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荷物持ちのお荷物だったおっさん、その荷物はチートでした。  作者: 忍絵 奉公


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第24話 王都への準備


城を買って三日後。

クレスタはようやく落ち着いていた。

大浴場も使った。

最初は広すぎて落ち着かなかったが、慣れると快適だった。

食堂も広すぎた。

一人で食べると妙に寂しい。

結局キッチンの隅で食べることが多かった。

ニックは温室がお気に入りになっていた。

珍しい果実をつつき。

蝶を追い回し。

勝手に住み着いている。

そんな平和な昼下がりだった。

城の門が叩かれた。

ドンドンドン。

「誰だ?」

門を開ける。

ギルド職員だった。

「ギルドマスターがお呼びです」

「何かあったのか?」

「捜索隊が帰還しました」

クレスタは表情を引き締めた。

銀狼の牙。

あの四人のことだ。

ギルドへ向かう。

応接室にはギルドマスターと数人の職員。

そして見慣れない男たちがいた。

屈強。

威圧感。

一目で強者と分かる。

S級パーティ悪楽の宴だった。

中央にいた大男が笑う。

「お前がクレスタか」

「そうだ」

「なかなか面白い話だったぞ」

ギルドマスターが咳払いする。

「まず報告だ」

室内が静かになる。

クレスタも身構えた。

「銀狼の牙は発見できなかった」

クレスタは目を見開く。

「見つからなかった?」

「正確には痕跡もなかった」

悪楽の宴のリーダー、バッドが肩をすくめる。

もちろん嘘だった。

実際は発見している。

だが誰も証明できない。

「かなり奥まで調査したがな」

「そうか……」

クレスタの表情が曇る。

ギルドマスターも難しい顔をした。

「生存は厳しいだろうな」

静かな声だった。

あのダンジョンで何日も遭難。

普通なら助からない。

職員たちも同じ意見だった。

「ただな」

バッドが言った。

皆が見る。

彼は背負っていた布を外した。

黒い槍。

ロンギヌスだった。

室内の空気が変わる。

クレスタも思わず見つめる。

ただならぬ気配。

神器だと分かる。

「これは?」

ギルドマスターが聞く。

バッドが笑う。

「ダンジョンの奥に落ちていた」

もちろん嘘だった。

「拾ったら所有者認定された」

ギルドマスターの目が見開かれる。

「所有者?」

「頭に声が響いた」

神器。

その言葉を誰も口にしなかった。

だが全員理解した。

伝説。

神話。

国家級戦力。

それが目の前にある。

ギルドマスターは深く息を吐く。

「つまり……」

視線を落とす。

「銀狼の牙は死亡したと考えるべきか」

誰も反論しない。

遭難。

神器発見。

生存者なし。

自然な結論だった。

クレスタだけが少し違和感を覚えた。

だが証拠はない。

何も言えない。

バッドは心の中で笑った。

全部うまくいった。

銀狼は死んだことになった。

クレスタも騙せた。

ロンギヌスも手に入れた。

完璧だ。

そう思っていた。

その時。

ギルドマスターが話題を変える。

「ところでクレスタ」

「はい?」

「王都へ行く予定だったな」

「ああ」

クレスタは頷いた。

隠し部屋から見つかった帳簿。

横領の証拠。

あれを届ける必要がある。

「明日出発します」

「護衛を付けようか?」

「いらない」

即答だった。

「収納があるから荷物もないしな」

職員たちが苦笑する。

確かにその通りだった。

クレスタは立ち上がる。

「じゃあ行ってくる」

「気をつけろ」

「おう」

こうして。

クレスタの次なる目的地が決まった。

王都。

だが彼は知らない。

悪楽の宴のバッドもまた、神器の登録と報告のため王都へ向かう予定だったことを。

二人の道は。

再び交わろうとしていた。


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