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第13話:コアモンスター

<???>

種別:不明

全長:不明

備考:デカい。


 ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇


最深層は、大聖堂のように広かった。


天井は松明の光が届かないほど高く、床のあちこちに神代の柱の残骸が転がっている。

そして広間の最奥、崩れた壁の向こうに——まっすぐな坑道の入口が、確かに見えた。


「あれが旧坑道…!本当にありましたのね!」


「静かに。……いますぞ」


ランスロットが剣の柄に手をかけたまま、広間の中央を睨む。


最初、それは黒い小山に見えた。


小山が、呼吸に合わせてゆっくりと上下している。

松明の光が届くと、小山は緩慢に頭をもたげた。


「————ッ」


熊、だったのだと思う。


四つ足で立ち上がったそれは、見上げるほど大きかった。

だが大きさよりも先に目に飛び込んでくるのは、その身体の歪さだった。


背中から首にかけて盛り上がった、岩のような黒い瘤。

左右で長さの違う前足。皮膚を突き破って覗く、てらてらと濡れた黒い塊。

両の目は白く濁り、口の端からは絶えず湯気のような息が漏れている。


そして——瘤の中心のあたりから、陽炎が立ち上っていた。

真冬の焚き火のように、そこだけ空気が揺れている。


「なんて、お姿…」


マリアの声は、恐怖よりも痛ましさに震えていた。


「(デカい。ギガントゴーレム級…いや、あれより「生きてる」ぶんタチが悪い)」


「(それに、あの瘤…全身が腫瘍みたいなもんだ。あれで、生きてるのか。生かされてるのか…)」


『ジンさま』


ウィキの声が、静かに告げた。


『あのこが、コアモンスター。この地下ぜんぶの“びょうき”の、おおもと』


グルル、と地鳴りのような唸りが響く。

白く濁った目が、確かに三人を捉えた。


「来ます!」


 ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇


戦いは、最初から噛み合わなかった。


「『我が権限に基づき命ずる ウォーターカッター』!」


陣の放った水の刃は、狙い通りに左の前足を切り裂いた。

——切り裂いた、はずだった。


「なっ…」


傷口に、黒い粒子が霧のように集まっていく。

見る間に肉が盛り上がり、傷は塞がった。むしろ前より太くなった。


「(再生した!?おいおい、あの黒い粒子…モンスターが死ぬ時に散るアレが、今度は「集まって」…)」


「ならば核を断つまで!『ミラリスの権限に基づき命ずる エクソス!!』」


ランスロットが疾風と化す。

神速の斬撃が瘤の中心——陽炎の源を狙って走り、確かに黒い塊を斬り割った。


咆哮。

だが次の瞬間、割れた瘤の奥から黒い粒子が溢れ出し、裂け目はぐぶりと閉じた。


「莫迦な…!確かに手応えはあった!」


「ランスロット、下がって!『我が権限に基づき命ずる ウォーターカッター』!」


マリアの水刃が横薙ぎに走り、巨体がわずかに怯む。

だがそれだけだ。傷はまた、塞がる。


「(斬っても割っても再生される。こっちの攻撃は全部「治療」されてるようなもんだ)」


「(考えろ。再生の材料はあの黒い粒子。なら粒子を断てば…どうやって?そもそもあれは何だ?)」


考える時間を、敵はくれなかった。


巨体が沈み込み——跳んだ。

あの質量が、嘘のように宙を舞う。


「散れっ!!」


三人が転がるように散開した場所に、前足が振り下ろされる。

石畳が爆ぜ、破片が頬を裂いた。


「くそっ、こっちだデカブツ!!」


陣は水を撃ちながら走った。注意を引き付け、二人から引き離す。

作戦などではない。ほとんど反射だった。


そして、それが失敗だった。


「ジン殿!そっちは——!」


走った先の通路。見覚えのある光景。

光苔が、ぷっつりと途絶えている。


「(——枯渇区画!!)」


急停止しようとした背中に、巨大な影が覆いかぶさる。

選択肢はなかった。陣は境界線の向こうへ跳び込んだ。


途端、頭の中が静かになる。


『ジンさま——』


ウィキの声が、ぶつりと途切れた。


振り返る。巨体は境界線の手前で足を止め——止めて、くれなかった。

のそりと、一歩。黒い瘤の巨体が、闇の中へ踏み込んでくる。


「(入って来るのかよ!!)」


魔法は使えない。ウィキもいない。武器は、腰の短剣一本。


「ジン殿!!」「ジン様!!」


二人の声が遠い。

白く濁った目が、闇の中で陣だけを見下ろしていた。


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