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第37話

「それではホームルームを終わります。日直さん」

「はい」


 結局30分くらい椅子に座ってるように見せかけた空気椅子を持続することになった。

 両足がっくがくです。

 ちなみに大掃除の時の場所は別館1階理科室前の廊下だ。広いけどあんまり物がない場所なので、何かを壊してしまうかもとかって気をつける必要があまりなさそうな場所を選んでみた。結構人気な掃除の場所としては3番人気くらいか。動体視力で他人が何を出すのか見切れるようになったから、じゃんけんは楽勝だった。

 ただ、周辺視野がそんなに鍛えられてなかったから、全員の手をいっぺんに見れるわけじゃなくて、何人かに負けない手を出すので精一杯だったのは、まだ鍛える余地があるということだろうか。鍛える気はないけど。

 あと、じゃんけんでちょっとだけみんなと打ち解けた気がする。


「起立、気をつけ、礼」

「さようなら」

「「「「「さよーなら」」」」」


 あ、そんなこと言うんだっけか。ちょっと覚えてなかったや。無言でお辞儀だけしちまったけど……まあ他にもそういうやついるみたいだし大丈夫だろ。隣の席のやつから微妙に視線を感じる気もするけど、以前の俺はちゃんと言ってたのかな? うーん? まあ言ってたにせよ言ってなかったにせよ、次からいきなり言うようになったら逆に怪しいよな。とりあえず今後も言わない方針で行こう。

 うっかりでもなんでも、あんまり大声出すと音響兵器みたいになりかねないし。

 っていうか、じゃんけんがあんなに簡単に攻略できるとは思ってなかった。やっぱり俺の体って大分化け物じみてるんだよな。向こうにいた時一番些細なことで大きな影響があったのは……睨んだ狼が泡を吹いて気絶したやつか。熊はさすがに気絶しなかったけど怯えて逃げたっけ。思えば生徒指導室からあいつが逃げたのもそれが原因かもしれない。

 うん。試験休み中に自分の力をちゃんと見極めよう。

 いや、試験休み中は受験勉強に力を入れて、春休みにやるか? ペンを折ったりとかの心配は、とりあえず魔法を使えば対処できるわけだし。


「それじゃ解散ですけど、試験返却の時も試験着席ですから間違えないでくださいねー」


 ふと、思い出したように先生が教室の扉の前で足を止め、思い思いに座りなおしたり、カバンを持って歩き出したり、もしくは椅子に座り直して誰かと喋り出す生徒たちに向かって声をかけた。

 ちょっと先生、俺ら三年だよ? なんて言ってるやつはいるけど、俺としては聞けてよかった情報だ。自分の席がわかるわけじゃないし遅刻すれすれに学校に行く算段を立ててたからな。それだって、本当に遅刻するやつがいると台無しになるという、なかなかリスキーな選択だ……まあ、ぶっちゃけその辺に正解はなさそうだし、なんだかんだで当日誰かに聞けばいいかなーというのが本音なのだけど。ど忘れしたとか適当なこと言って。

 うん、それが無難だよなやっぱり。先生を見送りつつ、ため息をついて席に座り直そうとして直前で思いとどまる。危ない。なんのためにあんな長時間空気椅子で耐えたんだ。

 とりあえずとっとと家に帰って、魔法をかけたベッドにでも寝っ転がろう。いつの間にか耐震用の補強剤とか鉄板とか仕込まれてたからしなくても大丈夫かもしれないけど、したほうが気持ちがなんとなく楽なんだよな。そういえば、高校生になったら部屋を一階に移してもらうことってできるかな? 階段上るのも結構怖い時あるし。


「おい、蘭堂」

「ん?」


 カバンを拾ったところで後ろの席のやつが突然話しかけてきた。出席番号で確認はしたから名前はわかる……はずだ。ええと。


龍胆 りんどう?」

「なんで疑問系なんだよ。一年の時からの仲だろうが」


 まじか。

 いや、これはあれだろ。一年の時から出席番号が一つ違いの仲であって、別に親しくないんだろ。だってお互いに名字呼びじゃん。本当に親しかったら名前呼びじゃね? 別に同じ名前ってわけでもないんだし。あとメールもらってないし! ここは強気にGOだ。


「で、なんかよう?」

「用っていうか、まあ、いろいろあるんだよ」

「いろいろってなんだよ。言ってくれなきゃわからんぞ」


 まあ幾つかは予想できるけど。

 とりあえず身長だろ? 何が有ったかだろ? あとはまあ……なんかいろいろ。

 ごめん、あんまり考えてなかったや。


「ええと、とりあえずあれだよ。身長今いくつだ?」

「予想通りの質問ありがとよ。180超えたとしか知らん。測ってないし」

「そ、そっか。じゃあ、お前、なんでそんなんなったんだ?」

「さあ? 原因不明の奇病?」


 なんていうか、こいつそのまんまの質問しかしないな。想像以上に想像以下だぞ。


「それって……うつるのか?」


 お、おお、それは想像してなかったけど、なんだ、お前、俺が言うのもなんだけどその質問最低じゃね?

 そう思ったら横から現れた女子が龍胆 りんどうの頭をはたいた。ええと、誰だっけ。どこから来たのかわからないから名前を把握できないぞ。見覚えもイマイチないし。


「ハル、それはない。あまりにデリカシーがない」

「いてえよハスモト」


 ハル……ああ、竜胆の名前ってハナじゃなくてハルって読むのか。で、こっちの女子は蓮下 はすもとな。確か名前は『編』て書いて……アミだっけ? アムだっけ?

 まあ、今日まで呼んだことないなら一生呼ぶこともないしいいか。


「それでアト、身長伸びた代わりに足が遅くなったとか言わないわよね」

「え、さあ? 治ってから全力で走ったりしてないし……アト?」


 アト?

いつも読んでくださってありがとうございます。

遅くなって申し訳ありません。

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