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盲目貴族は小説を書きたい。  作者: Yな奴
マリア魔法学院

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5/12

シルヴィ・ヴァレンタイン

 さっき起きた出来事が無かったかのように席に座る、隣の席にはシルヴィが座っていた。


「あ、あの…」


 声をかけると、シルヴィは僕の耳元で小さく呟く。


「放課後、魔術室に来てください。」


「えっ。」


 話を続けるつもりが一瞬で終わってしまった、それにしても魔術室に僕を呼ぶ理由はなんだろうか。


(目さえ見えれば、小説が書けるようになる。)


 1秒でも早くシルヴィと信頼関係を築いて、目が見えるようになる方法を聞き出さなければ。 


 授業を難なく過ごしして、放課後を知らせるチャイムと共に全員が教室を出て行った。

 僕も皆と同じように教室を出て行く。


(もう、あんな所まで行ってるなんて…)


(まるで、瞬間移動でもしてるみたい。)


 後を追うように魔術室の扉を開けると、シルヴィは机に腰を掛けたまま座っていた。


「机に座るなんて…行儀が悪いですよ。」


「誰も見ていない場ですよ、キャシー・アシュレイ。」


「気にする必要はありません。」


「僕は見えなくても、聴こえはするんですよ。」


 呼吸音だけで、シルヴィが何処にいるのかが手に取るようにわかる。


「だとしても、貴方は誰にも言えない。」


「何故なら、貴方は私と友達になりたいのだから。」


 机から立ち上がる。

 シルヴィが僕の目と鼻の先に立っている。


「良いですよ、友達になっても。」


 僕の目の前で魔法陣が展開される。


「ただし、私の目標に付き合って貰います。」 


「も、目標ですか…?」


 何か面倒な事に巻き込まれたんだと感じる。


「そう、私の目標です。」


 冗談じゃ済まされないと言わんばかりの圧を込めながら、僕の顔を見て言う。


「私の目標は…」


「この腐敗しきっている国政を正し…」


「腐り切った国王の抹殺する事です。」


 国王を抹殺…?国政を正す…?言葉では理解しても頭では整理しきれない。


「ほ、本気ですか?」


「それは謀反を起こすのと同じですよ…」


 もし、バレたりでもしたら打首になるのは確かだ。

 

「ふざけてなんていませんよ、これは大マジです。」


 真剣に言っている事は声から感じ取れていた。

 それでも、現実的ではない言葉に耳を疑ってしまうのだ。


「私には…」


「国王を殺す覚悟があります。」


「というか、あのクズは私が殺します。」


 国王をクズと罵るのは恐らくシルヴィだけだろう。

 言葉からは恨み以上の覚悟を感じ取れる。


「つまり、僕は何を手伝えば良いんですか?」


 なんて答えるかは予想できていた。

 それでも、違う可能性を信じて聞いてみた。


「そうですね…まずは。」


「私と共に、まずは腐敗した国政の粛清を手伝ってもらいましょう。」


 爽やかな声色で答えている。

 何一つ迷いの無い真っ直ぐな声色。

 それだけで、シルヴィが本気なんだとわかる。


「わかりました。」


「そうしないと友達になれないのなら、喜んで手伝いましょう。」


 僕は目さえ見えるようになればいい、国がどうなっても関係ない。

 ただ小説が書けるようになれさえすれば、何でも良いんだ。


「取引が成立したようですね。」


「それでは、祝いに手を繋ぎましょうか?」


「え、はい。」


 僕がシルヴィの手を握り締めたと同時に、目の視力が一瞬だけ回復した。


「前にも言った通りに、それは目が治った訳ではありません。」


「目を通じて魔力の粒子が外の景色を映しているだけに過ぎないんです。」


「貴方は本来、目が呪われているのですから。」


 僕が呪われている…?

 そんな事は無いと思っていたが、まさか本当に呪われていたなんて。


「僕の目が呪われてる?」


「そんな、一体誰が呪いなんかを…」


 生まれた時から呪われていた。

 思い当たる所は何一つ無い。


「その呪いはモハメド王が使う呪いですね。」


「奴は何かを隠蔽する時に呪いをかけるんです。」


 モハメド王とは、このユーラス王国の現王である。


「実際に貴方からは、あの薄汚い魔力を感じます。」


「きっと、何かしらの不都合で呪ったのでしょう。」


 僕は国の王に呪われたらしい。

 理由なんて見当もつかないけど、目が見えないのは事実だ。


「つまり、僕は君の手助けをすれば…」


「最終的に目が見えるようになるって事ですか?」


 僕の目が見えなくなった元凶が居るのだとしたら、許せない。

 小説を書けなくした恨みは絶対に晴らす。


「あの国王を殺せば呪いが解けるなんて保証はありませんけど、やらないよりかはマシでしょうね。」


 保証が無くても可能性があるなら、試してみる価値はあるのかもしれない。

 それに、あの国王は暴君だ。

 国政も腐ってると思っているし、国の圧力が無ければ他の人達も同じ事を言っていたと思う。


「それなら、僕は誠心誠意を込めて君を手伝うよ。」


「その代わりに、僕の目が一瞬だけ見えるようになった技術を教えて欲しい。」


 その言葉を聞いたシルヴィからは、少し微笑んだ声が聞こえた気がした。


「私の技術は簡単に覚えられたりはしませんよ?」






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