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第11話

いつも読んでくださってありがとうございます。

 なんでだ……! なんでこんなことになった!? 頭を抱えて目を逸らしたくなるのをこらえて、頭の天辺からつま先まで視線を5回は往復させる。

 顔つきは……多分あんまりかわってない。と思うけど、それって逆に怖いじゃないか? 自分の身体がムキムキの185センチってだけで既に嫌すぎて客観視出来てないけど、多分俺の顔がこの顔のせいで余計に不気味になってると思う。もっと大人っぽい顔ならともかく。

 後服も悪い。普通のTシャツに普通の短パンだけどムキムキのせいでパツンパツン。すっごく気持ち悪い。っていうか苦しい。ちょっと面白半分にマッチョっぽいポーズをとってみる。チェストサイドだっけ? 横向きのポーズだからサイドは間違いないと思うんだけ……ビリ! おおシャツが裂けた。この身体、幻覚とか見せかけじゃないってことか。


「そういえば……」


 そっとズボンを引っ張っ……ゴムがちぎれた。この分じゃパンツもそうなるだろうけど、とりあえず確認したいのでそー……っと引っ張ってみる。

 ぶつり。ぼろん。

 うん。まあそんな感じだよね。とりあえず換えのをとっとと調達してこよう。あと服……は親父の借りて何とかなるかなぁ。しかしあんまり生えてないな。元々薄い方だったけど、身体がでかくなってるのに生えないってのはなんか男性ホルモンとかそういうのがあんまり足りてないのか? っていうか結局なんで俺の身体こうなってるんだ。

 えーい……集中……はしなくても良いからちょっと頭を回すぞ。原因究明と、現状打破どっちから始めればいい? 服を着るのは現状打破にはいるのか?


「……へくちっ」


 ……。


「とりあえず現状打破なのかなんなのかは知らないけど服は着よう」


 とりあえずのろのろと部屋に戻ってタンスを探ってみる。家の中とはいえ裸で歩き回るのはなんだか結構恥ずかしいから、タオルは腰に巻いたけど……ちゃんと着られる下着見つかるんだろうか。割と本気で不安なんだけど。いや、まあ腰のゴムがちぎれたってそのまま履けるんだけどな……で切ればちゃんと、普通の着心地の下着が履きたい……無理かなぁ。もとから制服を買いに行くつもりだったし、その辺も後で買う……前に今着る服が必要だってば。

 やっぱり特にサイズ大きめの服とかは無いなぁ。ため息をつきながら、一度ひっくり返したタンスの引き出しにギュウギュウと服を押し込んで行く。こうなったらやっぱり父さんの部屋に行ってみるか。下着は……苦しいけどこのままで誤魔化すしか無い……かな。っていうか、これだとあれだ。ちゃんと制服もって帰って来れても、多分着れなかったんだろうなぁ。魔法があればサイズ調整とか出来ただろうけど。

 魔法……魔法……こんなん、どう考えても魔法の範疇だよな。逆に、魔法が使えたらどうにかなるかもしれない。でも、今の俺が魔法を使えるはずが無い。


『お前が特別な力を持ってるのは俺と契約してるからだ』

『俺を手放せば契約も解約される。つまり普通の人間に戻れるんだ』


 たくさんあった特別な力は、全部向こうにおいてきた。だから俺はっ……


「俺は、普通に」


 あのときとは違う。逃げてきたわけじゃない。ちゃんと終わらせて、ちゃんと帰ってきたんだ。俺は普通に戻っていいんだ。もうなにも無い。普通に受験して、普通に高校行って、また陸上部に入って。もしかしたら普通に恋をして。叶わないとわかってたり、思いが募る程苦しくなったりしない、普通の恋をして。また普通に受験して。普通に大学に行って。


『特別な力』


『契約』


『解約』


『普通の人間』


 特別な力? ふとサーシスの言葉が思い出される。

 俺の見た目を保っていたのも、俺を向こうで通じるくらい……ドラゴンとやり合えるくらいに成長させたのも、同じスキルのうりょくだ。

 成長率固定。どんなに鍛えても、今と同じペースで能力が上がる。

 極端に言えば、全力疾走したとき秒速5メートルの人と、10メートルの人では1M/秒速くなるのに必要な努力が違うわけだけど……秒速5メートルで成長率固定されると、それと同じペースで速くなり続けると言うか。あるいはスライム5匹倒してレベルが上がるなら、100匹倒すと20レベル上がると言うような。

 こんなのスキルに鍛えられたから、当然普通の人間に戻れば普通になると思ってた。

 でもさ、でもだよ? もしこの成長率を固定するスキルが無かったとして……姿形がかわってなかったら元に戻ったとき元通りになるって言うのは間違ってたのかもしれない。あくまであのスキルの機能は外見を固定することと成長率を固定することであって、元の肉体を保存することじゃない。最後の頃は皮膚とかがっちがちで仲間にも、『お前、金剛石かなんかでできてんの?』とか聞かれたし。

 つまり。

 向こうでドラゴン殴り倒したりできるくらいに鍛えたこの身体が、外見を固定するスキルを失ってそれでも元のままってのは……むしが良すぎる話だったのかもしれない。

 つまりつまり。

 現在のこの化け物じみた身体は普通に健康体と言うか、なんの影響も受けてないスタンダードな状態と言うか。これで正常と言いますか。其れこそ魔法でも使わない限りどうしようもないといいますか。

 いやでもこの見た目だと何をするのにもふつご


「ただいまー」

「わひゃぁ!?」

イメージ的にはあれですね。ビスケット・オリバが気を抜いたらブラックペンタゴンは彼の筋肉で潰れる……的なあれ。

気を抜いたら肉体が正常な状態に戻ろうとして急成長しました。的な。

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