第36話
「え、ええと……」
何か言わなくちゃいけないんだよな。っていうか、説明をしなくちゃいけない。でも何から話せばいいんだ? あ、こういう時って立った方がいいんだよな。多分。そんなことを思って慌てて立ち上がると、窮屈な椅子と机ががたがた音を立て教室を妙な静寂が満たした。いっそ失笑でもしてくれた方が反応できるんだけど……誰もしゃべらないな。虚しいぞ。
「あ、蘭堂君、別に立たなくてもいいですよ」
「はぁ」
先生がそんなことを言ってくれるけれど……立ってから言わないで欲しい。余計情けないだけだし。
「えっと、今更座るのも間抜けなんでこのまましゃべります」
「そうですか?」
「はい」
とはいえ何から喋るか。正面から、軽く回れ右して生徒が多い方向に向かって向きなおる。
生徒たちの顔がなんだかんだでこっちを向いている。
「ええと、二週間ぶりくらいですが、蘭堂在人 です。一週間寝込んでる間に背が伸びました。学校行ったら教室入れてもらえなくて、今日まで……うん?」
「どうかしました?」
ん、いえ、生徒指導室に来た奴がいないんですが。あいつクラスメートじゃなかったのか?
「いえ、なんか、その……以上です」
「そう? じゃあ蘭堂君に何か質問がある人ー」
……。
「あの、俺帰ってもいいっすか」
「ホームルーム始めるから少し待ってね」
「はい」
俺は黙って椅子に座った。
どうゆうことだよオィイ!! せめて身長幾つになったとか、それくらい質問あってもいいんじゃ無いのかよ! 静かすぎるだろ!
色々頭の中がぐるぐるして入るけれど、とりあえず黙ってホームルームの佐竹先生の話を聞き流す。
次の登校日は来週の火曜日だそうな。やっと学校来たと思ったら今度は四日連続で休みだよ。その後も三日で全教科返却され、終業式。なんだろうか。そしたらそのまま冬休みだよ。
ここ数日同じ愚痴しか言ってないと思うけど、改めて言うぞ? 俺なんでこんなに学校行けないんだよ。
まあ、四日あるだけいいんだろうか?
話すことあんのかなぁ。
窓の外を見ながらぼけーっとしていると、ふと思い出した。そういえば生徒指導室にいる奴がいなくなってるんだったな。いや、教室の机は全部埋まってるから、いなくなってるわけじゃなくていないんだけど……どういうことなんだろう? 俺が顔を間違って覚えてるとか、まあ、立って見下ろしてるせいで座ってる奴らの顔がイマイチちゃんと見えてないんだとか、可能性が無いわけじゃ無いけど違いそうだよなぁ。
以前も見た顔だからこの学校の奴だってことは間違いない。ネクタイの色と上履きの色から同じ学年なのも確かだ。
じゃあ、何者なのか。俺が生徒指導室にいるっていうのは、一応クラスメートには通達されてたはずだ。学年には別に通達されてなかったはずだけど、ちょっと話題に出せばすぐわかることではあるだろう。でも多少お祭り好きなくらいのクラスメートがわざわざ試験中に教室抜け出して俺に会いに来るんだろうか? 何かしら目的があるとか、関わりがあったと見る方が妥当なんじゃ無いだろうか?
どうなの?
どうでもいいか。
「ええと、そういうわけで試験休みに入りますが、あけて返却期間中に進路相談があります。ちゃんと自分の日程を確認して、あと休み中にちゃんと見直しておくように」
進路相談。そういえばそんなのあったな。今まさに見直してる最中だけど、どうしたものか。
っていうかそれを相談するのか。あ、いやでもあれだ、なんて相談するんだ? 身長が高くなりすぎたので電車通学したくありません。だから高校を変えようと思います……無いな。一週間寝込んでる間に学力がかなり落ちました、だから志望校のランクを落とそうと思います……無いだろ。いや、別に無いわけじゃ無いんだけど、根拠とか微妙なんだよな。実際どれくらい学力落ちたかまだ確かめてないし。
あ、あとあれだ。
ちゃんと確認しないといけない。あんまりスポーツや部活に力を入れてる学校はやばい。この体でスポーツは絶対避けないとまずい。ちょっと全力疾走とかしたらそれだけで靴の底が破れたりするかもしれないし、サッカーとかバスケみたいな接触があるのは危険すぎる。格闘技やったら相手が絶対死ぬ。
……陸上部、高校では続けられないんだなぁ。
まあ、どうしようもなく好きなわけじゃないんだけどさ。
「それから、終業式の日の大掃除の予定なんですが……」
そんなことよりそろそろ空気椅子してるの辛いんだけど、いつになったらホームルーム終わるんでしょうか。
いつも読んでくださってありがとうございます。




