喋り出した木人形
「シルヴィ、どうしましょう。」
「木人形が喋っている幻覚が見えます。」
「奇遇ですね、私も見えていますよ。」
目の前で木人形が喋っている。
声色もシルヴィと瓜二つだった、僕が聞き間違えしまうくらいに。
「今、喋ってるのはシルヴィ?」
「キャシー。」
「貴方は木人形と私の区別ができないんですか?」
「ご、ごめん。」
声色でしか判断する事ができない僕からすれば、違いが全くもってわからなかった。
「えっと、木人形さん?」
「何でしょうか、ご主人様。」
シルヴィの姿で、ご主人様と言う木人形を見て新鮮な気分になる。
「私の見た目で、ご主人様なんて言わせるなんて。」
「どんな事を書いたのですか、キャシー。」
「僕は変な事書いたつもりは無いですよ。」
シルヴィの物語を書いただけで、ご主人様と呼ばせるような事は書いてなかった。
もしかすれば、木人形が小説の内容を学習して自分なりの解釈をしたのかもしれない。
「とりあえず、木人形は成功で良いですよね?」
「そうね、身代わりには使えるでしょう。」
「それなら、早い所僕のも作りますね。」
「自分を書いた小説なんて書けるの?」
「僕は小説家ですよ?」
もう一度、シルヴィは僕の肩に手を置いた。
それと同時に僕の視力は回復する。
「今回も数秒で書いてみせますよ。」
鉛筆と紙を手に取り、小説を書き始める。
書き始めてから数分後、ようやく僕は書き終わった。
「小説家の割に時間が掛かったようですね?」
「思ってた以上に自分って薄っぺらなんだって」
「改めて実感しました…」
書き終わった紙を作り出した僕の見た目をした木人形の前に出すと、紙が魔力の粒子になって木人形に吸い込まれた。
吸い込まれてから数秒後、僕の見た目をした木人形が動き出した。
「おはようございます、ご主人様。」
案の定、シルヴィの木人形と同じセリフを言っていた。
「同じセリフですね。」
「聞いた通りの事を言うのね。」
とりあえず僕達の代わりになってくれる木人形は完成した、後は色々と木人形を調整するだけだ。
「とりあえず、身代わりは完成。」
「これで何時でも授業中に抜け出せますね。」




