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荷物持ちのお荷物だったおっさん、その荷物はチートでした。  作者: 忍絵 奉公


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第7話 空飛ぶ荷物持ち


夜だった。

森は静かだった。

クレスタと雛鳥は仲良く蜘蛛の糸に吊るされている。

全く動けない。

どう考えても絶体絶命だった。

「困ったなぁ」

クレスタが呟く。

すると。

ズシン。

ズシン。

ズシン。

地面が揺れた。

「ん?」

音のする方向を見る。

木々が揺れている。

何かが近づいてくる。

しかも大きい。

かなり大きい。

やがて現れた。

「でかっ」

クレスタが思わず声を上げる。

巨大だった。

体長は八メートル以上。

見た目はカバ。

しかし普通のカバではない。

額から五本の巨大な角が伸びている。

全身は岩のような灰色。

筋肉の塊。

歩くだけで地面が沈む。

「ベヒモスっぽいな」

クレスタはのんきに分析した。

「究極のカバだな」

ピィ。

隣で雛も鳴いた。

たぶん同意ではない。

巨大生物は鼻を鳴らした。

そして。

こちらを見た。

「お」

目が合った。

嫌な予感しかしない。

次の瞬間。

ベヒモスが突進した。

ドゴォォォォン!!

「うおおおおお!?」

角がクレスタに直撃する。

正確には糸の塊ごと。

まるで玩具だった。

ポーン。

ポーン。

ポーン。

何度も跳ね飛ばされる。

「いたい!」

ドスッ!

「いたい!」

ドゴン!

「いたい!」

完全に遊ばれていた。

しかし。

そのおかげで。

プチッ。

一本切れた。

プチッ。

また切れた。

糸が少しずつ壊れていく。

「お?」

クレスタは気づいた。

これは。

案外チャンスかもしれない。

ベヒモスはさらに突進。

ドォォォン!!

また角がぶつかる。

糸が切れる。

さらに切れる。

だが。

次の瞬間。

ベヒモスが行動を変えた。

巨大な口を開いたのである。

「うわ」

口だけで人間一人入る。

いや。

熊ごと入る。

しかも牙が並んでいる。

草食動物には見えなかった。

「あれ食う気だ」

クレスタは理解した。

今までは遊んでいた。

だが今度は本気だ。

糸ごと丸飲みする気でいる。

巨大な口が迫る。

もう目の前だった。

「まずいな」

逃げられない。

武器も使えない。

そして。

思いついた。

「あ」

最後の手段。

本当に最後の手段。

クレスタは収納バッグを開く。

「まず」

雛を見る。

「収納」

ポン。

雛が消えた。

「ピィ!?」

声だけ残った気がした。

これで巻き添えは防げる。

そして。

目の前にはベヒモス。

巨大な口。

死が迫る。

「よし」

クレスタは叫んだ。

「取り出し!」

空間が歪む。

そして。

ドォォォォン!!

巨大蜘蛛が出現した。

キングメタジョーゴ蜘蛛。

数時間前に収納された張本人である。

突然目の前に現れた巨大蜘蛛。

ベヒモス。

二匹の目が合う。

沈黙。

一秒。

二秒。

三秒。

そして。

ギシャァァァァァ!!

グオオオオオオ!!

戦争が始まった。

「おお」

クレスタは感心した。

蜘蛛が糸を吐く。

ベヒモスが角で吹き飛ばす。

木が折れる。

岩が砕ける。

森が消える。

怪獣映画だった。

その時。

ベヒモスの頭がクレスタの糸塊に当たった。

ドゴォォォォォン!!

「あ」

次の瞬間。

クレスタは空を飛んでいた。

ものすごい勢いだった。

風圧で目が開かない。

木々が下を流れる。

「うわあああああああ!!」

飛ぶ。

飛ぶ。

飛ぶ。

森の上空を飛ぶ。

人生初の飛行だった。

全然嬉しくない。

後方では。

ドゴォォォン!!

バギィィィ!!

ギシャァァァ!!

怪獣対戦が続いている。

「元気だなあいつら」

完全に他人事だった。

だが。

冷静になって考える。

「あれ?」

問題がある。

落下地点だ。

飛ぶのはいい。

問題は着地である。

「落ちた先によっては死ぬな」

クレスタは呟いた。

「岩とかだったら死ぬ」

怖い。

「崖でも死ぬ」

もっと怖い。

「川でも死ぬ」

かなり怖い。

そして。

視線の先。

一本の大河が見えた。

「……」

クレスタは黙った。

川だった。

かなり大きい。

かなり深そう。

しかも。

進行方向ど真ん中。

「嘘だろ」

近づく。

どんどん近づく。

「いやいや」

さらに近づく。

「待て待て」

もう目の前だった。

「フラグ回収早くない!?」

その叫びと同時に。

クレスタは大河へ向かって落ちていった。


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