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第12話

いつも読んでくださってありがとうございます。

 やばい、この声は母さんだ。母さんが帰ってきた。

 とりあえず服……が、着られ無いんだってば! ええと、とりあえず、とりあえずどうすれば良いのかな、ちょっとあれな本とかだったら隠すだけで良いんだけど、この場合は……いや、この場合も隠せば良いのは変わらないんだ。問題はどう隠せば良いかで、バキャ……バキャ? バキャってなんだ? まさか筋肉の力に負けて骨が折れたとか!? もう寝るだけで怪我が治ったりもしないし、そんなんなったら今後の為にも病院いかないとヤバい、ごまかしようがないぞ!?

 ……いや、別にどこも痛くないな。


「あ、タンスの底が抜けただけか……良か」


 良くねえ! 服はぼとぼと落ちてるし、底板がまっぷたつになってるから物理的にタンスを閉められない! いや、そもそもそういう問題じゃない! タンス壊したって普通に大事だし!


「あっちゃん、起きてるのー?」

「あ、あ、え、っと、お、起きてる! 起きてるからちょっと待って!」


 タンスに驚いてる間に階段を昇って来る音聞き逃した! え、これはもう部屋の前まで来てるってこと? なにこれどうすんの、ってかどうすりゃ良いの! あ、だめだこれもうまず頭の中を整理しないと……いや、そんな時間ないってば! 優先順位! 優先順位来い! じゃ無くて優先順位決めないと! 来いってなんだ来いって、決めるの俺だよ!


「待つって何を? あっちゃん着るもの無いでしょ」

「無いけどそういう問題じゃないじゃん! だから待ってほしいんだ……って……え?」

「とりあえず入るわよー」


 ドアが開いて母さんが何事も無かったように入ってくる。いや、部屋に入ってくるのが何事も無かったようなのは、別に良いのか、良いんだよな。

 でも問題は、そのまま平然としてることだ。明らかに俺今変だよ、変だよな? なんで?


「あれ、あっちゃんちょっと縮んだ?」


 ちぢん……!? なに言ってるの母さん! これはあれ、新手の魔法攻撃でもくらってるの!? 実は俺のこの状態は俺にしか見えない幻覚!? 心の中だけだけどさっきから叫び過ぎでいい加減頭の中が限界値を突破しそうだよ!? キャラクターが壊れそうだよ!? っていうか俺はさっきから誰に何を訴えてるの!


「あ、その様子だとちゃんと時計見てないわね? 今日は日曜日よ?」

「にちようび……日曜日? え、俺もしかして」

「昨日一日ぜんぜん目を覚まさなかったからね。心配したわよ。近所のお医者さんに来てもらったけど、別に身体自体は健康だって言われちゃったし。あ、そだ、あんた制服どうしたの? どこにも無かったけど」


 え、いやちょっと待って、もう頭パンクしそうだから。っていうか爆発しそうだから。このままいくと周囲に被害が出るから。

 今日はもう日曜日で、金曜日の夜と土曜日丸一日と日曜日の朝の全部を俺が寝過ごしたってこと、だよね。で、もしかしなくてもその間中俺の身体は膨れ上がり続けてたってことかな? そのうえで、膨らみすぎたのにご飯食べなかったからちょっと縮んだとかってことか。いや、でもマラソン好きの友人に言わせると確か筋肉とか脂肪が運動中に燃焼すると激痛が走るとかなんとか。その状態で寝てたのか? 自分自身の得体の知れなさみたいのがひしひしと伸し掛ってきて冷や汗が出る。


「あっちゃん?」

「あ、いや、えっと……今日日曜日なんだね」

「うん。そのかっこのままだと風邪引いちゃうわね。お母さん服買ってきたから、あわせて見てくれる?」


 そして壊れたタンスの前で腰にタオル巻いただけのゴリマッチョに何事も無いかのように接する母の優しさに涙が出そうだよ。とりあえず言われるままにというか、母が差し出す紙袋を受け取ってみる。

 パンツがたくさん入ってた。


「!?」

「ああ、サイズがちゃんとわからなかったから、とりあえず多めに買ってあるのよ?」


 慌てて中をのぞくと大量のパンツの下にかなりサイズが大きいジャージみたいなものが入ってる。こちらも2サイズあるようだ。


「朝ご飯は食べたの?」

「あ、え」

「じゃあそれ着たら降りてきてね。あっためておくから」

「う、うん」


 ところで中に着るシャツは……入ってなさそうなんですけど、あ、母さん行っちゃった。裸ジャージ? いや、あれは履いてない場合だよな……まぁ、前閉じてりゃ良いし、良いんだけど。そういえば制服のこと聞かれたよな? 言い訳どうしよう。あ、このサイズのパンツなら履けるな。トランクスか……出来ればブリーフかボクサーが……それは今度お願いしよう。多分これ、だいたいサイズあわせる為ってだけでまた買い物に行くんだろうし……

 ぐーるるるるる……ぎゅうぅうううううう……


「……早く服を着て下に行こう」


 空腹に耐えられない……制服のこととかは、とりあえずご飯を食べてから考えれば良いよね。いや、食べてからだと遅いから食べながらか。まぁ何でも良いけど、優先順位だ。

 服を着る。ご飯を食べる。この2つを最初に持ってくるのは間違ってない。


「あと暇があったらタオル返してこよっと」

この状況! 我々は既に! 何らかのスタンド攻撃を受けている可能性があるッ!

とかなんとか。あるある。よくある。

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