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第40話

 いまいちなんの意味があったのかわからない友人(?)達との交流をひとまず終わりにし、俺は一旦職員室に向かった。もちろん中には入れないけど一応こう、学年主任の先生とか教頭先生とかに挨拶した方がいいかな? と思ったからだ。とりあえず試験休みが開けたら普通に教室に行っていいのかを確認する……つもりだったんだけど、忙しいそうでとりあえずあけたら最初に職員室に来るようにと言われた。

 その妙な間は必要なんだろうか。普通に『次は教室で待ってるねー』って言ってくれないんだろうか。休み空けは試験返却なんだろ? 普通でいいと思うんだけど。


「……あ、俺の座席聞き忘れた」


 いや、試験返却も普通に出席番号順に座るらしいし、誰に聞けばいいのかもわからないけどな……冬休みあけたら自分の席忘れてましたってのはいけるような気がするんだけど、終業式の日は普通に座るんだったような気がする。通信簿の返却があるんだから普通に試験着席でいいだろ。なんでよりによってあの日だけ普通に座らせるんだ。せめてもの救いは、さすがに終業式に休む奴はいないだろうってことだな。だって、翌日から冬休みなわけだし、多少の風邪くらいで休んだりしないだろ。

 学校から家への帰り道をそれて、あの日そうしてたみたいに塾への道を行く。あの日俺が呼ばれた時に立っていた場所であり、帰ってきた時に立っていた場所、公園の裏の立体駐車場を抜けて。

 そしてこっちに帰ってきたばかりで戸惑ってた俺を助けてくれたのが、謎の同級……もとい同塾生『彼』だったわけなんだけど。


「うっす蘭堂……だよな」

「お、おう」


 なんでいる。


「元気そうだな。二週間ぶりくらいか?」

「そんなもんだけど、なんでこんなとこにいるんだ」

「うん? ここの駐車場の奥に駐輪スペースがあるんだよ。安心しろ。別にお前待ってたとかじゃねーから」

「お、おう」


 若干考えを読まれたみたいで気まずい。っていうか変に意識してたみたいで気まずい。

 よく考えたらショートカットにこの立体駐車場使うの俺だけじゃないだろうし、変に待ってたとか思うのは完全に自意識過剰な振る舞いだ。実際クラスの何人かはこの塾に通ってるはずなので。


「んで、調子はどうだ?」

「え、まあ普通だけど」

「そっか。まあ、前見たときはゲーゲー吐いてたしな。その後ずっと出てこなかったし、結構心配だったんだ。良くなったみたいで何より」

「それは……ありがとな」

「で、今更なんだけど」

「うん」

「俺の暗記カード返してくれ」

「うん?」


 え、なに? どういうこと?


「だからさ、俺が塾の教室に忘れてった世界史と英語の暗記カード、お前が拾ってったって聞いてるんだけど」

「え、ちょっと待ってくれな」


 暗記カード……単語とかが表に書いてあって、裏にその細かい内容が描いてあるアレだよな。確か向こうに召喚されたときは持ってた。持ってた覚えがある。っていうかまさにそれを手に持ってペラペラめくってる最中に召喚された。

 そんでもってかなりいろんなことに使いました。あれ使って向こうで結構散々勉強した覚えもあるし、そもそも突如現れた中世ファンタジー風の人間たちに英語でバンバン話しかけたしな。それから魔法の名前付けたりするのにもかなり使わせてもらったし、魔剣の名前なんかあれの一番最後のページの単語そのままつけたんだ。『サーシス=シリカストゥルム』だったっけ。日本語は……セイヨウハナズオウ? 俺ああいうの使わないで教科書に書き込んだりノートにひたすら書いて覚える派だったから、後からなんで持ってるのか不思議に思ったんだけど、塾で拾ったとしものだったからなんだな。なるほど納得。それじゃまあとりあえずは本人のものか確認するか。


「ええと、暗記カードって最後の一枚がセイヨウハナズオウの」

「うぐわあああああああああああああああああああああああああああああああ!!?」


 え、なにどうしたのこの人いきなり叫び始めて怖い。


「それ、それで間違いないから! 余計なこと言わないでいいから返してくれよ!」

「いや、ちょっと待て、今手元にないって」


 突然のキャラクター崩壊に戸惑いを隠せないんだけど俺。なに、どういうこと? 確かに社会科のテストあったけど、主に公民だったから歴史暗記用の単語カード持ってきてないんだよ。そんなに詰め寄られても困る。

 どう対処していいかわからずにおろおろしていると、彼は少し冷静になったのか俺の両肩に手を置いてグッと睨み上げてきた。


「セイヨウハナズオウ」

「あ、ああ。サーシスシリカストゥルムだろ?」

「ユダの木」

「なに言ってんだ?」

「……ならいい。今日は持ってないのか?」

「英語の試験はなかったからな」

「そっか」


 よくわからないけど家に帰ったら『セイヨウハナズオウ』と『ユダの木』を調べよう。なんかの悪の組織の符丁とかでもなければ調べりゃ普通にわかるだろうし。

 っていうか単語カードにそんな符丁を書き記して持ち歩くバカいないだろうな。


「まあいいや。とりあえず早めに持ってきてくれよ。無いと困る」

「ああ。持って帰って悪かったよ……でも俺教室で拾ったのかなあれ?」

「……確かに教室で拾ったんならその辺に置いとけばいいもんな」

「だよな……ところで今更だけどさ」

「うん?」

「お前の名前聞いてないと思うんだけど、なんで俺のこと知ってるんだ?」


 それからな、お前、なんで俺が蘭堂在人だってわかったんだよ。

いつも読んでくださってありがとうございます。

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