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第29話

いつも読んでくださってありがとうございます。

とうとう100ポイント突破! すごく嬉しいです。

「ほら君たち、早く教室に行きなさい」


 教頭先生がかけた声に応じて、生徒たちは三三五五に散っていく……俺の顔をじろじろと見ながら。

 まあ、そうして顔を見た反応はいろいろだ。しきりに首をかしげている奴もいるし、首をかしげて考えるような顔をする奴もいる。あるいはびっくりした顔をしてから軽く目をこすって、それから首をかしげる奴もいる。

 ようするにどいつもこいつも首をかしげてるわけだ。一、二年の連中は自分が何を見たのかよくわかってなくて、三年はわかったうえで……というかわかったからこそか。傾げる理由は多々あれど、本質的によくわかっていないからってことに違いは無い。

 何をわかってないのかって? なんでもかんでも ・・・・・・・・

 深く考えたら負け。

 だいたいこっちの顔を見ようとする奴がいれば、そのうち何人かは目が合う。顔を見れば、なんとなく知ってる気がする奴も結構いる。だけど怪訝な顔をしない奴はいないし、俺の顔を見て挨拶する奴もいない。社交辞令としての挨拶すら無い。完全に異物扱いだ。


「あ、教頭先生、下駄箱で靴を……」

「……ふん」


 うお、無言でじろりと睨まれた。怖い。俺と同じように教頭先生が怖いんだろうか、俺が下駄箱に近づくと他の生徒は散っていく。ええと、あれ? ミューズの絶海だっけ、『見ろ、人がチリのようだー』とか言う奴。いろいろ違う気がするけどそんな感じ。

 っと、俺の下駄箱これか。ふふん、生徒手帳に出席番号書いてあるんでな。これはわかるぜ。えっと、古い靴は……ちっさッ! うわー……小っちゃいなあ前の靴。とりあえずこっちは回収。家に帰ってから捨てるとして、外履きを入れる。で、鞄からだした新しい靴を履けばオッケーだ……問題は教室の机だが。でも試験期間中は出席番号順だし何とかなるよね。


「……」

「か、身体がでかくなったから靴も小さくなったんです」

「なにも言ってないだろう。行くぞ」

「あ、はい。職員室……職員室?」


 うん、さっき職員室って言ってたけど……おかしいな。試験期間中は職員室まずいんじゃないだろうか?


「あの、先生、試験期間中は職員室まずいんじゃ無いですか?」

「ああ。手前の生徒指導室にで済ます」

「わかりました」

「……」

「……」


 あれ、先生動かないぞ。


「……」

「……」

「あの……先生?」


 動かないな。


「先生?」

「君、うちの生徒なら生徒指導室どこにあるか分かるだろう?」


 そういうことか……まずいな、自分の教室だって怪しいのに生徒指導室なんて場所分かるかな? というかさ、生徒指導室って行ったことあったっけ。どっちかっていうと品行方正な生徒だったと思うんだけど、俺。


「先に行けってことですね」

「問題があるかい?」

「……えーと、背が伸びた拍子に寝込んだんで記憶がちょっと……」

「あぁ!?」

「二階でしたよね!!」


 えーい。何やってんだ俺は。幾ら何でもそれは言い訳にしか聞こえないだろ。

 ちゃんと思い出せ、今朝回収した生徒手帳でいろいろ予習したろ。あの中にはちゃんと校内の地図もあったはずだ。二階の……中央階段上がって、上がって右側の方にえー、左側の方に小さい教室の群れがあって、右側の方に大きな部屋があるのが基本的な校舎の構造だ。で、生徒指導室は職員室の手前。教室から見て手前ってことは階段の左側かもしれないけど、それでも一目見ればわかるはずだろ。落ち着け俺。ここで教頭先生が見てるのは俺が怪しい態度をとらないかどうかってことのはずだ。

 行け、行けるはずだ。


「えっと、こっちですよね」

「ふん」


 くそう、こんなことなら魔王探知呪文なんかじゃなくて目的地をたどる呪文を作ればよかった。いや、作ればよかったっていうか、そんな風に高度な呪文を作れなかったんだけどな。

 ええと、階段登った。右と左、わかる。見える。右だ。職員室のすぐ隣の部屋だ。

 そういえば視力とか良くなってるんだっけ。

 っていうかなんか職員室内で動いてる人間の気配がわかる。見えるものを感知する必要がなかったから今まで気づいてなかったけど、見える以上にわかる。人がどこにいるのかがわかる。正直ちょっと、気持ち悪いくらいに。そういえばあのペットショップの時もそんな感じあったっけ。

 あ、先生が出てきた。


「あれ、教頭先生どうしたんですか? その子は?」

「蘭堂くんらしいですよ」

「はぁ……ああ、今朝何か電話がありましたね」


 ええと、男の先生。若いけど、教頭先生よりは態度が柔らかい。

 なんだっけ。すごい見覚えあるけど、小学校の時とは違って担任以外の先生に授業受ける機会が多いからなぁ。学年担当の先生の一人ってだけのような気もする。

 名前もさっぱり思い出せないし。


「蘭堂、蘭堂在人くん? 3300クラスの?」

「あ、はい。出席番号3325です」

「ふむふむ。ちょっと待ってね、担任の佐竹先生呼ぶから。教頭先生」

「ああ、君はそこの部屋に入ってなさい」

「はい」


 担任の先生は佐竹先生……ってそれは生徒手帳にメモってあったんだよな。っていうかかなりたくさん人の名前メモってあったんだけど、もっぱら立場と結びついてるものだったから顔とかとは全然ピンとこないんだよな。そもそも俺人の名前覚えるの苦手だったんだろうか。

 どうせなら教頭先生と今の先生の名前知りたかったな。

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