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荷物持ちのお荷物だったおっさん、その荷物はチートでした。  作者: 忍絵 奉公


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第14話 再会の杯


その夜。

ギルドは大いに盛り上がっていた。

長らく死亡したと思われていた荷物持ち。

クレスタの生還。

それだけでも酒の肴には十分だった。

「飲め飲め!」

「生還祝いだ!」

「今日は奢りだ!」

あちこちで乾杯が起きる。

クレスタも久しぶりの酒を飲んでいた。

隣には銀狼の牙。

かつての仲間たち。

ガルドがジョッキを掲げる。

「本当に良かった!」

「まったくだ」

クレスタも笑う。

レミアが涙ぐむ。

「ずっと心配してたんだから」

「そうか?」

「当然でしょ!」

ミリアも優しく微笑む。

「神のご加護ですね」

バッシュまで珍しく上機嫌だった。

「生きてるとは思わなかったぞ」

そんな言葉を聞いているうちに。

クレスタの心は少しずつほぐれていった。

確かに。

魔法陣の時は腹も立った。

だが。

こうして再会を喜んでくれている。

涙まで流している。

もしかすると。

自分の考えすぎだったのかもしれない。

酒も入っている。

警戒心も薄れていく。

「やっぱりいい奴らだな」

クレスタはそう思い始めていた。

ニックだけは肩の上で不機嫌そうだった。

「ピー……」

何度も銀狼の牙を見る。

だがクレスタは気付かない。

やがて話題は自然と。

マチョモ山になった。

「それで?」

ガルドが聞く。

「本当に山頂だったのか?」

「本当だぞ」

クレスタは笑う。

そして語り始めた。

祠のこと。

鳥の雛のこと。

巨大蜘蛛のこと。

ベヒモスのこと。

川へ吹き飛ばされたこと。

魔猿。

ケルネイヤ。

ミスローチ。

聞いていた冒険者たちは何度も驚きの声を上げる。

だが。

銀狼の牙が注目していたのは別だった。

「待て」

レミアが聞く。

「その祠にあった宝って?」

「これだな」

クレスタは収納バッグを軽く叩く。

「どんな鞄なんだ?」

「収納できる」

「どれくらい?」

「よくわからん」

クレスタは笑った。

そして。

宴会場の隅に置かれていた大樽を見た。

「収納」

ポン。

消えた。

ギルド中が静まり返る。

「え?」

「消えたぞ?」

「今消えたよな?」

数秒後。

「取り出し」

ポン。

戻る。

どよめきが起きた。

ガルドたちの目が変わった。

完全に変わった。

神器。

間違いなく神器。

しかも規格外。

さらに。

ガルドはニックを見る。

「その鳥は?」

「拾った」

「拾った?」

「崖から落ちそうだった」

「それだけか?」

「それだけ」

ニックが胸を張る。

「ピー!」

クレスタは頭を撫でる。

するとニックが嬉しそうに鳴く。

その瞬間。

レミアが小さく呟いた。

「フェニックス……」

神話級の存在。

それが目の前にいる。

しかも懐いている。

そして。

五天神器。

フェニックス。

二つも。

同時に。

ガルドは笑顔を崩さない。

しかし心臓は激しく脈打っていた。

欲しい。

喉から手が出るほど欲しい。

その後も宴会は続いた。

酒が進む。

料理が並ぶ。

笑い声が響く。

そして最後。

ガルドたちはクレスタを囲んだ。

「頼む!」

「戻ってきてくれ!」

「また一緒に冒険しよう!」

「お前が必要なんだ!」

次々に抱きついてくる。

レミアは涙目。

ミリアも必死。

バッシュまで頭を下げた。

クレスタは困った。

正直。

嬉しかった。

必要とされている。

そう感じた。

しかも酒が入っている。

判断力も鈍っていた。

「うーん……」

悩む。

悩んで。

悩んで。

そして。

「わかった」

全員の顔が輝く。

「本当か!?」

「ああ」

「また仲間だな!」

ガルドが抱きつく。

レミアも喜ぶ。

周囲も拍手した。

クレスタは少し照れ臭かった。

「明日の朝な」

「おう!」

待ち合わせを決める。

そして解散。

クレスタは宿へ向かった。

ニックを連れて。

久しぶりの柔らかいベッド。

すぐに眠りへ落ちていった。

その頃。

別の酒場の個室。

銀狼の牙が集まっていた。

誰も笑っていない。

重い沈黙。

最初に口を開いたのはガルドだった。

「確認する」

全員を見る。

「クレスタは生かしておけない」

誰も反論しない。

レミアが頷く。

「神器を持ってる」

ミリアも続く。

「フェニックスまでいます」

バッシュが舌打ちした。

「証言されたら終わりだ」

それも事実だった。

クレスタは今のところ疑っていない。

だが。

未来はわからない。

誰かに相談するかもしれない。

酔った勢いで喋るかもしれない。

そのリスクは消えない。

ガルドの目が冷たく光る。

「明日」

「うん」

「依頼に誘う」

「そして?」

「事故にする」

沈黙。

誰も止めない。

既に全員同じ考えだった。

「荷物持ちらしく」

ガルドが笑う。

冷たい笑みだった。

「最後まで役に立ってもらおう」

その言葉に。

全員が静かに頷いた。

翌朝。

クレスタは希望を抱いて目を覚ます。

再び仲間と冒険できる。

そう信じながら。

一方で銀狼の牙は。

クレスタを殺すための準備を始めていた。



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