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第24話

いつも読んでくださってありがとうございます。

読んでくれてる人がいるのがとても嬉しいです。

「嘘だろ……」


 深夜1時。明日から学校だというのに、父さんのパソコンが置いてある机に突っ伏したままなかなか起き上がる気力が湧かないのは、当然明日から学校に通うことがゆうつだから……じゃない。いや、それもあるけどそれだけじゃなくてもっと物理的な……いや、物理的な? 頭が重い理由は物理的なものだし、物理的に頭が重たいのは確かだろうけど、これはどっちなんだろう。というか全身重いのに、頭が特別物理的に重いことってあるのかな。例がないからわからない。でも感覚的にはあるかもな、って気がする。


 暫定体積110リットル……それが俺の体格だ。


 普通の比重で考えても110キロ体重があるわけで、それだって大概なのに現実は360キロオーバー。もう何が何だかわからない。

 ちなみにインターネットで調べたところ、平均的な相撲取りの体格が180センチ強の身長に、150キロ前後の体重だとか。体型だけなら相撲取り一歩手前。あるいはソップ型力士。体重はその倍以上あるけどな! 平均的な人間の比重が1、脂肪の比重が0.9、筋肉の比重はせいぜい1.1、骨の比重が2。全身まるごと骨でもせいぜい220キロ。俺の体重はその1.5倍以上。試しに調べたダイヤモンドの比重は3.6だとかなんとか。途中でキーボード壊れたからいろんなサイトを確認したわけじゃないし、体積も体重も確定じゃないからあれだけど、多分世界一硬いと言われるダイヤモンドより中身がぎっしり詰まってます。

 知りたくなかった。

 風呂に入るたびに体が何となく重かったのも、最近椅子やベッドがやたらとギシギシいうのも、っていうか椅子がハンドルいじってないのにいきなり縮んだのも全部そのせいか。いや、どうせ身長に合わせて低くするつもりだったけども。


「そういえば小学校の時はぁ……身長に合わせて交換してもらえてたっけぇ……」


 地を這うようなうめき声が出る。なんてったって俺には縁がなかったからな! 身長低かったからさ!

 ……いまならでかいのがもらえそうなものだけど、でもそもそも中学校のはそんなサイズ違うのとかなかったような気がするし、それにあと二〜三ヶ月で卒業なんだよな……卒業アルバムの写真てもう撮ったんだっけ。よく覚えてないけども、どうせならこうなる前に済ませてあったらいなぁ。これから写真を撮る機会なんてもうそれくらいしかないだろうし、嫌だぞ? 1枚だけ俺の代わりに筋肉おばけが写ってる卒業アルバムなんて。

 そんなことになったら、きっとみんなに忘れられる。それかもしくは変な覚え方されて、


『蘭堂? ああ、いたよね。なんか筋肉になってたやつ……?』


 とか。そんな風に言われるんだ。いや、それだけじゃない。きっともともと俺のことを知らなかったような連中も、みんなで俺のことを筋肉のやつとか、アルバムで筋肉になってたやつとかそんな風に俺のことを話すんだ。

 嫌だ。

 すっごい嫌だ。

 見た目だけでこれなのに、この体重の……というか比重のことがバレたらどんなことになるだろう。


 この一週間、眠るたびに夢を見た。


 体が元どおりになって、何事もなかったように学校に行く夢。

 そうなったと思ってるのは俺だけで、みんながヒソヒソ陰口を言っている夢。

 元の体に戻ったと思ったのに、学校で体が膨らんでしまう夢。

 今以上に体が膨らんで家から一歩も出られなくなった夢。

 夢は自分のことでもあったし、同時に誰かのことでもあった。自分自身の目だけじゃなくて、少し上から見下ろすようにも見ていた。

 自分のことのように喜んでいたこともある。他人のことのように羨んだこともある。自分じゃないように感じてホッとしたこともあれば、身に受ける未来のように思えて悲鳴をあげたこともある。


 でも今日は、眠れる気がしない。


 中身が空っぽでも怖くて仕方なかったのに、それにダイアモンド並みにぎっしり詰まってるなんて、いっそどこから怖がっていいのかもわからない。

 自分で自分が怖いなんてバカなことは言わない。怖いのはいつだって人だ。人の目が、自分を見る人の目が怖い。自分を知らない人間なんてどうでもいい。変わった俺を、人がどう思うのかが怖い。母さんや父さんがあんなにも普通にしてくれているのに、当たり前のようにしていてくれるのに。

 ……いや、だからこそか。

 鏡を見てるはずなのに、全く別なものが映っているみたいな感覚。

 二人はきっと、あえて普通に接してくれているんだろう。母さんはきっと、俺の体重のことをわかってた。自転車も、走るのも、エスカレーターもエレベーターも、全部そういうことだったんだろう。一人で二人分くらいって言ってた意味だけはちょっとよくわからないけど、子供があんなに乗ってたのに、俺がたとえ二人分あったって関係ないことくらいわかってるはずだ。

 わかってたはずだ。

 わかってる。

 俺もわかってる。

 怖いって言ってるだけじゃ何もならない。恐怖を乗り越えなきゃいけない。

 そして恐怖に勝つには、正面から向かい合うしかない。

 っていうか、恐怖に勝つ手段なんてない。

 恐怖ってのは、受け入れるもんだ。怖いものは怖い。恐ろしいものは恐ろしい。それはそれで諦める。諦めて受け入れる。受け入れて、耐える。それは勝つなんて口が裂けてもいえないような無様を晒しても、前に進むということ。鼠が口から入ってこようが、ドラゴンに丸呑みにされようが、空の彼方に吹き飛ばされようが、海の底に沈められようが、戦うことをあきらめないこと。

 こうやって机に突っ伏してくだをまいても、夢が恐ろしてくて飛び起きても、眠れないかもしれないと怯えていても、とりあえず何かをすること。立ち上がること。


 この場合は、机の跡がついて真っ平らになってるだろう額Gあ、スリープモードのディスプレイに映るように顔を上げること。


 ……平らになってるよね? こんなところに筋肉ないもんね?

最後の集合写真で、一人別窓になる恐怖……しかも学年全体で唯一の!

こう言えば彼の恐怖がわかっていただけるでしょうか。

どうでもいいことですが、私は集合写真の最中にくしゃみが出て白目をむいてしまったことがあります。

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