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誰かの性癖に刺されば良い物語  作者: 彼方遥陽
幼馴染女子×幼馴染男子執着系
2/6

仔豚の皮を被った狼は今日も牙を剥く





二匹の仔豚と言われたのは幼稚園の年中の時だったか。


この頃の自分は確かに少しばかり太っていた。その上、幼馴染も自分も上の兄弟達のお下がりばかり使っていたので小柄な身体に少し大きなそれらは尚の事それを増長させて見えたのだろう。


ついた渾名が仔豚だ。


でもカケラも気にならなかった。幼馴染の兄2人と自分の姉のある意味英才教育の賜物か。年齢に見合わないほど現実的に冷めていた。


ガキの戯言だ。気にするだけ無駄である。


そう思ってしまっていた自分は相当スレていたのかもしれない。


逆に幼馴染は兄2人と自分の姉に可愛がられまくっていた結果、初めての悪意に傷付いたようだった。


愛らしい頬に涙を伝わせて静かに泣く彼女をぎゅっと抱きしめた。


「きみちゃんは可愛いよ。世界で一番可愛いから大丈夫」


心の底から本心を伝えたが、彼女は一瞬きょとんとした後なんとも言えない表情のまま笑顔を浮かべた。


この想いはどうしたら伝わるんだろう。


始めて生まれたドロリとした何か。それを理解できないまま、この日から毎日かかさず彼女に気持ちを伝え続けた。


因みに最初に揶揄い出した主犯に関しては幼稚園の対応が早く、親にかなり叱られたであろうソイツは母親とともに直接謝ってきた。


子どものする事ですからーなんて親達は話していて、ちょうど幼馴染は別の子と何か話していた。好都合と主犯に近づき、ニコリと笑う。


「好きな子イジメがなんかしらねぇけど、次にきみちゃん泣かしたらただじゃおかないからな、このクソが」


普段大人しい自分の荒れた言葉に相手は固まった。仔豚と思っていたのが狼のように牙を向いたのだ。なかなかの衝撃だったらしい。


幼馴染の母と相手の母親はあらあらと目を輝かせ、自分の母に関しては間髪入れず脳天に拳骨をいれてきた。当時、まだ若く、ギャルママ気味の母は怒らすとかなり怖かった。


主犯は一応友人となり、高校に入った今では腐れ縁だ。親友なんて言われたりするが、それだけは全力で否定している。


中学までは小太り気味で仔豚の渾名は時折囁かれた。動けるデブだったのと、何かとグループの中心になりがちな腐れ縁の影響か目に見えてのイジメは無かったので放っておいた。まぁ、幼馴染が嫌がらせの的になりかけた時は全力で相手を潰しにいった。でも途中で腐れ縁に止められた。解せない。


幼馴染は年々可愛さを増していった。もともと太いわけではなく、小柄でワンピースやふわふわとした服を好む為に細くは見えなかったのか、幼馴染も仔豚の渾名がずっとついて回った。彼女の魅力が見えないならそれでいい。自分が分かっていればいいのだから。


高校に入ると自分の身長が一気にのびた。痩せた事やバスケ部効果なのかかっこいいと言ってくる連中もいたが、入学当初は陰でボロクソに言ってた連中の掌返しに鼻で笑ってしまった。


変に自分が注目を集めてしまい、幼馴染が悪意に晒されそうになると徹底的に釘を刺した。腐れ縁はいつも隣でひいていた。やはり解せない。


「佐々谷って胸がデカくて着膨れしてるだけだよな」


それが聞こえてきたのは放課後の教室からだった。


「足細いし、スタイルいいし、顔も結構可愛い」


佐々谷は幼馴染の苗字だ。一瞬頭に血が昇るまですぐにそれは冷静になった。幼馴染をそういう対象にみるクソはどこのどいつだ。教室に入ろうとしたところで腐れ縁に腕を取られ、抑えられた。


「でもカズがいるだろ」


「町村はただの幼馴染らしいぜ?本人が委員会で言ってたし俺にもワンチャンないかな?」


「やめとけ。あんな秒読みな2人に横槍いれるのはただの野暮だろ」


「菅井のいう通り。負け戦はやめとけやめとけ」


タイミングを見計らっていた腐れ縁は勢いよくドアをあけた。


「げっ、志島!あっ、えーと俺用事思い出したからじゃあな!」


そそくさと逃げて言ったのがさっきの元凶か。顔は覚えた。どうしてやろうか。


「おーい、実害無いしほっとけ。口だけだ」


「そんな射殺さんばかりの顔してたら逃げたくもなるわな」


失礼な腐れ縁は軽く蹴飛ばす。俺にもたまには優しくしろと喚いているが、聞こえないことにする。


勉強をしていたのだろう菅井がじっと自分をみると大きく溜息をついた。


「そんなに大事ならさっさと自分の物にしたらいい。じゃないと横から掻っ攫われるぞ」


それが妙に頭に残った。


それからの週末に俺は幼馴染を自分の物にした。

そして自分は彼女の物になった。幸せだ。


どこまでどうしたのかは、まぁ割愛する。


高校3年で受験を終えて、大学に合格した自分たちは高校卒業とともに晴れて結婚した。


完全に内輪だけで式だけを上げて、幼馴染の友人ん家の飲食店を貸切、まぁまぁ親しい人間だけを呼んで小さなパーティをした。


「・・・お前が変なハッパかけるから」


「俺のせいか?アレはもう病気だろ」


酷い言われようだが完全に否定は難しい。


彼女への感情は生涯変わらない。美しくも愛らしい幼馴染への恋物語ならまだしも、自分の中にあるのはドロドロとした愛執だ。


弱い小さな仔豚は狼がその皮を被っていただけだ。大事な物を守る為ならば時にそれは牙を剥く。


それは自然の摂理でしかないのだから。






幼馴染女子×幼馴染男子執着系 fin.








次も現代物予定。

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