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荷物持ちのお荷物だったおっさん、その荷物はチートでした。  作者: 忍絵 奉公


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第9話 ニック誕生


岩の上でクレスタは考えていた。

川のせせらぎ。

頭のたんこぶ。

そして全身の蜘蛛の糸。

「さて」

クレスタは顎をさする。

「どうするかな」

助かった。

それは間違いない。

だが糸は残っている。

相変わらず身体中に絡まっていた。

「うーん」

考える。

そして。

ふと思いついた。

「あ」

熊の毛皮。

収納すればいいんじゃないか。

熊毛皮には大量の糸が絡んでいる。

もしかすると一緒に消えるかもしれない。

「収納」

ポン。

熊毛皮が消えた。

「おっ」

確かに少し緩んだ。

だが。

糸は残った。

むしろ。

緩んだせいで。

ぐるり。

べちゃ。

ぐるぐる。

「あれ?」

別の場所へ絡まった。

状況が悪化した。

「なんでだよ」

クレスタは悲しかった。

しかし。

今度こそ気づく。

「待てよ」

糸そのものを収納すればいいんじゃないか?

沈黙。

数秒。

「それだ」

なぜ今まで思いつかなかったのか。

クレスタは目を閉じた。

蜘蛛の糸に触れる。

そして。

「収納」

ポン。

消えた。

「収納」

ポン。

消えた。

「収納」

ポン。

消えた。

あっという間だった。

数分後。

クレスタは完全に自由になっていた。

「おおおお!」

両腕を広げる。

動く。

素晴らしい。

感動だった。

「便利な鞄だな」

今さらである。

巨大蜘蛛を収納した時点で気づくべきだった。

だがクレスタは細かいことを気にしない。

とりあえず問題は解決した。

それで良かった。

「助かったよ」

クレスタは隣を見る。

小さな雛。

赤金色の羽。

こちらを見ている。

「ピィ!」

元気そうだった。

川に放り込まれた時はどうなるかと思ったが。

意外と平気らしい。

「そうだ」

クレスタは思いつく。

名前を付けよう。

いつまでも鳥では呼びにくい。

しかも結構長い付き合いになっている。

「お前フェニックスなのか?」

「ピー!」

元気よく鳴いた。

たぶん肯定だった。

「フェニックスか」

長い。

呼びにくい。

クレスタは腕を組む。

数秒考える。

そして。

「じゃあニックな」

「ピー?」

「フェニックスだからニック」

実に雑だった。

だが。

次の瞬間。

ニックの身体が銀色に輝いた。

ふわり。

優しい光。

月光に似た神秘的な輝きだった。

「おお?」

クレスタが驚く。

光は数秒で消えた。

だが何かが変わった。

不思議な繋がりを感じる。

心の奥。

見えない糸のようなもの。

「なんだ?」

クレスタにはわからない。

だが。

神代の契約が成立していた。

通常。

神獣を使役するには特別な才能が必要。

膨大な魔力も必要。

高位契約も必要。

だがクレスタには関係なかった。

彼の場合。

条件が違う。

相思相愛。

それだけだった。

助けたい。

一緒にいたい。

信頼している。

その感情だけで契約が成立する。

極めて珍しい資質。

本人は全く知らない。

「おれ才能あったのかな」

適当な結論に達した。

「ピー!」

ニックも嬉しそうだ。

結果オーライだった。

その後。

クレスタは立ち上がった。

川を見る。

岸まではまだ少しある。

だが。

行けそうだった。

「よし」

岩から岩へ飛ぶ。

ぴょん。

着地。

ぴょん。

また着地。

ぴょん。

「おっと」

少し滑る。

だが落ちない。

昔なら荷物が重くて無理だった。

今は身軽だ。

どんどん進む。

そして。

最後の岩。

大きく跳ぶ。

ドスン。

無事着地。

岸辺だった。

「やった」

思わず拳を握る。

大冒険だった。

キングメタジョーゴ蜘蛛。

ベヒモス。

空中遊泳。

激流下り。

どれも普通なら死んでいる。

生きているのが不思議なくらいだった。

「はは」

クレスタは笑った。

すると。

ズキン。

頭が痛む。

「あだっ!」

たんこぶだった。

ベヒモスに吹き飛ばされ。

最後は岩へ頭から激突。

その結果。

立派なたんこぶが完成していた。

触る。

痛い。

かなり痛い。

「うーん」

鏡がないので見えない。

だが感触だけでわかる。

卵くらいありそうだった。

「格好悪いな」

「ピー」

ニックも頷いた気がした。

だが。

生きている。

自由に動ける。

仲間もいる。

それだけで十分だった。

クレスタは森の向こうを見る。

夜明けが近い。

空が少し白んでいた。

そして。

本人はまだ知らない。

この川を渡ったことで。

人間たちが住む領域へ少しずつ近づいていることを。

そして。

次なる五天神器の手掛かりも。

すぐ近くまで迫っていることを。



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