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【 何度目 】
「僕は、ここを知ってる」
マブチの眼前に広がっているのは、拷問器具のようなものが乱雑に並べられた空間。床には何かを引きずった跡のようなものがいくつもついているのだ。
「……あれ、私も」
「俺も、見たことあるぞ、この部屋」
「良い気分がしないわね、ここは」
偶然なのか、4人とも同じ感覚を味わっていた。目の前に広がっているおぞましい光景の一部に、自分が数えられているような感覚を感じていた。
その時、どこからともなく声が聞こえた。
「おやおや、こちらからいらっしゃったのですね」
地に足のついていない、黒いもや。そう形容できるような、不気味な物体が4人の前に現れた。意識しなくともそこが目だと分かる白い光が漆黒の中に浮かんでいる。
「初めまして皆様、私は当館の使用人をしております。そうですね、親しみを込めてカゲとでも及びください」
そう言ってカゲと名乗った不気味な物体はニッコリと笑ったように見えた。そしてその光景にも、マブチ達は既視感がある。
「あんた、本当に初めましてなのか? 」
4人を代表するようにしてアサヒが疑問をカゲにぶつけた。それは全員の頭の中に浮かんでいた疑問だった。
「では、こうしましょう。お久しぶりです。皆様。何度目の、今ですか? 」
その一言に4人は戦慄する。その瞬間に思い出したのだ。自分がここで何をされたのか。何があったのか。全てを、思い出した。
その上で、その場で叫びまわるようなことは避けた。目の前に、それを引き起こした元凶がいるためである。
「全部、思い出したぞ……。あんたからされたことを」
「はて、何のことでしょうか。元はと言えば私ではなく、あなたたちがやったことでしょう? 」
それに対して4人は反論できなくなる。自分が過去にやった過ちが、そのまま自分に返ってきた。その事実に対しては認めざるを得なかったのだ。
「でも分からない。何で僕たちはこの館に居るんだ。それだけが未だに分かってない」
「それが、この館の『秘密』にございます」
カゲはそれまでのひょうきんな様子とは打って変わって、冷静な声でそう言った。マブチの予想は、当たらずとも遠からず、的を得ていたのだ。
「また、僕たちを殺すのか」
「お望みとあらば。ですが、皆様もあんな思いはもうこりごりでしょう。ですので私からのささやかな気遣いとして、最期に少し昔話をいたしましょうか」
そう言ってカゲは、グニャリと姿を曲げ、その形を変えていく。カゲは段々と小さい体に収束していき、やがて1人の少女になった。その姿は、何度も夢で見た、あのボロボロの服を身に纏った少女だった。
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