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盲目貴族は小説を書きたい。  作者: Yな奴
マリア魔法学院

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キャシー・アシュレイ

 僕は7年の月日を掛けて、自力で歩く術を手に入れる事ができた。

 空間を音で把握する為、転ぶ事はなくなった。

 しかし、重要なのはそこではない。

 空間は把握できても、文字を書く事はできない。


「はぁ、文字が書けなきゃ意味がないのに。」


 音だけで地形を把握する程、聴覚は発達した。

 木属性の魔力も本を数十冊生成するくらいには、発達している。


(数十冊って言っても、全部白紙なんだけどね…)


 僕は今年からマリア魔法学院という所で魔法を詳しく学ぶ事になった、本当なら細かい手続きがある。

 でも、母の持つ権力は偉大みたいで簡単に入学ができてしまった。

 どうやら、母は貴族らしい。

 知っての通り、かなり偉い貴族だ。


(親のスネを囓ってるみたいで、嫌だなぁ。)


 本来なら目が見えない呪われた子供を入学させる事は出来なかっただろう。

 しかし、貴族の権力で半ば強引に入学させた。

 

 改めて親の力は偉大だと確信した…。



「コイツ、目が見えないらしいぞ。」


「少しイタズラしてやろうぜ…」


 僕の目の前で小さく相談し合ってる声が聞こえてきた、声からして男子生徒だろうか。


(聞こえないように話してるんだろうけど、僕からしたらハッキリと聞き取れちゃうんだよね。)


 嫌がらせで脚を引っ掛けようとしてくる。

 転ばせようとする古典的なイタズラだ。


(どうしてやろうかな。)


 このまま脚を避けて通り過ぎる事もできる。

 でも、それだけじゃ満足しない。

 意地悪する奴は自分も意地悪されるって身を持って体験するべきだ。


「痛っ…!」


 僕は知らないフリをしながら、目の前にある邪魔な脚を思いっきり踏みつけて進んだ。


「おい、待てゴラァ!」


 踏みつけられた事に逆ギレした男子生徒が僕の方を向いて怒鳴る。


「踏んでおいて謝罪の一つも無しか?」


「ほら、土下座しろよ。」


 土下座しろと僕に訳のわからない事を言ってくる。

 コイツは頭がおかしいのか?

 自分で脚を踏ませておいて被害者面をしている。


「どうして謝罪する必要があるんですか?」


 僕が堂々と言うと、気に食わなかったのか再び逆ギレしてきた。


「コイツ、貴族の汚点の分際で…!」


 目の前で魔法陣が展開される音が聞こえた。


(え、嘘でしょ。魔法陣まで展開するとか本気?)


 僕も魔法陣を出して対抗しようとした次の瞬間。


「野蛮な行いをするのが貴族のようですね?」


 赤髪の女子生徒が男子生徒の背後に現れた。


「き、貴様は…シルヴィ・ヴァレンタインッ!」


 突然現れたシルヴィという女子生徒は、魔法陣を向けられても微動だにしない。


「その魔法陣…私に向けない方がいいですよ。」


 シルヴィの挑発に対して男子生徒は更に激昂し、容赦なく魔法陣で攻撃しようとした。


「その面を焼き切ってやる!」


 火炎魔法を放つべく詠唱を唱える。


「総てを灼き尽くせ、フレイム!」


 魔法陣が赤く光出した次の瞬間…


「な…!??」


 男子生徒の魔法陣が暴発し顔が少し焼けた、その様子を見てシルヴィは「ヤレヤレ…」と言わんばかりの顔で見ていた。


「忠告したというのに。」


「どうやら、頭がお粗末だったようですね?」


 髪が焦げたままシルヴィの方を見て、男子生徒は再び魔法陣を出現させた。


「貴方の番ではありませんよ。」


 男子生徒との距離を一瞬で詰めたシルヴィは目の前で魔法陣を展開させる。


「このまま直撃したら、どうなるでしょうね?」


 魔法陣が男子生徒の目の前で輝く。


「や、やめ…」


 戦意喪失している男子生徒の前でシルヴィの魔法陣が散り散りになった。


「しばらくは動けなくなりますが…」


「そうなって当然でしょうね。」


 気絶して倒れている男子生徒を無視して、そのまま歩いて行くシルヴィを僕は追い掛けた。


「ま、待ってください!」


「今、どうやって魔法陣を暴発させたんですか…」


 僕の手がシルヴィの肩に触れる。

 それと同時に、一瞬だけ僕の視力が回復した。


「え。」


 シルヴィの姿と顔が鮮明に僕の目に映り込んだ。


「なに、今の…」


「確かに僕の目は今…」


 今の一瞬だけは目が見えていた。

 しかし、もう目は前のように見えなくなっていた。


「ま、待って…!」


 僕は気にせずに歩いて行くシルヴィを追い掛ける。


「今、僕の目に一瞬だけ光が戻った。」


「どうすれば、さっきのように目が見えるんですか。」


 一瞬だけ目が見えるようになった事に動揺している僕に、シルヴィは冷静な声色で言った。


「それは私の身体に付着していた魔力の粒子による物でしょう。」


「視力が回復した訳ではありません。」


「魔力の粒子を通じで景色が見えただけですから。」


 魔力の粒子…?魔導書には書いてなかった内容だ。

 それでも、目が見える可能性を見た僕は…

 シルヴィに希望を見出した。


「もし、良ければ…」


「僕と友達になってくれませんか?」


 この子から僕は聞き出さなければならない。

 もう一度、目に光を灯す為に。


「君、名前は…?」


 返事は無かったが、シルヴィは僕の名前を聞いた。


「キャシー・アシュレイです。」


 僕が名乗ると、貴族のようにシルヴィも名乗った。


「私はシルヴィ・ヴァレンタイン。」


「友達になるのは簡単じゃ無いですからね。」











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