レジェンダリーゴブリン③
「《魔力撃》《マルチアクション》!」
踏み込んで斬る。
「【ブリンク】!」
幻影展開。
「【ヒールスプレーSS】、【リカバリィ】…!」
回復。
そしてレジェンダリーゴブリンの反撃は幻影を空しく裂く。
再び。
攻撃――ブリンク――回復――回避。
何度も……何度も。
同じような応酬が繰り返される。
だが、それは単なる膠着ではなかった。
最初にレジェンダリーゴブリンから受けた一撃。
あの致命傷寸前のダメージは、すでに回復しきっている。
そしてユウナは、そこから回復の比率を下げた。
【ヒールスプレー】ではなく、より効率的に攻撃を通すため、賦術を【パラライズミスト】へと切り替えている。
回避を崩して命中を通す。
一撃一撃を、より確実な蓄積へ変える。
レジェンダリーゴブリンの体には、無視できない傷が、着実に積み重なっていた。
肩。
腕。
脇腹。
腿。
浅くとも確実な斬撃が、少しずつ、少しずつ肉を削っていく。
致命傷には程遠い。
一撃で決まる傷でもない。
だが、確実に削れている。
それが、レジェンダリーゴブリンにとって我慢ならなかった。
「ググググググッ……!」
低く、喉の奥を鳴らす。
苛立ち。
困惑。
そして、初めて混ざり始めた焦燥。
それでもユウナは止まらない。
デバフ――攻撃――ブリンク――回避
「グゾォオオオオオオ!!」
ついにレジェンダリーゴブリンが怒声を上げた。
周囲を圧する咆哮が響き渡る。
だが、ユウナは顔色ひとつ変えない。
驚異的な集中力だった。
それはもはや集中処理に近い。
目の前の格上を相手に、ユウナはただひたすら“ルーティンワーク”をこなしていた。
デバフ――攻撃――ブリンク――回避。
デバフ――攻撃――ブリンク――回避。
感情を切り離し、勝つために必要な工程だけを残した、戦闘手順。
それでも一瞬の油断が死に繋がる相手だ。
その相手に対して、最適行動を崩さず、何度も繰り返す。
集中力と再現性が異常だった。
淡々と……とも言えるような戦闘が続く。
レジェンダリーゴブリンの棍棒が空を切るたびに、ユウナの刃が新たな傷を刻む。
それはまるで、巨大な岩壁を小刀で削るような行為にも見えた。
だが確実に削れている。
確実に勝利へ近づいていた。




