいかもですが、これが普通という物です。」
「魔法陣を操作するという技術を扱えるのは私と貴方しか居ないのですから。」
本来なら魔法陣を自在に操るなんて事は不可能だ。
魔力の粒子を操作する高等技術は難解すぎた為に誰も会得できなかったのだ、シルヴィを除いて。
僕も多少は扱えるようになったが、シルヴィにはまだまだ及ばないだろう。
「あ、僕の番ですね。」
及ばないとしても、越えられない壁では無い筈だ。
いつかはシルヴィも越えてみせる。
これは意地だ。
小説家は負けず嫌いな生き物なんでね。
(見ていてください、僕の今出せる最大の魔法です!)
僕は魔法陣を展開する。
そして、魔法陣を弓の形に変形させる。
「す、すげぇ!どうなってんだ。」
「なにあれ、魔法陣を弓に変えるなんて。」
周りにいる生徒が僕に釘付けになっている。
生まれて初めて僕は注目されているんだ。
本来なら書いた小説で注目されて欲しかったけど。
「見ていてください、シルヴィ。」
「これが修行の成果です!」
弓の形をした魔法陣に木で作られた矢が生成され、高速で矢が回転し始める。
回転した勢いのまま、矢は的へと放たれる。
放たれた矢は轟音と共に的を木っ端微塵に穿った。
「今のが魔法だっていうのかよ、反則だろ。」
「いえ、反則では無いですよ。」
「あれはれっきとした魔法です。」
愚痴を溢した男子生徒の前で別の女子生徒が口を開いた。
「貴方が盲目の貴族、キャシー・アシュレイですか。」
この声を僕は聞いた事がある。
黒髪のショートヘアをした女子生徒。
名前は確か、ジャンヌ・セレスティアだ。
マリア魔法学院の首席と聞いている。
「首席の貴方が僕に何の用ですか。」
「私は貴方に決闘を申し込みに来ました。」
「え。」
思いもよらない言葉に僕は戸惑った。
僕は入学してからジャンヌさんと話した事が無いというのに、いきなり決闘を申し込まれたのだ。
「返事が無いという事は承諾したという事ですね。」
「それでは早速始めましょう。」
あれ、承諾した覚えなんて無い筈なのに気が付いたら決闘が成立している?
「私はセレスティア家の長女。」
「ジャンヌ・セレスティア」
「あ、僕はアシュレイ家の長男。」
「キャシー・アシュレイです。」
ノリで決闘前の名乗りをしてしまった。
このままじゃ、本当に決闘が始まってしまう!?
「それでは、いざ尋常に勝負しましょう。」
「え、待っ」




