↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
4/8

4 思い知らせてやる

⌘

ルシエル王太子殿下の執務室。


「殿下、ここと、ここに、ご署名を」

「ああ、わかった」


「殿下、これから宰相閣下との昼食会議があります。議題は来年度の昇格人事について。資料はこちらに。殿下!聞いておられますか」


「えっ、ああ、聞いている」


「お昼のご予定は?」


「え?ウィンディと昼食だろう?」


「違います!宰相閣下との昼食会議です、しっかりなさってください」


「ああ、ウィンディの髪は切っても、しっかりとまっすぐなのだな」

「はい?」


「っくっく」

側近のマレウス・ハイブレラ卿が笑っている。


「ハイブレラ卿、笑ってないで、何とかしてください。私、これから王妃様の昼食会のお手伝いに行くので、殿下の昼食会議への同行をお願いいたします」


「ウィング嬢、承知した。珍しいね、王妃様の手伝いって」

「ええ、殿下の婚約者候補の皆様の昼食会だそうです。殿下に関わることなので手伝うようにと」


「確かに、高位貴族のご令嬢ばかりだからな」

「まあ、ハイブレラ卿も、侯爵家でいらっしゃるのに」

「男の侯爵家出身と、女性のはちょっと違う。なかなか大変らしい。うちは姉上が隣国の王族に嫁いだからね、大変だったよ」


「おい!マレウス、何の長話をしているのだ」

「……」

ハイブレラ卿が肩をすくめる。


「では殿下、行って参ります」

「ウィンディ」

「はい?」

「終わったらすぐに戻ってくるように、すぐにだ!」

「はい、では行って参ります」


私は王妃様の昼食会へ急ぐ。

それにしても最近の殿下が少しおかしい気がするのだけど、原因がわからなくて、少し困っているのよね。

後で王妃様にご相談してみようかしら。



⌘

ウィンディが出て行った後の王太子執務室。


「殿下」

「なんだ」


「早く、王妃様におっしゃった方がいいかと」

「いや、しかし」

「妃候補は、現在五人。今日、昼食会があるなら三人に絞られるはず。これ以上減ってしまうとイザベラ・バルトレル侯爵令嬢が筆頭。動くものも動かせなくなります」


「しかし王太子妃に関しての決定権は、父上と母上にある」


「そうですか、では私が、侯爵家から婚姻を申し込んでもいいのですね?ウィング伯爵家は、我がハイブレラ侯爵家からの婚姻申入れは断れないですよ」


「マレウス、お前!決闘してもいいんだぞ!」

「殿下、決闘の前にすることがあるのでは?」

「……わかっている」

「殿下、宰相閣下との昼食会議です」

「……わかった」



⌘

そして王妃様の昼食会場。


「失礼いたします」

「あら、待っていたのよ」

「遅くなりまして、え、まだどなたも?」

王妃様以外、誰もいない。

あ、そうだわ、準備なのね。


「では、ご準備をお手伝いいたします」


「いいのよ、ウィンディ、かけてちょうだい」


「え?」


色々と食事が運ばれてきて、王妃様は人払いをなさった。

え?

殿下の婚約者候補の方々の昼食会のはずでは?


「あの、王妃様」

「びっくりしたでしょう?婚約者候補の昼食会で間違いないわよ」

それって、どういう?



⌘

同じ頃、バルトレル侯爵家のガゼボに招待されたシャロン・イーダー侯爵令嬢は、イザベラ・バルトレル侯爵令嬢と秘密の話をしていた。


「ねえ、シャロン様。私たち、お互いに婚約を潰されたのですわよ」

「バルトレル侯爵家が筆頭候補と伺っておりましたが、何かあったのですか」


「昨日、選考外になったと正式な通達があったのよ」


「ええっ、そんな急に?」


「そう。それで今は、誰が最有力候補かご存知かしら」


「他に思い浮かびませんわ」

「あの女よ。忌み嫌われる凶髪の女よ」


「まさか、そんな。あの女は、ルイ様を白い塔へ追いやった上に、まだ私たちを苦しめるのですか」


「そうよ、この国の将来のために、あの女を生かしてはおけない」

そしてイザベラはシャロンに、特殊な薬を作れる魔女を紹介した。


「これだけあれば、いい薬を作ってくれるわ。あなたの恨みも晴らせるわよ」


「だいがの魔女。イザベラ様は一緒に行かれないのですか」


「私はあなたとこの屋敷にいた事を示すためにも、ここにいなくてはならないわ。さあ、シャロン様、ドレスを着替えて出発なさって。あなたのドレスは侍女に着せて、ここにいたように見せかけるわ」


「何から何までありがとうございます。では、行ってまいります」


「シャロン様、くれぐれも、手筈どおりにいたしましょう。きっとルイ殿下も報われますわ」


「ええ、きっと」

シャロンは紋章のない地味な馬車に乗り、だいがの魔女の元へ向かった。



⌘

代替(だいがえ)の魔女の森の家。


「で、お嬢さん、人を殺す薬がほしいのかい」


「えっ、その、私、思い知らせてやりたいのです」

「殺して、かい」


「いえ、死んでほしいわけじゃなくて、髪が、髪が許せないんです」


「髪?」


「ピンクなんです。ピンクの髪だったから、婚約者が」


「詳しく話しておくれよ、薬を作るには、話をよおく聞かないとね」

シャロンはたくさん話した。


「そうかい、そうかい、よくわかったさ。ではお嬢さんに一番ぴったりな薬を作ってやろう。ただね、お嬢さん、よく聞きな。人を傷つけたら、いつか自分にも返ってくる、それを知っておくんだよ」


「でも死なないで、懲らしめることはできるんですよね」

「できるさ、この薬と引き換えに、お嬢さんの持ち物を一つくれるかい」


「お金はたくさんあります」


「お金は少しでいいんだよ。でもお嬢さんの持ち物、そうだね、髪を一本くれるかい」


「髪を?たった一本でいいのですか?」

「そうさ、一本でいいんだよ」

「ええ、どうぞ」


だいがの魔女は、シャロンの髪を一本抜き取った。



そして薬を渡してこう言った。

「一滴でいいからね。お茶でも菓子でも、一滴かけるだけでいいんだよ」


「だいがの魔女様、ありがとうございます」

代替の魔女はにっこりと笑ってシャロンを見送った。


シャロンはその薬の小瓶を大切に持ち帰った。


「きっと、きっと、思い知らせてやるわ。ルイ様の仇を討つのよ」


不定期更新ですが完結します。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。