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第34話

「机の足が取れたのか? そんなことが……大丈夫だったかい?」

「あ、はい、いえ、その……」


 机に足を戻そうとしている俺を見た教頭先生は、どうやら俺が机の足をへし折ったとは夢にも思っていないようだった。これはこの先生が鈍いのか、それともさっきのクラスメートが極端だったのか。

 ……さっきのクラスメートが極端な方に一票。とりあえずこの場は適当なことを言ってごまかそう。


「その、しばらく机の下に座ってたんですけど、足がしびれて」

「ほう」

「立ち上がろうとして手を着いたら、なんか取れちゃって」

「ふむふむ。古くなってたのかな」


 ……あ、その言葉結構向こうでも聞いたぞ。便利な言葉だよな『古くなってた』って。でもさ、ねーよ。

 この机の足は中心にネジがあって、それが天板についた土台みたいのに突き刺さっている……そのネジが根元からへし折れているんだ。そして、それが欠片も錆びていない。全くもって錆びていない。天板の土台側も足の真ん中側も、ネジが刺さった部分が若干歪んでひび割れてはいるのだけど、それが中途半端に埋まって金属のはずのネジがへし折れている。そのひび割れから見える木の肌すら白く新しい。明らかに古くなってない。

 っていうか、どういう力がかかったらこの部分がこんな風に折れるんだろう? 普通木の方のネジが壊れて引っこ抜けたりするんじゃ無いのかな。知らんけど。


「まあいい。それでさっきの子は誰だ? カンニングだとは思わないけれど、そういう風に思われるぞ?」


 教頭先生何言ってんのかわかんないっす。


「いえ、なんかクラスメートが様子見に来たみたいです?」

「なんで君がわからないんだ」

「俺が呼んだわけじゃ無いですし。いきなり来て急に帰っちゃって……あ」

「あ?」

「そういえば、いきなりあいつが入ってきたから力が入っちゃったんだよな」


 ふと思いついて、彼のせいにしてみる。いや、あながち間違ってないよな。彼が来なければとりあえず見た目だけは元どおりにしてごまかすことはできたし、そうじゃなくてもゆっくり『巻き戻し』呪文について考えることもできたはずだし。

 うん、壊れたのは俺のせいだけど、壊れたままなのは彼のせいってことで。


「そういうことを言うのは感心しないぞ」

「はぁ、すいません」

「それでなんだが、試験の続きなんだが」

「え、するんですか?」

「いや、まあ、ここまでで採点することになった。ほとんどの教室では先生が待機していたし、このために新しいテストを作り直すのもなかなか大変なんだよ」

「はあ、なるほど」

「つまり今日はこれで終わりだ。で、君さえよければ自分の教室でホームルームを受けてもいいよ」

「は」


 は。


「いやねぇ、まだ試験時間ちょっと余ってるし、それとホームルームの時間を合わせるとそれなりの時間もあるしね」

「あ、えっと」

「もともと終業式より前に一度は教室に戻ってもらおうという話はあったんだけど、タイミングが掴めてなくてねぇ」

「いや、っていうか今更なんですが、そんな大事 おおごとなんですか? 俺のこと」


 素朴な疑問が俺の口を突いて出ると、先生はなんだか呆れたような顔でこちらを見た。


「そりゃまあね、相応にね」

「の割には、正直扱いが雑なような気がするんですけど」

「結局、試験期間中に生徒が落ちつてい試験を受けられれば、という判断でしか無いからね」


 それは最初の時に聞きましたけども。


「そもそも今日のホームルームか、試験返却日の初日かという話でしかなかったわけだし」


 そっちは初耳ですが。っていうか、そういうの本当は俺に相談してくれてよかったんじゃ無いですか? と、言ってももう済んでしまってるからどうしようも無いんだけどさ。いや、どっちみちこれからのことなんだから、今言われてもどうしようもあるんだろうか。過ぎてから言われたわけじゃなきゃいいのか。いいよな。そういうもんだし。

 手遅れでさえなければいいんだ。感情的なとを考えなきゃ。


「で、どっちにするんだい?」

「ええと、じゃあ今日行きます」

「そうか、じゃあちょっと待っててくれ。一緒に行こう」


 先生は俺の答案やら問題を大きな封筒にしまって部屋を出る、今しまうのを待てって言われたのか、この部屋に戻ってくるのを待てって言われたのか。まあ、ぶっちゃけどうでもいい。

 別にその程度の勘違いとかで問題にはならないもんなぁ。学生って気楽だ。向こうだと時々礼儀がなんのとか言われることがあった。他人の規則や動き、意図が解せないと、それだけで認められないこともあった。明らかに無理なことをふっかけられることもあった。勇者だし、それくらいできて当然だってさ。無知言うなよってはなしだ。

 だけど、今はただの中学生だ。

 遅刻することもあるし、先生が何言ってんのかわかわかんなくて聞き返すこともある。

 うっかりテスト期間中の職員室のドアをノックし忘れたことも。

 さっきのクラスメートがきたことをカンニング疑惑がかかったことも。

 だけど、謝れば許してもらえる。

 でも、そんなもんなんだ。


「おーい、いつまでそこにいるんだ? 行くぞ」

「はーい」


 勇者じゃ無いよなぁ。やっぱり。

いつも読んでくださってありがとうございます。

ようやくクラスメートと合流できます。

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