↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

151/154

vs騎士団長

 王子が叫んだ直後、謁見の間の重厚な扉が開き、一人の騎士が入室してきた。


 全身を威容ある大鎧に包み、堂々たる足取りで、一歩進むごとに硬質な金属音が広間に響き渡る。


「おお、騎士団長! 来たか!」

 王子の声が、露骨な安堵と共に威勢を取り戻す。


 ユウナはその姿を認め、わずかに目を細めた。


「ふぅん……」


 この男は扉の外で騒ぎを察知していたのだろう。

 だが、命令が下るまでは出しゃばらず、無闇に介入して場を混乱させることもなかった。


「有能ね。国のトップはアレだけど、騎士団の質は悪くないみたいじゃない」


「騎士団長よ! 斬れ! この無礼で汚らしい穢れを、今すぐこの場で斬り捨ててしまえ!」


 王子の罵声を聞き、ユウナは呆れたように嘆息した。


「ねえ、この国には人のことを呼ぶとき、いちいち“無礼”とか“穢れ”とか付けなきゃいけない法律でもあるわけ?」


「……それ以上の暴言は、我が仕える王家への不敬と見なす」

 騎士団長はガシャンと鎧を鳴らし、一切の無駄がない動作で剣を抜き放った。


 腰を深く落とし、巨大な盾を前面に構える。

 その構えは岩山のごとく堂々としており、微塵の隙も見当たらない。


「かの英雄とこのような形で対峙するのは本意ではなかったが……こうなっては是非もなし」


「なかなか強いわね。……でも、だからこそ貴方には分かっているでしょう?」


 ユウナは言い放つ。

 彼女の手は剣の柄にすらかかっていない。

 重圧を撥ね除け、ただ自然体でそこに立っている。


「私の方が強い」


「び……ビビっているくせに! ハッタリで誤魔化そうとしているだけだ! 騎士団長、早くその穢れを黙らせろ!」


 王子の、余裕のない叫びが引き金となった。


「はっ!」


 鋭い呼気と共に、騎士団長が動いた。


 一閃。


 凄まじい風圧を伴った一撃が、ユウナの頭部を正確に捉え、そのまま身体を真っ二つに割り、勢い余って床の石畳を粉々に砕いた。


 誰もが、無残に両断されたユウナの姿を幻視した。


 しかし――。


 土煙が晴れた先に立っていたユウナは、髪一筋乱さぬ姿勢のまま、平然と佇んでいた。


 剣を振った騎士団長の目にだけ、最小の動きで剣を躱したユウナの姿が見えた。

 それと同時に、その耳にだけ、彼女の囁きが届いていた。


「――五年。待っていなさい」


 その意味を理解した瞬間、衝撃が首から全身に広がった。


 騎士団長の意識が途切れる。


 がくり、と膝が折れ、重い金属音と共に床へと倒れ伏した。


 兜に隠れてその表情は見えない。


 だが、その口元には僅かに笑みが浮かんでいた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。