冷たい決闘
唐突に始まったジャンヌ・セレスティアとの決闘。
目と目が合ったらバトルが始まるなんて、どうなってるんだ…この魔法学院は。
「アイスフィールド。」
ジャンヌの言葉と共に魔法陣を地面に叩き付けた。
それと同時に、僕は氷の決闘場へと誘い込まれる。
部外者を巻き込む事の無い、僕と君だけの決闘場。
もう、終わるまでは逃げられないという意味なのだろう。
「それでは、まず私から。」
言葉と共に魔法陣が複数展開される。
ジャンヌの横にある魔法陣から氷柱が放たれた。
「この音は、氷柱?」
音を聞き取って僕は飛んできている1本の氷柱を手で止める。
「音を聞き取って止めましたか。」
「人並み外れた聴力ですが、何本まで聞き取れるのでしょうね。」
その言葉を聞き取った直後に僕は冷や汗をかいた。
目の前からは無数の音が聞こえてきていたのだ。
これは数本なんかじゃない、数十本の氷柱だ!
「ぼ、防御魔法をしないと。」
僕は魔法学院で学んだ防御魔法を使おうとした瞬間、シルヴィの言っていた言葉を思い出す。
『魔法陣の可能性を信じてください。』
その言葉を信じて、僕は魔法を使わずに魔法陣だけを展開した。
全身を覆う大きさの魔法陣。
その大きい魔法陣が目の前から飛んできている無数の氷柱から僕を守る。
「やっぱり、壊れなかった。」
「魔法陣を頑丈にする特訓をしてて良かったです。」
氷柱を全て防ぎきった魔法陣を更に広げる。
そして、魔法陣の壁がジャンヌへと物理法則を無視して飛んでいく。
「氷柱を防いだ程度で調子に乗りましたか?」
「ニヴルヘイム」
ジャンヌの手首に魔法陣が展開される。
軽く放たれた拳が魔法陣の壁を氷に変えた。
「そんな、魔法陣が凍った?」
「凍ったのではありませんよ。」
「氷に変えたのです。」
確かに魔法陣だった筈の壁からは魔力の粒子を感じられない、音も明らかに別物になっている。
「私のニヴルヘイム(凍てつく氷の世界)は、ありとあらゆる物を触れた瞬間に氷へと変える魔法です。」
「安心してください、人を氷に変える趣味はありません。」
触るだけで氷に変える魔法?
そんな魔法、僕は聞いた事が無い。
神話の魔法か何かなのだろうか。
とにかく今は相手のペースにならないように、自分のペースで攻撃する事が重要だ。
(氷に変える魔法なんて、そんな強すぎる魔法が存在するの?)
(でも、実際に目の前で見た訳だし。)
(今、その事実を受け入れて戦うしか無い!)
両手から魔法陣を投げる。
2つの魔法陣がジャンヌの真横を通り過ぎる瞬間、無数の木材が放たれた。
「発想は悪くないですね、しかし。」
「速度が遅すぎて眠ってしまいます。」
ジャンヌの足元に展開されていた魔法陣から冷気が放たれる。
それと同時に無数の木材が空中で静止するように凍りつく。
「そんな!!」
目の前で起きている事は現実なのだろうか。
空中の水分を凍らせて、飛んできている全ての木材を丸ごと凍らせるなんて。
「あり得ない、と言いたげな顔ですね?」
「信じられない現実ですが、これが実力の差です。」
狼狽えている僕の首元に剣の切っ先が向けられた。
「キャシーさん、これでチェックメイトですよ。」
「ま、参りました。」
僕はその場で膝を付いて、降伏を口にした。
それと同時に周囲を囲っていた氷の牢獄が溶けた。
「弟子を倒したのなら、次は師を倒したいですね。」
「次の決闘は貴方とが良いでしょう。」
「シルヴィ。」
ジャンヌが次の獲物を狙うかのようにシルヴィへと指を差して言った。
「わざわざ指名してくださり、光栄ですね。」
「ジャンヌ。」
「また、負けたいのですか?」
シルヴィが厭味ったらしく言う。
ジャンヌは依然として笑みを保ったままだ。
「言っていなさい、シルヴィ。」
「そのセリフを次に言うのは私なのですから。」
ジャンヌの手から魔法陣が落ちる。
それと同時に氷の牢獄が僕を押し退けた。
シルヴィとジャンヌだけが中に閉じ込められる。
「アイスフィールド。」
「これで正式に決闘ができます。」
「それでは意気揚々と決闘をしましょうか。」
「シルヴィ・ヴァレンタイン。」
ジャンヌが剣を構えながら言った。
「良いでしょう、キャシーをイジメた報いを受けさせるにはピッタリですので。」
「一応言いますが、負けても泣き言を言わないでくださいね?」
「ジャンヌ・セレスティア。」




