表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
21/46

第21話

いつも読んでくださってありがとうございます。

 逃げなきゃいけない。

 戦いさえすれば全てが解決するわけじゃ無いってことは、一応分かってるつもりだ。

 っていうか、母さんを守らなきゃいけないっていう一番大事なことと逃げることは目的として合致してる。

 ……現状はどちらかといえば、母さんに守られているような気がするけど、逃げるっていうのはどういうわけかいつだってそういうことだ。

 喧騒が遠ざかるのを聞くと、なんというか、まさに逃げているって感じがする。

 でも、どこまで逃げればいいんだろう。

 母さんに背中を押されるままにどたどたと階段を降りる。


 っていうか、俺今かけらも母さんを守れてない気がする。すごく不本意だけど、これ立ち位置としては母さんを縦にしてるよね、むしろ。


「か、母さん、先に」

「あっちゃんが転んだら母さん潰れちゃうわよ」


 その考えはなかった。

 人間二人分だからだいたい120キロくらいか。向こうにいた時よりはずいぶん軽いけど、それでも確かに母さんだとぺちゃんこにしちゃいそうだ……え、もしかして向こうで崖とか登る時にみんなが我先に登ろうとしてたのってそういうこと? 確かに最後の方は体重4〜500キロ、向こうで言うと150ディコン前後あったけど、ちゃんと高いところを移動する時は軽量化の魔法をかけてたから大丈夫だったのに。吊り橋踏み抜いたこともなかっただろ? ……って今言ってもしょうがないな。空を飛ぶ魔法はひどく疲れるからあんまり使わなかったし、単なる軽量化の魔法は外から見てわから無かったのだろう。

 それにしても魔法か。

 魔法でこの体を元どおりに戻せたら動物達に怯えられなかったのか? それは違うか。それに、体型を変えるのは治癒魔法の応用に当たるから消耗が激しくて厳しい。だけど、魔法さえ使えれば少なくとも逃げる必要はなかった。『瀑布魔法バクフ』の一撃があれば、あの状況を文字通り洗い流すことができかもしれないし、『挑発魔法ビスマルク』を使えば俺に集中させて腕力で対処する手もある。

 もちろんそれで状況がさらに悪化する可能性もあるけど、状況に対応出来る手札が多ければその後にも展開があるわけで。力なんてのは普通、無いよりはあった方がずっといいはずだ。


「いや、なんかなぁ」

「どうかしたのあっちゃん」

「ううん、どこまで降りるの?」

「……ああ、もういいかもしれないわね」


 5階まで降りてきたところで足を止める。上の様子はもううかがい知れないけれど、俺たちとは逆に何人かの警備員らしき人たちが駆け上がっていき、外からは消防車のサイレンのようなものが聞こえる。

 なんだかなぁ……まさかこっちの世界に戻ってきて、弱くなったことに不安を覚える羽目になるとは思わなかったな。ついさっき強くなりすぎてることに困らなきゃいけないと自覚したばかりだっていうのに。っていうか強ければいいのか弱ければいいのか、どっちなんだろう。今の俺は強いのか、弱いのか。


「あっちゃん、そこの椅子に座りましょうか」

「うん」

「……ねえあっちゃん、一週間ずっと家にいたわよね」

「それが?」

「毎朝何時くらいに起きてた?」


 何の質問だろう? 毎朝一緒に朝ごはん食べてたんだから、普通に朝6時半くらいに起きてたはずだけど。そんなこと母さんだってわかってるはずだ。


「……6時半くらい」

「そうよね。母さん、少し前までは毎朝聞いてたのよ」

「何を?」

「スズメの囀り。毎朝日が出る少し前から始まるの」

「それが?」

「今、日が出るのは6時半すぎよ」


 ああ、そうか。

 ちゃんとさっきのことを覚えてたのか。


『ごめんなさい、ここまでだとは思ってなかったの』

『どういうこと? 何を知ってるの?』


 そうだったな。そういうことか。

 俺の体重のことも、動物に避けられていることも、全部母さんはちゃんとわかってたんだ。俺が引きこもってる間に、俺のことを俺以上に全部わかってたんだ。

 向こうにいた時は、鳥のさえずりもあったけど、それ以上にどこからともなく聞こえる嘶き鳥のけたたましい声に意識を取られていた。こっちに帰ってきて最初の二日は朝に目覚めることもできなかったし、三日目はまさに嘶き鳥の声が無いことに驚くばかりで、雀の囀りなんて気にもしなかった。学校に行ったら、ニワトリでも見てまた違ったことを考えたんだろうか。

 これは、何だろう。すべきことを俺は見失ってたってことなんだろうか。あんまり深く考えたく無い。

 もっと楽に生きたい。

 そう思うのは悪いことなんだろうか。


「ねえあっちゃん、いい言葉があるわ。とある映画の受け売りなんだけどね」


 ふと背中に重みがかかって、俺の目が閉ざされる。母さんが手を回して目隠しをしたんだろう。

 これは、ちょっとだけ甘えてもいいって合図だ。


「本当はね。叔父さんでもいればいいんだけど、母さんも父さんも一人っ子だから」


 あ、何言われるのかわかった気がする。


「大きな力を持ってるってことは、それに伴う大きな責任を全うする気持ちを持たなきゃいけないってことよ」


 うん。

 うん。

 俺は、この力を持って、責任を……

かの有名な『ス/パ/イ/ダ/ー/マ/ン』の『ベ/ン/叔/父/さ/ん』の台詞ですね。

『大いなる力には、大いなる責任が伴う(With great power comes great responsibility.)』

現在非公開の別作品でも言及した台詞ですが、いろいろ考えさせられて好きな台詞です。

この台詞が引き出せて第1章完なのですよ。

まあ、行き当たりばったりなのでこの後の展開は怪しいですが。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ