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鳥になった俺は、ある女の子に恋をした。  作者: あまね


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4/11

異界は、思っていたより平和だった

『記憶喪失少女は、それでも生きていく』番外編。


★☆本編も読んでいただくと、より楽しめます☆★


● 本編はこちら●

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そして、ある夜。


——ヴォン……ヴォン……ッ


門が、ゆっくりと開き始めた。

誰も動かなかった。

その場は一瞬で静まり返った。


「おまえら、準備しろ。門はそろそろ開く」

イリアス隊長は先に声を上げた。

「ジョエル、変身魔法をかけてくれ」


ジョエル隊長はすぐ魔法を強化する道具を握り締めた。

異界に向かう七名の騎士とファビアンに、一人ずつ変身魔法をかけていく。

イリアス隊長は一人ずつ護身魔法を施していく。

こうして、全員が鳥の姿へと変わった。


俺は黄色の羽を持つ鳥。

ジルは赤。

マーティスは黒。

ファビアンは白。

他の騎士も色がばらばらだった。


動物の姿になったのは初めてで、この鳥の姿はひどく違和感があった。

自分の体ではないような、不思議な感覚だった。

思い通りに歩けない。

前へ歩こうとしても、小さな一歩しか進まなかった。


試しに風魔法を放ってみても、地面にの石を転がした程度だった。

「……全然、だめじゃないか、このままじゃ……」

俺は呟いた。


「慣れだな。ほら見ろ」

ジルはそう言うと、翼を広げ、空を飛び始めた。

「俺、すげぇかっこよくない?」

ジルは自慢しているように言った。


……重大任務なんだから、遊んでいる場合じゃない。


門が完全に開くまで、俺たちはその場で待っていた。

その間に、鳥の体に馴染むようにひたすら飛び回り、魔法を放ってみた。

今は、風球を自由に放つことができ、翼も自分の手のように操れるようになっていた。



——バチッ……バチバチッ!


門が、完全に開いた。

「おまえたち、気を付けろ。行ってこい」

トーマス副隊長は言った。


俺たちは互いに合図を交わし、百年の門へ飛び込んだ。




門の中の空間は、現実とは思えなかった。

翼を羽ばたいていないのに、前へ進んでいるような感覚だった。

だが、両側の真っ黒な風景は、自分が同じ場所に留まっていると錯覚させていた。

風の音すら、何も聞こえなかった。

それなのに、体中の羽が風に吹かれているように動いていた。


門の中にいる時間は、長いのか、短いのか、わからなかった。

出口がなかなか見えず、俺は不安が募っていった。


……本当に、出られるのか?


マーティスやジル、ファビアンに目をやると、三人とも眉間に皺を寄せていた。

隊長と副隊長たちまで、眉をひそめていた。


……みんな、同じ気持ちなのかもしれない。


しばらく飛び続けると、闇の中に、かすかな光が滲んだ。


……出口だ。


——ヒュンッ!


門の向こう側は眩しく、しばらく目を開けられなかった。

太陽は頭の真上に昇っていた。


……俺の世界は夜だったのに、ここは昼なのか?


それとも——

それほどの時間が過ぎていたのか?


……答えの出ない疑問だった。


俺たちは地面へ舞い降りた。

門を振り返ると、俺たちの世界に現れたような重厚で巨大な門は——そこにはなかった。


……だが、何かがそこに“ある”気配だけは感じる。

空間が歪んでいるような、不気味な違和感だけが残っていた。

……これでは、誰も気づかないだろう。


門の近くには林があった。

遠くを見ると、田んぼが広がっていた。

その合間を縫うように、小さな川が流れていた。

さらにその先には、山が連なっていた。

建物のようなものが、遠くに見えた。


……人間の家、だろうか。

近くには人の姿は見えなかった。


「ここが……異界、なのか?」

イリアス隊長は周りを見回しながら、呟いた。


「意外と、きれいな場所ですね」

ジョエル隊長が言った。


「……そうですね。戦争のど真ん中に出てくるとも想像していたが」

レオンさんは呟いた。


俺は深呼吸をした。


……空気も、きれいだ。


こんなところに住んでいる人間が、残忍で残酷な者だと思えなかった。

遠くで何かが走っているのが見えた。


「……あっ、あれ」

ジルは小さな翼で前方を指さした。

「……もしかして、文献にあった“馬車より速い乗り物”じゃないか?……確かに速いな」

ジルは感動したように呟いた。

「すげぇ~。乗ってみてぇ~」


「ジル。任務中だ。気を抜くな」

ジョエル隊長に言われると、ジルは肩をすくめた。

「ここ、確かに魔力の流れが薄いですね」


俺は近くの木に風球を放ってみた。

枝が揺れる。


……よし。

魔力は薄いが、魔法は使えるみたいだ。

俺は安堵したように、息を吐いた。


……が。


「……おいっ!あれを見ろ。鳥がめっちゃいるぜ!」

「すげぇ~。色もばらばらだ!」

男の声が聞こえた。


俺たちは硬直した。

声のもとへ目を向けると、十歳ほどの男の子が三人、俺たちを見ていた。

そのうちの一人が、地面に転がった石を拾い、俺たちに投げてきた。


「散開!計画通り、持ち場につけ!」

イリアス隊長の声と同時に、俺たちは反射的に空へ跳び上がり、その場を離れた。


……やはり、文献の警告は間違っていないのかもしれない。


俺たち七名の騎士は、それぞれ持ち場を持っていた。

門を中心に、山までの一帯が俺たちの見張り圏内だった。


若手で経験が浅い俺とジルは、二人で門の北から、東にかけてを担当。

マーティスとレオンさんは、東から、南にかけて。

イリアス隊長は一人で、南から西にかけて。

エレクさんは一人で、西から、北にかけて。


ジョエル隊長は、全員の変身魔法を維持するため、一箇所に留まることができない。

常に全体の位置を把握しながら飛び続ける必要があった。


ファビアンは見張り任務には加わらず、門周辺を中心に移動しながら記録の務めを行う。



必要に応じて、最も近い持ち場の者がファビアンの補助に入る体制となっていた。


ここまで読んでくださりありがとうございます!


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