第10話
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一夜明けて。気がついたら晩ご飯食べ損ねてました。
目が覚めたら枕元にメモがあって、それによるとあの後また寝てしまった俺は何があっても起きなかったらしい。流石に、母さんも頭から水をかけたりとかには挑戦しなかったらしいし。起きた直後は『最後に寝たのたったの三日前なのになんでこんなに眠いんだ……?』とか思ってたけど、スキル無くなってるから一日8時間くらい寝るのが当たり前なんだよな。むしろ家に帰るまでや風呂で寝落ちして行き倒れ無かっただけ上等だったんだろう。
で、メモの続きによると朝ご飯は……昨日の晩ご飯に作ったオムライスが冷蔵庫に入ってるからチンしてください……チン? 冷蔵庫は、わかる。食料を保存する技術は向こうでも色々研究されてたし、俺自身必要にかられて作ったこともあった。だけど……チン? チンてなんだ。動作か? してくださいってことは、動詞なのか?
「台所いってみればわかるか」
『チン』と言うのがなんなのかわからなくても、とにかく温めれば良いのだろう。探せば使い方がわかるものなんていくらでもあるし、そうでなくても熱操作魔法でも使えば問題な……ああ、呪文なんだっけ? イザクニマトメル? それとも交換条約だったっけ。呪文忘れたら意味が無いような気もするけど、毎回こうやって頭ひねって思い出してるんだから、意味があると言えばあるんだよな。えーと……
「……」
いや、よく考えたら魔法使えないんだった。もう俺普通の人間なんだしな……うーん、温度調節の魔法は惜しかったなぁ。夏は涼しく冬は暖かく過ごせたのに……まぁその利便性のせいで溶岩に飛び込まされたり、氷山浮かぶ海を泳がされたりもしたけど。ちなみに呪文は南北朝統一だったはず。南北ってのが気温の変化……つまり熱操作のイメージに一番近かったんだ。確か。実際は南北って皇室のことだった気がするけど。
うーん、しかし流石に10年もあると色々向こうの習慣が頭に根付いてるな。もしかしたら、よけいなことは出来るだけ考えないでいた方が良いかもしれない。自分で出来る! とか思うとろくなことにならない気がする。とりあえずいい加減朝御飯を食べに台所に行こう。
「……あれ?」
あくびをかみ殺しながら身体を起こし、スリッパをつっかけようとして……足が入らない。おかしいと思って踏んづけてハネの位置を確認しようとするも……なんかちっちゃい。おかしいなと首をひねったところで、違和感がそれだけじゃないと気付いた。なんとなくあちこち突っ張るような感覚がある。妙に視線が高い。微妙に身体のあっちこっちに疼痛がある。
「これはもしや……成長痛?」
見下ろせば確かに足が大きくなってる(ようなきがする)し、寝る前……というか風呂上がりに来てたシャツと短パンがパンパンになってる。これはもしやあれか。向こうではスキルのせいで成長出来ないから諦めてたけど、精神的な成長が肉体に同期して成長を促した云々とかって感じで、寝てる間に一気に身長が伸びたのか!? 鏡、鏡はどこだ! 俺はどれくらい伸びたんだ? そりゃ、まだまだ成長期はあるけど、今からだって伸びるにこしたことは無い。165、いや、夢の170台に届いたのか!? どうなんだ!?
慌てて机の上のペンと辞書を引っ掴み、部屋の隅にあるクローゼットの縦枠に背中をつける。顎を引き、背筋をまっすぐ伸ばして頭の上に辞書を置く。
いやぁ、父さんも170弱で母さんも155くらいだから、この辺で伸びしろ頭打ちなんじゃないかと思ってたんだよな。15歳現在の肉体的資質を維持するってスキルも、外見不変の副作用付きだったし……いや、逆浦島回避の為の『不老』スキルのおまけが成長率固定だったのかな?
「よし、ここ」
まあどうでも良いや、線は引けたし後はそれをメジャーではかるだ……おかしいな、線の位置が目の高さより低いぞ? いくらうきうきしてるからって自分で気付かないうちに背伸びとか……してないな、かかと地面についてるし。
……じゃあこの線なんだよ? 身長をここではかるようになったのは……母さんの背を抜いてからだ。前はリビングの大黒柱で計ってた。身長を気にしてるのが母さんに生暖かい目で見られるのがいたたまれなくて、それで……そういえばこの線、前後に細かくたくさん線があるな。いやでもちょっと身長が伸びたって、そうそう目線より下に来るはずが……
ゴクリ
つばを飲む音が耳に響く。まさか、だよな? そっと目線をあげると、目線より目測20センチくらい上に真新しい線が一本、ある。額に辞書をのせてみるとだいたい同じ場所だ。まさか、だろ? 深呼吸。そっとクローゼットの中のハンガーに吊るしてある、5センチごとにしかメモリの入ってない安っぽいメジャーテープを取り出して、目の前の線にあわせる。
「ひゃく……はちじゅう、ご?」
おーばー。190は無い。ちなみに、俺が最後に向こうで身長を測ったときは0.9ハード……つまり162センチ。運動部所属にも関わらず、平均より低い身長にずっと悩まされてきたし、向こうでもリーチが足りないと言われ、筋力まかせででかい武器を振り回すスタイルが得意だった。だったはず。だったはずなんだけど。
身長が、185オーバー。改めて見下ろすと、手も足もパーツ一個一個が妙にでかくてごつい。もつれそうになる足を必死に動かして、洗面所に飛び込む。鏡、鏡!
「……こんなん、化け物じゃねえか」
「ゴンさん……お前だったのか」
まぁもとが15歳162センチあったので、大分違いますが。
せいぜい187センチであそこまで筋肉パツンパツンじゃないですしね。




