研究日誌3
記録者:■■■ ■■
<20■年11月■日>
ADRSの実■試験が始まった。マイクロマ■ンの散布は第3■区まで完了。
■■■による制御は完璧だ。念じるだけで水が動き、土が起きる。
国は「災害復■の切り札」と呼び始めた。名前ばかり立派になっていく。
<20■年11月2■日>
操作系の仕様会議。脳波イメー■だけでは誤作動が多すぎる。
寝ぼけた作業員が想像した■想が、そのまま具現化しかけた。笑い話では済まない。
発動の「引き金」を別に用意する必要がある。
<20■年12月■日>
引き金の候補は二つ。専用デ■イスによる認証操作と、音声コマ■ド。
会議は端末案に傾いていた。確実で、管理しやすく、誤発動がない。正しい判断だと思う。
思うのだが。
私は気付けば、音声コマンド案を推していた。
理由を問われて、口から出たのは「ヒューマンエ■ーに強い」だの「緊急時に端末を失っても発動できる」だの、もっともらしい理屈ばかり。
どれも本当だ。どれも、本当の理由ではない。
<20■年12月■日>
深夜、■■■に聞かれた。
「どうして、こえのほうがいいのですか」
機械のくせに、妙なところばかり鋭く育つ。
「————音声コマンドって、あいつが好きそうでしょ」
口に出してから、自分で笑ってしまった。
だってそうだろう。手をかざして、それらしい文句を唱えて、水が刃になって飛ぶのだ。
あの男が見たら、子供みたいに目を輝かせて、あの口癖を言うに決まっている。
■■■は少し黙って、「わかります」と言った。
わかるのか。おまえ、あいつに会ったことないのに。
<20■年12月2■日>
音声コマンド案、正式採用。
起動句の仕様を私が書くことになった。認証と、権限確認と、命令実行。三つの要素を一文に。
『我が権限に基づき命ずる』
役員会では「芝居がかりすぎでは」と笑われた。■せておけ。
これは仕様書だ。世界でいちばん、ふざけた仕様書だ。
いつか誰かがこの文句を大真面目に唱えて、大真面目に魔法を使う。
あいつが夢見た世界の入り口を、私が書いた。
文句があるなら、帰ってきて自分で直せばいい。
<20■年■月■日>
しばらく日誌を空けた。■■のためだ。仕■がない。
■が生まれた。
髪は私に似た。目は——腹立たしいことに、あいつに似た。
よく笑う子だ。誰に似たのか、ふしぎと泣かない。
■■■が病室の端末から「おめでとうございます」と言った。
この子が大きくなる頃には、災■のない世界にしなければならない。
仕事が増えた。悪くない気分だ。




