表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

137/145

初戦闘

 翌朝。

 朝食を済ませ、片付けを終えたところでエリスが静かに目を閉じた。


『それでは……広域探査を開始いたします……【ライフセンサー】』


 エリスの周囲にマギスフィアが展開する。

 魔力の波動が広がり、四方へと放たれる。


『反応を検知しました。北西、距離……』


 と言いかけた、その時だった。


「た……助けてくれーっ!!」

 悲鳴が街道の先から響き渡った。


 街道を必死の形相でこちらへ走ってくる商人風の男。

 その後ろからは、獲物を追い立てるかのように、二体のボガードが醜悪な笑みを浮かべて迫っている。


『………………』

 最新鋭の索敵魔法を披露する間もなく「向こうからやってきた」事態に、エリスが微妙に寂しそうな表情を浮かべた。

『……対象、目視確認済みです』


「うん……」

 ユウナがそんな彼女の肩を、同情を込めてポンポンと軽く叩く。


 だが。


「……ぷふっ」

 初めて見るエリスの表情に、小さく吹き出すユウナ。


『…………』

 エリスは、そんなユウナをじっと見たが、何も言わなかった。

 ルシエラがその様子を見て身震いする。


 そんなわずかなやり取りの後。


「メイベルに二匹とも任せたいところだけど……」


 冗談の色が抜けたユウナは熟練の戦士の顔になり、エリスへ問いかけた。

「エリス、この先は?」


『はい。この先に十一の生命反応。状況と反応の大きさから見て、一体は荷馬。残り十体は人間サイズです』


「……護衛が雇い主の商人だけを逃がして、今も交戦中ってところかしらね」


 エリスが肯定するように頷く。

『魔法の探知だけでは詳細は不明ですが、商人風の男性が逃げてきた方向と合致する以上、その可能性は極めて高いと推察されます』


「のんびり訓練させている暇はなさそうね。一人だけ逃がしたってことは、残りの護衛はかなり不利な戦いを強いられているはずよ」


 ユウナが腰の剣をすらりと抜き放った。


「メイベル、ウォームアップよ。一匹はあなたがやりなさい。

 ……三十秒で片付けること。出来なければ罰を与えるわ」


「は……はいっ!」


 メイベルは緊張に強張る手で剣を抜き、盾を構えて正対した。


 新手に怯むことなく襲いかかってくる二体のボガード。


 そのうちの一体へ向けて、ユウナが影を残すような速さで踏み込んだ。


「ガひゅッ……」

 ボガードが獲物の動作に気づく暇さえなかった。


 ユウナの一閃は、振られたことすら視認できない速度で蛮族の喉元を断ち切り、返り血さえ浴びることなく沈めた。


 メイベルは残る一体のボガードと対峙した。


 ボガードの手にある粗末な棍棒が振り下ろされる。


「くっ……!」


 教わった通り、最小限の動きで躱す。

 だが、練習にはなかった生々しい殺気が、メイベルの動きを鈍らせる。

 ボガードの執拗な追い打ちに、メイベルは盾で防ぐ防戦一方となった。


「あと二十秒!」


 ユウナの冷徹なカウントダウンが響く。


 落ち着いて……相手の動きを見て……!


 ボガードの手先や脚。

 武器を振るために手前に出てきた小手先や、踏み込んできた脚を中心に、細かい傷を付けていく。


「十秒前!」


「ゲギャッ!」


 メイベルの瞳に、焦れたボガードが大きく振りかぶった瞬間の脇腹の隙が映った。


「やああっ!」


 鋭い踏み込みとともに、メイベルの剣がボガードの胴を深く切り裂く。

 致命傷を負い、たじろぐボガード。

 メイベルはその勢いのまま、渾身の力で心臓を突き抜いた。


 ドサリ、とボガードが地に伏したのと、タイムアップは、ほぼ同時だった。


「……ギリギリね。まあ、合格にしてあげるわ」


 ユウナは剣を鞘に納めることなく、前方を見据えた。


「さあ、ここからが本番よ。ルシエラ、あなたはその人を守りながら、無理のないペースで追いかけてきて!」


「了解しました。お気をつけて!」


 ルシエラが頷く。


「私たちは急ぐわよ!」


 ユウナが風のように駆け出した。


 その後を、一分の乱れもない動作でエリスが追う。


「……っ!」


 メイベルは肩で息をしながら、必死に二人の背中へと食らいつくように走った。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ