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荷物持ちのお荷物だったおっさん、その荷物はチートでした。  作者: 忍絵 奉公


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第11話 熊の魔物現る


「まずい!」

護衛の男が叫んだ。

巨大狼の群れが荷馬車へ迫る。

すでに何人か負傷していた。

このままでは全滅もありえる。

そんな絶望的な状況。

森の奥から。

ガサガサッ!

何かが飛び出してきた。

全員が振り向く。

そして固まった。

熊だった。

正確には熊の毛皮を被った男だった。

しかし遠目には完全に熊だった。

しかも肩には炎の鳥。

意味が分からない。

「なっ!?」

「熊の魔物だ!」

「新手か!?」

商人たちが悲鳴を上げる。

荷馬車の陰から顔を出していた少女など。

「ひぃっ!」

その場で気絶した。

見た目だけなら仕方ない。

巨大な熊毛皮。

筋骨隆々のおっさん。

肩には謎の火の鳥。

怪しさしかなかった。

「ピー!」

ニックが前へ飛び出そうとする。

炎が漏れる。

ボッ。

クレスタは慌てた。

「待て待て待て!」

ニックの尻尾を掴む。

「ピー?」

「やめろ!」

「ピー?」

「商隊を燃やしかねないからやめてくれ!」

実際問題だった。

ニックの火力は異常だ。

狼どころか護衛も荷馬車も森も消える。

ニックは少し不満そうだった。

だが引き下がる。

偉い。

その間にも狼が迫る。

一匹がクレスタへ飛びかかった。

大口を開く。

牙が光る。

普通なら終わりだ。

しかし。

クレスタは避けなかった。

ガシッ。

口を掴んだ。

狼が固まる。

「ん?」

クレスタも首を傾げる。

「これでいいのか?」

そして。

左右へ引っ張った。

ビリィッ!!

狼が裂けた。

護衛たちが固まる。

沈黙。

「え?」

誰かが言った。

狼を裂いた。

素手で。

しかも簡単そうに。

クレスタ本人も少し驚いている。

「意外といけるな」

意外ではない。

十分化け物だった。

さらに別の狼が飛びかかる。

クレスタは首元を掴む。

そして。

振り回す。

ブォン!!

狼が悲鳴を上げる。

さらに。

「おらっ」

投げた。

ドゴォォォン!!

三匹まとめて吹き飛んだ。

木に激突。

木が折れる。

狼も動かなくなる。

「……」

護衛たちは無言だった。

商人たちも無言。

ニックだけが楽しそう。

「ピー!」

狼たちは混乱した。

意味が分からない。

目の前の存在が人間に見えない。

熊の毛皮。

異常な腕力。

しかも素手。

どう見ても魔物だった。

群れのリーダーが唸る。

しかし。

クレスタが睨む。

「まだやるか?」

その瞬間。

狼たちは逃げた。

一斉に。

森の奥へ。

全力で。

戦意など欠片も残っていない。

静寂が訪れる。

そして。

誰も喋らない。

クレスタは頭をかいた。

「あれ?」

何か変な空気だった。

しばらくして。

商隊長らしい男が近づいてくる。

恐る恐る。

「た、助けていただき感謝します」

「いやいや」

クレスタは笑った。

「困った時はお互い様だろ」

人の良い笑顔だった。

だが熊毛皮のせいで怖い。

非常に怖い。

商隊長は若干引いていた。

「ところで」

商隊長が聞く。

「どちらから来られたので?」

「山の上だな」

クレスタは答えた。

事実だった。

「山?」

「うん」

「どの山です?」

「かなり高い山」

「なるほど」

「山頂から降りてきた」

商隊長が笑う。

周囲も笑う。

「ははは」

「面白い人だ」

「山頂ですか」

「それはすごい」

完全に冗談扱いだった。

クレスタは首を傾げる。

本当なのだが。

「本当に山頂なんだけど」

「ははは!」

「またまた!」

「冗談がお上手だ!」

誰も信じない。

「いや本当に」

「はははは!」

「山頂から来た!」

「最高だ!」

二回目。

やはり爆笑。

クレスタは困った。

なぜだろう。

本当のことを言っているだけなのに。

三回目。

「いやだから」

「またそのネタか!」

「ぶはははは!」

大爆笑だった。

商隊の空気が明るくなる。

さっきまで命の危険だったのに。

みんな笑っている。

クレスタだけ納得していない。

「なんでだ?」

「ピー」

ニックも不思議そうだった。

結局。

誰一人として。

クレスタの言葉を信じなかった。

当然である。

なぜなら。

クレスタが降りてきた山は。

この地方の常識では。

絶対に人が生きて帰れない。

神々の領域。

死の山脈。

そう呼ばれている場所だったのだから。


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