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第31話

いつも読んでくださってありがとうございます。

「それでは試験、開始」


 教頭先生がストップウォッチを片手にそう宣言する。俺は、鉛筆を右手に左手で問題用紙をひっくり返す。

 現在試験3日目。10時50分。試験終了まで残り45分。これが終われば試験休み。その後終業式。

 この三日間、何か俺の学校生活的に進展がありましたか?


 NO!


 未だこの教頭先生の名前もわからないくらいだ。友達とも一度も会ってないし、自分の(?)教室にも一度も入ってないし。当然学校に残っているはずの俺の道具の類も触ってない。

 まあだからといって何ができるわけでもなくて、ひたすらテスト受けるしかすることないんだけど。

 ちなみに初日、試験の前にトイレに行かせてもらって道具に魔法をかけた。あんまり頼るのも良くないなと思うけど、とりあえず試験期間中はそれでごまかすのもしょうがないと思う。うん、高校入る前になんとかするよ。ちなみに引きこもり期間中はテープでぐるぐる巻きのロケット鉛筆を使ってた。あれ思ったより便利だな。まあ一番アレなのは消しゴムなんだけどな。試しに全力で握ったら、砕けるとかじゃなくてキュッとなって使い物にならなくなった。

 っていうか試しに使ったら紙が普通に破れた。

 ペン チョキにもノート パーにも勝てそうな、消しゴム グーの誕生だった。いや、そもそもこの3つは噛み合ってないか。


 ……やめよう。試験に集中しなきゃ。

 このテスト期間最後のテストは社会科。具体的に言うと一部歴史と地理が混じったもっぱら公民。一二年でやった地理と歴史をなぜこのタイミングで復習させるのか。うちの社会科の先生頭がおかしいと思う。ええと……問題作成者は?


 問題作成:佐竹菖蒲 さたけあやめ


 担任かよ。っていうか俺、担任の担当科目くらい覚えてろよ……まあいいけどさ。名前書き終わった。高校受験のために塾で時々やらされるし、歴史も地理も。出席番号よし。っていうか世界史の年表カードと英語の単語カード持ってってたし。問題用紙の数足りてる。向こうに。始めるか。歴史はそこそこ自信があるんだ。歴史は。ええと、『三権分立』。

 うん、地理と公民は自信ない。一億総活躍? じゃないよな。一億の民は泣く? でもない。

 ……まあ、留年とかないし。『基本的人権の尊重』高校受験さえ何とかなればいいし。『普段の努力でこれを、維持』気にすることはない。成績が『法の下に平等』、もしかしたら以前の俺がそれなりに優秀でガクッと落ちたりするかもしれないけど、それは『自由平等社会権』まあテスト前にこんなことがあったとか『公共の福祉』、生徒指導室で受けさせられた『個人の尊重』とか、試験の間中教頭先生に睨まれて『独裁、自由、表現し、た』とか色々言えると思う。

 ええと、『何人も公共の福祉に反しない限り、居住、移転、職業選択の自由を有する』。

 そして『財産権はこれを犯してはならない』。

 財産権の不可侵はあれだ。自由権だ。よし思ったより解けてる気がする。次は地理だな。

 えーっと、地理の問題はっと……うん、歴史に行こう。

 これで70点はかたい。下の方に。

 これが50点台に落ちるかどうかは歴史次第かな。

 ……え、平安時代? ええと、平安京が作られたのは794年て先に書いてあるぞ? 誰がやったか? 誰が……誰だったっけか? 天皇。何ちゃら天皇。それは間違いない。間違いないけど? とりあえず先に進もう。坂上田村麻呂が征夷大将軍に任じられたのは797年かな。だろうか? ナクナトイッテエミシハゲマシ……あれ任じられたんじゃなくて蝦夷討伐した年か? いいや、任じられた年わかんないし。

 あ、一個一個短い。次は奈良時代のコン田永年私財法743年……『コン』? 耕す? こん? あれはコウだよな、耕作機とか。しかも年台が前後して……あ、平安時代にこの土地は荘園になった、とね。こっちは字がわかる。っていうか奈良時代じゃなくて普通に平安時代だったし。

 ええと、上皇が統治する院政政治に、平治の乱。ハクシニモドソウケンズイシ。違った。遣唐使だ、それと国風文化。この辺は何とかなるな。

 それと、ん。ふっ。これはわかる。っていうか解らなかったら日本人じゃない。

 1192年、源頼朝が征夷大将軍になり鎌倉幕府を開いた。


「くふっ、イイクニツクロウカマクラバクフってね」


 思わず口をついて……ってうん? なんか今変な感触が……口に出すのは怖いんだけど、そう。

 この三日、毎朝魔法を使うたびに味わっている感触。


 魔力が体から抜けていく感触。



〝〝〝〝どっっっっぱああぁぁぁあああああああんん!!!!!!!!!〟〟〟〟



「な、何事だ!?」


 教頭先生が慌てて窓に駆け寄ると、次の瞬間窓の外を大量の水が滝のように流れ落ちていった。目を白黒させて、俺の顔と窓の外を何度も見比べてる。安心してください。俺も見ました。ちなみに当然だけど空はピーカン晴れ。冬らしい透明な青空が広がっている。あれは多分屋上のプールの水だろう。

 っていうかさ、うん。

 やべぇ、思いっきりやらかした。

遅刻して申し訳ありません。

バクフの呪文の詳細はまた次回。

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