第35話
いつも読んでくださってありがとうございます。
何も考えずに教頭先生の後をついていくこと13歩。ふと疑問に思った。
さっき教頭先生は、ほとんどの教室では先生が待機していた……と、そう言っていたと思う。じゃあさっき俺のいる生徒指導室に来た彼はなんだったんだろうか? てっきり先生がいなくなったから教室を抜け出してこれたのかと思ったんだけど……トイレにいくとか言って抜け出したんだろうか。うーん? いや、どうでもいいか。あ、教室ついた。
「ちょっと待っててね」
「はい」
教頭先生の言葉を受け、教室の前で足を止める。
……教の字が重なったな。
「失礼します佐竹先生、蘭堂君のことなんですが」
教頭は一人で教室に入っていく。俺は置いてけぼり。ささっとドアが開け閉めされたから中の様子も伺えない。どうしよう。なんか寂しいというか、変に不安な感じがする。なんだろうなこれ、なんか覚えがあるんだよな、こういう状況。人が集まってるところに連れてかれて、一緒にいた人が紹介だとかなんとかで先に入ってっちゃうから一人でおいてかれるの。すごく覚えがあるんだけど……あ、テレビドラマとかに出てくる転校生! 今のはちょうど見た目がそんな感じだろうか……? いや、俺今まで転校したこと一度も無いから違うな。物語とかを見てるような感覚でも無いし、もっと明確に記憶にある 感覚だ。
いや、あれか。だったら逆に気にすること無いのか。要するに体験したことがあることだ。だとしたら、この状態に感覚的に対処するのはそう難しいことじゃ無いはず。
「……」
いや、別にそう思っても落ち着いたりしないな。勝った記憶じゃなくて負けた記憶しかないってことか。世知辛い……っと、教頭先生が出てきた。
「いいぞ、入りたまえ」
「はい……これってなんだか転校生みたいですね?」
「ん? そうだな。だが自己紹介はしなくていいぞ」
自己紹介はするつもり無いですけど、身長の説明もしなくていいんでしょうか。
「それはその場の流れでだ」
「はぁ、ええと、それじゃ失礼します」
ちょっと隙間の開いたドアに手をかけ、開く。教壇に立つ先生と、席に着いた生徒たちの視線が一斉に俺を貫いた。い、居心地悪い……けどまぁ、なんだ。することはわかってる。
そう、まずは空席の確認! 俺の席がどこなのかを確認する!
ってそうか。試験着席だもんな。普通に一番奥の列の前から二番目だった。俺の席わかんねーじゃん。
「おはようございます蘭堂君」
「あ、はい、おはようございます」
視線に戸惑っている……ように見えたのだろうか? 間も無くお昼になるというのに佐竹先生はそんな挨拶をくれた。とりあえずそのまま返して空席に向かって足を進める……驚くほど教室が静かで、生徒たちの視線はひたすら俺一人に注がれている。教壇の前を過ぎても呼び止められることもなく、普通に俺は自分の席だろう席にたどり着いた。生徒も先生も、誰も何もしゃべらない。
とりあえず筆記用具しか入ってないスカスカの鞄を机の横にかけ、椅子を引き、黙って座る。
誰も、何も言わない。すごく静かで。
「……前が見えん」
……。
「試験着席だし、端だし、関係無いんじゃ無いか?」
「でも蘭堂、普段の席ど真ん中の一番前だぞ」
「ああ」
「そういえば」
「私その後ろだ」
「あれは確かにヤバイな」
「ああヤバイ」
「マジであれはヤバイ」
「いや、三学期頭に席替えあるだろ。なんとかなるって」
「いや、蘭堂一学期も二学期も合計6回席替えあったのにあそこだったぞ」
「マジで? くじ運すごくね」
「ああ、あれは無いね」
「最悪先生にいえば後ろの方に回してもらえるわよ。メガネかけてるわけじゃ無いし」
「っていうか本当におっきくなってるわね」
「すごいよね」
「くそ、あの身長がもう半年前にあれば!」
「ゼッテーバスケ部にスカウトしたのに!」
「いや、バレー部だろ!」
「くそ! 蘭堂どこの高校行くんだ?」
「あ、俺聞いたことある。西木能だろたしか」
「ひゃっは! 取ったりぃ!」
後ろの席のやつの一言で空気が爆発した。
なんかもうみんな揃ってピーチクパーチク……鳥かなんかか。お前らは。しかも俺本人に一言も声かけねーでやんの。何? もしかして俺嫌われてんの? それとも触れない優しさかなんかなの?
「みんな、一旦静かに」
パンパンと先生が手を叩いて、生徒たちの気を引く。すっと、線でも引いたみたいにみんなが静かになって、視線は正面の先生に向いた。なんとなくホッとする。
「おほん。それではホームルームを始めます……まあそういうわけだから蘭堂君」
「は?」
「説明お願いね」
は?
いや、以前先生にも説明しましたよね。先生が説明してくれてもいいんじゃ無いかと思うんですけど。
俺がやるの?
ちょっと行き詰まり中。です。




