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嫌いな宮野  作者: 陽夏
体育祭編
28/29

奇策の訪れ



 体育祭が終わったと思えば、次に始まるのは期末テスト。青春真っ只中の高校生に、休まる暇なんてない。


 あれから、宮野とはいつも通り、何もなかったかのように接している。


 そして今、教室の端っこの宮野の席で、宮島と陽葵と4人で昼食をとっているのだが……。


 なぜか一人、こちらをじっと見て立っている男がいる。クラスの……えと、誰だっけ。



 「間宮さん!」


 ついに動き出したと思えば、要件は羽唯?


 確かに、クラスメイトの男子から何か用があるとなったら、宮島はまず除外される。宮野の可能性は高くはないが、ないこともない。したがって、残されるのは羽唯か陽葵なのだが……。


 「あたし?」


 「そうです!」


 彼が用があるのは羽唯で間違いないらしい。


 「えと、何だろ。あたし何か忘れてた?」


 日直でもないし、当番も当たってなかったと思うが。


 「いやっ、違くてっ。その……次の期末テスト!もし俺が学年一位だったら一緒に夏祭り、いきませんか!?」




 * * * *



 「へ〜夏祭りねえ…どこであんの?」


 昼にあったことを、隣の席の慎吾に話していた。


 「さぁ?僕がそんなに詳しく聞くことないけど」

 「えっ、あいつどんな顔してた?」


 おそらく宮野のことだろう。つくづく性格の悪いやつだ。


 「別に。普通だったよ」

 「ちぇっ、つまんねーの」


 こんなクズみたいなやつに友達がバカにされてるのがなぜか無性に苛立った。

 もしかして、体育祭の時の間宮もこんな感じだったのかもしれない。


 「慎吾も夏祭り高本さん誘ったら?」

 「は、はぁ?なんでだよ」


 その反応はわかってるだろ。なんでわざわざ聞き返してくるのかわからない。


 「とっととデートして告白して振られればいいのに」

 「おっまえ!」


 慎吾に対する瑛斗はいつもの三十倍は毒舌だ。それだけ気が知れているというか、どんな酷いことを言っても冗談だと笑って受け止めてくれる自信がある。そもそも慎吾は悪口や説教を間に受けるタイプじゃない。テキトーに聞き流して別の話題に持って行かれる。


 「あのなぁ、宮島くんよ。俺は散々言ってるだろ?」

 「高本さん優しいよね。明るくてハキハキしててかわいいなって思うよ。間宮さんは流石に高嶺の花で手が出せないけど、高本さんならどうだろう?僕みたいな人でもちゃんと相手にしてくれるあたり、簡単に他の男に捕まっちゃいそーだよね。」

 「……何が言いたい?」

 「慎吾は高本さんのこと諦めたの?それとも、高本さんが慎吾のこと好きになってくれるのを待ってるの?」


 ハッ、と鼻で笑う。いつもの間宮や宮野といるときとは様子が違う。



 「随分なご身分だよね。」

 


 しまった、言いすぎた。そう思った頃にはもう遅かった。


 ーーペチンッ!


 頬がジンジンする。痛い。慎吾に打たれたのか。



 「お前、なんか最近調子乗りすぎじゃない?」


 「慎吾は随分丸くなったね」


 自分で友達の頬を叩いたというのに、苦しそうな顔をする理由がわからない。

 瑛斗の言葉に言い返すでもなく、慎吾は教室を出て行った。



 * * * *



 「間宮さん、宮野くん。帰ろっか」


 帰りのショートが終わり、宮野とともに教室で待っていると、待っていた人が頬を腫らして来た。


 「えっ、ちょ、宮島!?どうしたのその顔!」

 「あはは、ちょっとね〜」

 「ちょっとじゃないでしょ!保健室は?」


 あの温厚な宮島が頬を腫らすようなことが起きるなんて。昼休みにはそんな様子がなかったから、それ以降の出来事であることは明白だ。


 「大丈夫だよ。心配してくれてありがとう。」

 「殴られたの?」


 これには、珍しく宮野も心配している。


 「まあね。僕が色々言いすぎたせいだから、ほんと気にしないで。自業自得って感じ」


 宮島は明るく振る舞うけど、今までで初めての出来事に、羽唯は動揺が隠せないでいた。





 「間宮さん、お昼の件本当にどうするの?」


 いつも通り、駅までの帰り道を、三人で並んで歩く。

 あまり考えたくなかった件を、宮島に掘り返されてしまった。


 「うーん、あたしはあれで断ったつもりなんだけど……」


 ちゃんと「嫌です」って言ったのに、そこをなんとかと言われてしまった。


 「吉田くんだっけ?間宮さん話したことあるの?」

 「ないよ。ほんとに急に言われてびっくりした」


 一度も話したことのない女子を、いきなり祭りに誘うなんてどうかしている。それに、全部あちらの都合で、羽唯の都合は考えられていない。


 「まあもし告白されても振るよ。ああいう人好きじゃないし」


 宮島も大きく頷いていた。彼もああいう人が嫌いなのかもしれない。


 「一位取らなきゃそもそも間宮さんとデートできないんでしょ?」

 「うん」



 「じゃあ、宮野くんに一位とって貰えば?」



 どこからともなく飛び出してきたその提案は、空気を一新させた。


 「その手があったか!宮野いつも何位なの?」


 実際にテストの順位を聞いたことはないが、宮野に勉強を教えてもらっている体感、宮野は学年で一、二を争うレベルで賢い。授業で習ったことは完璧に理解しているし、説明も丁寧だ。こんな人が学年にそう何人もいることはないだろう。


 「10位くらい?」


 「間宮があいつに一位取られたくないなら、俺が()ってやってもいいけど?」



 詳しく注文を説明するまでもなく、宮島の提案は実行に移った。



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