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荷物持ちのお荷物だったおっさん、その荷物はチートでした。  作者: 忍絵 奉公


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第18話 告発


ニックの帰巣本能は凄まじかった。

迷わない。

一切迷わない。

分岐があろうが。

曲がり角があろうが。

立ち止まることすらない。

「ピー!」

一直線だった。

クレスタは必死についていく。

走る。

とにかく走る。

銀狼の牙から離れるために。

「どこだ!?」

「見つけろ!」

「近くにいるはずだ!」

後方から怒鳴り声が聞こえる。

だが。

見つからない。

見えるはずがない。

インジビブルマントの力は完全だった。

クレスタ自身ですら自分の身体が見えない。

走りながら手を見ようとする。

見えない。

足も見えない。

服も見えない。

「どうなってるんだこれ」

意味が分からない。

だが。

今は助かっている。

それだけは確かだった。


一方。

銀狼の牙。

完全に迷子だった。

「くそっ!」

ガルドが壁を蹴る。

「どこへ消えた!」

レミアも顔面蒼白だった。

「フェニックスも見えない……」

「透明化だと?」

バッシュが舌打ちする。

神器を持っている。

なのに状況は悪化していた。

クレスタは逃げた。

収納バッグも失った。

食料もない。

水もない。

道も分からない。

最悪だった。

その頃。

クレスタはニックに引っ張られ続けていた。

そして。

数時間後。

遠くに光が見えた。

自然光だった。

「出口だ!」

クレスタが叫ぶ。

思わず涙が出そうになる。

そして。

外へ飛び出した。

眩しい。

青空。

風。

太陽。

生きている。

それだけで嬉しかった。

「助かった……」

クレスタはその場に座り込む。

すると。

ニックがマントを外した。

途端に姿が戻る。

「おお!」

初めて理解した。

「消えてたのか俺」

ニックが呆れたように鳴く。

「ピー……」

そして。

クレスタはすぐに決断した。

ニックを収納する。

今度は自分の意思で。

「ありがとうな」

「ピー!」

収納。

ポン。

ニックが消える。

そして。

クレスタは全力で街へ向かった。

目指すは冒険者ギルド。

夕方。

ジャムの街。

冒険者ギルド。

バン!

扉が開く。

受付嬢が顔を上げる。

「クレスタさん?」

ボロボロだった。

服は汚れている。

顔色も悪い。

脇腹には傷。

ただ事ではない。

「ギルドマスターを呼んでくれ」

クレスタの声は真剣だった。

受付嬢も表情を変える。

「すぐに」

数分後。

応接室。

クレスタ。

受付嬢。

そしてギルドマスター。

筋骨隆々の壮年男性だった。

腕を組んで座る。

「話せ」

クレスタは深呼吸した。

そして全てを話した。

最初のダンジョン。

転送陣。

囮にされたこと。

見捨てられたこと。

マチョモ山。

生還。

再会。

そして今回。

麻痺毒。

収納バッグの強奪。

殺害未遂。

神器ロンギヌス。

全部。

一時間近く話した。

部屋は静まり返る。

受付嬢は顔を青くしていた。

「そんな……」

信じられない。

だが。

クレスタは嘘をつく男ではない。

ギルドマスターは黙って聞いていた。

そして。

ようやく口を開く。

「証拠はあるか?」

クレスタは黙る。

難しい質問だった。

見ていた者はいない。

録音もない。

証人もいない。

四対一。

不利だった。

しかし。

クレスタは服をめくる。

脇腹を見せた。

そこには小さな傷。

刺し傷だった。

ギルドマスターが目を細める。

「ふむ」

傷を見る。

確かにある。

だが。

決定打ではない。

「証拠としては弱い」

正直な評価だった。

クレスタも頷く。

「そうですよね」

「だが」

ギルドマスターが続ける。

「事情聴取する必要はあるな」

受付嬢がほっとする。

しかし。

ギルドマスターは厳しい顔のままだった。

「相手はA級パーティだ」

「はい」

「四人対一人」

「はい」

「分が悪いぞ」

普通なら握り潰される。

名声。

実績。

信用。

全て銀狼の牙が上だ。

クレスタはただの荷物持ち。

しかも最近まで消息不明だった男。

誰が信じるか。

普通なら。

だが。

クレスタは迷わなかった。

「かまいません」

ギルドマスターが目を細める。

「ほう」

「事情聴取してください」

真っ直ぐな目だった。

怒りはある。

だが復讐ではない。

クレスタは続けた。

「俺も事情を聞きたいんです」

部屋が静かになる。

「どうしてあんな事をしたのか」

「……」

「仲間だったんです」

受付嬢が俯く。

ギルドマスターも少しだけ表情を和らげた。

そして立ち上がる。

「分かった」

窓の外を見る。

夜が近い。

「銀狼の牙を呼ぼう」

その言葉と同時に。

ギルド職員たちが動き始めた。

A級パーティ。

銀狼の牙。

そして荷物持ちクレスタ。

双方を集めた事情聴取が。

今まさに始まろうとしていた。



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