第43話
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まあ、とりあえず急ぎでも無いんだし組み分け優先でいいか。受付右の廊下を進み、一番奥の教室である1−3 教室に向かう。1−1は電気がついてないけれど、1−2には推定ダテラスと他一人がすでにいた。推定なのは後ろ姿だからだけど、もう一人は多分顔を合わせたって誰だかわからないだろう。今の所用も興味も無いので置いておく。すぐ目の前まで来ていた1−3教室の扉は開いていて、一人の男性が教壇で何かを熱心に読んでいた。
あるいは口さがない人ならつるっ禿げというかもしれない自称坊主頭に、薄くオレンジ色が入ったサングラス。座っていてもわかる、教壇が窮屈そうに見える身長195センチ。多分教師と言われても誰も信じないだろう彼が間楽義太 先生だ。この先生の顔のせいでここは塾生が増えないという話だったか。
「間楽先生いますか?」
「……その問い非論理的だね蘭堂君」
顔を上げ、何かから目を離した先生がまっすぐこちらを見てそう告げる。うーん、こんな言動な人だったか。正直よく覚えてないんだけど、特徴的な受け答えをする人だとは確かに思っていた。
でも非論理的……非論理的って言われてもなぁ。正直、その回答はなかなか非効率的だと思うんです。
「じゃあ、間楽先生は『俺の質問に答えてくれるくらい暇にして』いますか?」
「ええ。もう少し暇にしています」
「そうですか」
俺の言葉に目を見張る……ようなことは無い。張り付いたうっすらした微笑みは微動だにせず、その口は淡々と言葉を紡ぐ。
もう少しって抽象的すぎてどれくらいなのかさっぱりわかんないですけど、そうですか。個人的には非効率なのも抽象的なのも全くもって論理的じゃ無いと思うんですけどどうなんすかね。それでまあよくも論理的じゃ無いとか言いますよね。まあ、非効率的なのも抽象的なのも論理と関係無いといえば関係無いことは確かなんですが。
「あの、俺先週クラス分けテスト受けなおしたじゃ無いですか」
「ええ一週間体調不良で休んだからでしたか。その上期末試験だとかで休みましたね。概算二週間の遅れです」
「……はい」
「一週間休んだ程度でクラス分けテスト受け直すのもそうですが、その上さらに一週間休むというのはなおさら非論理的ですね。効率も悪いです。したがって蘭堂君、君のクラス変更はありません」
「はい?」
「クラス分けテストで学力を確認できましたし、一週間かけて補修課題を作りました。かく講師の課題とは別にこれをこなしてください。君は驚いているかもしれませんが、君が今日この時間にここに来るのは完全に想定内の出来事です。早速ですが私が今持っているこれがそうですのですぐに取り掛かってください」
そう言って先生が持ち上げて見せたのは、厚さ2センチはありそうなA4の紙の束だった。
「一週間でこなせば元のクラスに追いつけるはずです。どうぞ」
「う、うっす」
「よろしい。それでは失礼します」
ずっしり重いそれを俺が受け取ると、間楽先生は涼しい顔で教室を出て行った。マジでこれを渡すためだけにここにいたのか。想定内の出来事って本当だったのかな。それにしても……えええ、これを一週間ですか。マジですか。
自分自身、筆記用具、補修課題の順に魔法をかけ、適当な席に着きパラパラと中身をめくってみる。紙の厚みを0.1ミリとしても10枚で1ミリ、100枚で1センチ、2センチということは200枚。しかもこれ両面刷り……400ページ。A4かつ400ページのテキスト一週間、なおかつ塾の課題とは別枠。なんていうか……文字がびっしりだ。国英数社……5教科それぞれじゃなくて一冊に詰まっていると思えば当然かもしれないけど、なんとかなるかなぁこれ。こう見えて結構忙しいんだぞ? 志望校のことも確認しなきゃいけないのに。以前の志望校は学校にプールがあったからな。水泳の授業は選択式じゃなかったから、諦めざるおえない。
「なんてったって今の僕は物理的に浮かない からな」
最後は理。一番量が少ない気がするのは……向こうであまりにもこっちの仕組みとかけ離れた体験ばっかりしてたからか。そのせいで逆にこっちのことをよく思い出していた気がする。魔法の仕組みよくわかんなかったし。最後のページが浮力なのは何かの皮肉だろうか。偶然だろうか。
まあ、愚痴ってる暇があったらやらんわけにもいかないよな。
文字の大きさや形が微妙に違ったり、時々混じってる通し番号がうまく繋がってなかったり。ほぼほぼいろんなテキストからのパッチワークのように見えるけれど、それだけじゃ無いというのも読んでいればわかる。というか時々手書きが混じってるもんな。筆跡も一定じゃ無いから、間楽先生一人で作ったわけでも無いんだろう。
……うん。頑張ろう。とりあえず時間を計って、一時間でどれくらいできるのかとか確認しながら予定立てるんだ。明日は……いくつか当てをつけてた学校を見学する予定もあるし、今日から頑張ろう。
「高校見学……かぁ」
俺、高校行っていいのかな。
更新時間が遅くなっていて申し訳ありません。
もう少し私生活が落ち着いたら頑張って安定させます。




