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荷物持ちのお荷物だったおっさん、その荷物はチートでした。  作者: 忍絵 奉公


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第6話 動けない二人


森は想像以上に深かった。

どこまでも木。

どこまでも草。

どこまでも緑。

クレスタは熊の毛皮を着たまま歩いていた。

「人里まだかなぁ」

すでに何日歩いたのかわからない。

だが相変わらず人間の気配はない。

あるのは森だけだ。

そして。

ベチャッ。

「あ」

顔に何か張り付いた。

蜘蛛の巣だ。

クレスタは無言で取り除く。

数歩進む。

また顔に張り付く。

「またか」

取り除く。

さらに進む。

また蜘蛛の巣。

また蜘蛛の巣。

また蜘蛛の巣。

「蜘蛛多いなこの森!」

とうとう叫んだ。

森中が蜘蛛の巣だらけだった。

木と木の間。

枝と枝の間。

低い場所。

高い場所。

ありとあらゆる所に張られている。

しかも透明に近い。

見えにくい。

そのたびに顔面から突っ込む。

非常に鬱陶しかった。

だが。

その時だった。

ブチッ。

何かに引っかかった。

「あれ?」

右足が動かない。

振り向く。

一本の糸。

かなり太い。

指ほどの太さがある。

「なんだこれ」

引っ張る。

切れない。

むしろ伸びる。

ゴムのようだ。

「へぇ」

感心した。

そして。

ベチャッ。

ベチャッ。

ベチャッ。

次々と糸が飛んできた。

「うおっ!?」

気づいた時には遅かった。

腕。

足。

胴体。

熊毛皮。

全部に絡みつく。

一瞬だった。

「ちょっと待て!」

もがく。

だが余計に絡まる。

気づけば巨大な白い繭のようになっていた。

「やばい」

流石に理解する。

これはまずい。

その時。

森の奥から。

ズシン。

ズシン。

ズシン。

重い足音。

木々が揺れる。

葉が震える。

やがて姿を現した。

巨大蜘蛛。

体長三メートル以上。

金属のような黒い外殻。

腹には紫と赤の派手な文様。

そして特徴的なのは目だった。

三つ。

左右と中央。

三つの目が妖しく光っている。

「うわぁ……」

クレスタは引いた。

見た目だけで毒々しい。

絶対に友達になりたくない。

巨大蜘蛛はゆっくり近づいてくる。

まるで食事を楽しむように。

「キングメタジョーゴ蜘蛛って感じだな」

適当に命名した。

もちろん本当にそういう名前なのかは知らない。

蜘蛛は目の前まで来た。

巨大な牙。

滴る毒液。

完全に食事モードである。

「これは死ぬな」

クレスタは思った。

動けない。

武器も抜けない。

逃げられない。

噛まれたら終わりだ。

だが。

そこでふと思い出した。

右手だけ少し動く。

神器。

収納バッグ。

「そうだ」

右手でバッグを開く。

蜘蛛が首を傾げた。

そして。

クレスタが叫ぶ。

「収納!!」

次の瞬間。

巨大蜘蛛が消えた。

「……」

静寂。

森が静まり返る。

クレスタも呆然。

「入った」

本当に入った。

あの巨大蜘蛛。

一瞬で収納された。

「すげぇ」

感動した。

やっぱり神器だった。

間違いなく神器だった。

だが。

「さて」

問題がある。

「おれ動けねぇ」

蜘蛛はいなくなった。

しかし糸は残っている。

全身ぐるぐる巻き。

状況はあまり改善していない。

「誰か助けてくれー」

もちろん誰も来ない。

森のど真ん中だ。

すると。

遠くから聞き覚えのある鳴き声がした。

「ピィー!」

「ん?」

空を見る。

小さな影。

赤金色の鳥。

あの雛だった。

「あ!」

雛が急降下してくる。

クレスタの肩に止まった。

正確には糸の上だが。

「お前!」

雛が嬉しそうに鳴く。

「ピィ!」

「助けに来てくれたのか?」

「ピィ!」

多分そうだった。

クレスタは感動した。

いい鳥だ。

非常にいい鳥だ。

すると雛の身体が輝いた。

ボウッ!

炎が噴き出す。

黄金の炎。

周囲の空気が揺れる。

「おお!」

雛は糸を燃やそうとしているらしい。

しかし。

糸は燃えない。

まったく燃えない。

少し焦げた気配すらない。

「耐熱かよ!」

クレスタが叫ぶ。

雛も驚いている。

「ピィ!?」

もう一度炎。

無理。

さらに炎。

無理。

完全に無理だった。

すると今度は。

雛が口で糸をつつき始めた。

一本一本。

丁寧に。

健気である。

「そうそう」

クレスタも応援する。

しかし。

一本外れる。

別の糸が絡まる。

また一本外れる。

さらに絡まる。

「あれ?」

「ピィ?」

気づいた時には。

雛の足に糸。

羽に糸。

首に糸。

身体に糸。

完全に絡まっていた。

「ピィィィィ!?」

暴れる。

さらに絡まる。

「やめろ!」

遅かった。

数分後。

クレスタの隣に。

もう一つ白い繭が完成していた。

「……」

「ピィ……」

二人とも動けない。

森は静かだった。

風が吹く。

葉が揺れる。

完全に詰んだ。

「困ったな」

クレスタが言う。

「ピィ……」

雛も同意した。

こうして。

五天神器の継承者と。

未来のフェニックス。

森の中で仲良く蜘蛛の巣に捕まり。

どうしようもなくなったのであった。


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