Eps.18
レイズ星間連合国防宇宙軍第二および第三艦隊は、遂にメキシコ星系へワープアウトした。戦争にしては珍しく、始まりの地で決着をつけるために。
標準的な箱型隊形を取り〇・一光速で恒星メキシコの公転軌道に遷移。あらかじめ決められた機動を行いつつ、ラウザハウ級重巡洋艦による星系内の走査が行われ、旗艦<ウーズ>に向け多量のデータを送信した。
かつてなく重苦しい空気が満ちる<アクトウェイ>の船橋では、イーライ・ジョンソンやフィリップ・カロンゾが横目でセシル・アカーディアを見ていた。普段は何も言わずに大人しく座っているキャロッサ・リーンまでも、落ち着かない様子でしきりに手汗を航宙服のズボンで拭いている。皆が、船橋の天井いっぱいに広がる星々の海で、何か目につく光はないかと目を凝らしている。
アキはリガルのすぐ右隣に立っており、いつも彼女が腰かけているオブザーバー席にはヴィエラ・オリエガの姿があった。乗組員として迎えられたわけではないが、目を離すわけにもいかないため船橋に招くこととなった。この判断が吉と出るか凶と出るかは、いまのところ何とも言えない。
ヴィエラを白い眼で見ていた乗組員も表情を強張らせてはいるものの、それどころではないと言いたげに辛抱強くセシルの報告を待っている。船首に艤装された高性能なセンサーを魔術師のように用いて星系内を精査していたセシルは、顎を指で押さえながら結果を眺めまわし、座席を回してリガルを見た。アイスブル―の瞳が失望のクリア光をたたえている。
「船長、悪い報告ともっと悪い報告があります」
思わず吹き出しそうになってしまったが、咳払いで誤魔化して手を振り先を促す。セシルは他の乗組員にもわかりやすいようにと、コンソールに向き直って打鍵し、船橋を覆う星の海を背景にメキシコ星系図を投影した。
「悪いほうの報せは、超新星弾頭の所在が不明なことです。迅速に弾頭を投下するためには、やはりメキシコ・サードの軌道上、そのどこかにあるはずですが……いかんせんヘリウム採掘船が仮設桟橋に大挙して係留されています。超新星弾頭の大きさからある程度まで候補を絞ることは可能ですが、衛星の地表に発射機と共に設置されていたら探知は不可能でしょう」
<アクトウェイ>とレイズ艦隊が遊弋しているクイナレ星系方面の跳躍点から、恒星メキシコを正面に捉え右前方を公転するメキシコ・サードが強調表示され、隣に巨大なガス惑星の略式図と周囲に浮かぶ採掘船が並ぶ。
「超新星弾頭の破壊を目的とするのなら、まずどこにあるのかを探さなければならない。そしてそのためには想定よりも時間がかかる、というわけか。フィリップ、工学的見地から対象の捜索を補助できるか?」
フィリップが丁寧になでつけた髪を掻き上げてうなり声をあげる。
「アキと二人で件の弾頭について検証を行ったが、断言できることは少ない。あの兵器の性質からして、メキシコ・サードの衛星軌道から出ることはないってことだ。さらに言えば、より近接した極軌道が理想的な条件だが、敵さんが発射準備を整えているかどうかも不透明となりゃお手上げだ」
「あいつらは国軍とは名ばかりの、武力を誇示して国民と反体制派を弾圧する連中だ」嫌悪感も露わにイーライが横から口を挟む。「超新星弾頭がメキシコ星系に搬入されているのなら、星系政府への脅迫のためにも発射準備状態で保持するに違いない。銃口を向けて脅すなら、引き金に指をかけなきゃ効果がないからな」
「なるほど。となると、アステナ少将と星系政府とのやり取りはモニターしておくべきだぜ、船長。とにかく情報は多ければ多いほどいい。打つ手がなくとも、タイミングはつかめるかもしれねぇ」
「二人の言うことはおれも正しいと思う。ともかく、現段階での超新星弾頭の在り処を突き止めるには情報が不足しているというわけだ。セシル、ましなほうの報告は?」
「メキシコ星系のバルハザール軍が増強されていることです。<ファーベンス>の報告では七〇隻でしたが、新たに一二隻が増派された模様です」
バルハザール領宙であるジル星系方面の跳躍点に近い位置を、メキシコ・プライムが公転している。この衛星軌道上に昼夜問わず監視を行っているであろう主力艦隊、三八隻が停泊していた。翻ってメキシコ・サードから恒星を挟んでほぼ反対の位置にあるメキシコ・セカンドには一六隻。その位置関係から、クイナレ星系方面へ脱出しようとする船舶をインターセプトするのに最適な位置だ。軍用艦艇ならまだしも、燃費を最優先とする商船では速力において圧倒的な差をつけられているため、この部隊の妨害を受けずに離脱することはまず不可能だ。そしてメキシコ・サードにも一六隻の部隊が遊弋し、無数に存在する採掘船の監視と警戒を行っている。最後に、セシルが報告した新しい一二隻の戦隊がメキシコ・サードからジル星系方面の跳躍点との中間地点を〇・〇六光速で航行しており、恐らく掠奪したヘリウム3を積載していると思しき輸送船を護衛しているようだ。セシルは四つの隊形に対して順にアルファからデルタまでの符号を割り振り、それぞれの艦種までをも割り出して見せた。
当然ながら、首府の置かれているメキシコ・プライムを取り囲んでいるアルファが重武装だ。驚くべきことに、戦艦が六隻も含まれている。それと八隻の重巡洋艦、十隻の軽巡洋艦、一四隻の駆逐艦だ。いずれも旧式で、クイナレ星系で対峙した銀色の船には及びもつかない型落ちばかりである。ヴィエラの報告通り、あれらはどこかで新造された無人艦なのだから、十数年前から続いていた内戦で使い古された艦艇とは比べるべくもないだろう。とはいえ、堅固なAPS装甲や大出力の中性粒子砲は大きな脅威だ。
反対に、アルファ以外にはさほど重武装の船は配備されていない。軽巡洋艦を旗艦として駆逐艦で構成された軽戦隊だ。<ファーベンス>以外の星系防衛軍として派遣されていた駆逐艦は全て破壊されたというから、仮に駆逐艦一隻であったとしても、この星系において対抗できる船は存在しない。あれだけの軽装備であっても必要十分というわけだ。
「数的有利は敵にあるわけですが、厳しい戦いになるでしょうか」
「油断はならないが、悲観するほどでもないだろう」イーライが自分の目の前にあるコンソールを打鍵しながらセシルの不安を一蹴する。「ひとつところにまとまっていれば苦戦を強いられるだろうが、この際、分散した敵艦隊をひとつずつ相手取っていけばいい。敵はメキシコ星系の支配を継続するためにも、戦力は分散しなければならなかったんだろう」
「なるほどね。でも、それにしたって順番があるでしょう。敵も自分たちの不利を自覚していない保証はないわ」
「その通り。だが、実際の作戦計画の立案は、それこそアステナ司令官の腕の見せ所さ」
乗組員たちがそれぞれ意見交換を始めた所で、リガルは<ウーズ>から仮想会議の予告を受けて人知れずため息をついた。
イーライの指摘した通り、数的不利は今のところ致命的なものではない。各個撃破がうまくいけば、最低限の損害で敵の機動兵力を一掃できる。
超新星弾頭のことが頭の片隅でずっと引っかかって今の状況に集中できない。星系図を見るたびに、どこにあるのかと探してしまう。フィリップとアキの分析を疑ってはいないが、メキシコ・サードの軌道上にあるとして本当に超新星弾頭を使うのならば敵はどうするか。
情報が不足している。何かを判断する前に、まずは何を知っていて、何を知らないのかを整理すべきだ。
暗雲の立ち込めつつある先行きを思いながら、リガルは会議に出席すべくイーライに後を任せ、席を立った。
*
「随分とご不満な様子ね」
ヴィエラ・オリエガの間延びした言葉に、乗組員たちはそれとなく、しかし素早く視線を交わす。ジュリー・バックだけは、航法セクションの自席でふんぞり返って、ふんと鼻を鳴らした。
船長席に座り、足を組んで頬杖をついているリガルは何も言わずに空中に浮かぶホログラフを指で突いて弄んでいた。今もそれから視線を外さずに小さな声で悪態をつく。
「夜の森を月明かりを頼りに歩いている時、何もかもうまくいっているように感じるのは何も見えていないからだ、と腐れ縁の友人に言われたことがある。今の状況は正にそれだ。おれたちは何も見えていない」
「フム。いま順調なように見えるのは、単純に問題を認識できていないだけというわけね。含蓄のある言葉だわ」
うん、と今度は行儀よく返事をして身を乗り出す。リガルはもう何時間も見つめ続けたメキシコ星系図を睨みながら、これもまた何度目か、メキシコ星系に到着した時点からの出来事を整理し始める。
第二・第三艦隊は加速を終え、〇・二光速でメキシコ・サードの公転軌道をほぼ後ろから追いかけるような恰好でメキシコ星系内を進んでいる。やがて恒星メキシコの重力に引かれ、やや内側に切り込むような放物線軌道を描いていた。この軌道で進み始めて半日が経過しており、跳躍点からかなりの距離を進んでいる。一見すればメキシコ星系を横断する軌道にも見えるが、実際にはメキシコ・プライムへ向けて自由落下しているのだ。
進み続けるレイズ艦隊の光は敵艦隊に届き、それぞれの反応もまた確認できている。軌道から大きく外れているメキシコ・セカンドのガンマ戦隊は緩やかに加速しレイズ艦隊の後背を狙う構えだが、アルファ、ベータ、デルタはそれぞれ右舷側へ回頭し、時間差でレイズ艦隊を数段階に分けて迎撃する動きを見せた。戦力を分散させてしまっているため、少数で機動力を生かし通過攻撃を仕掛け、こちらの戦闘力を漸減させるつもりだろう。
「メキシコ星系のバルハザール宇宙軍は、第一艦隊が敗北したことを知っているはずだ。そしておれたち、第二、第三艦隊が無人艦隊を打ち破ったことは知らないだろうが、こうしてメキシコ星系へ来たことで結末は悟ったことだろう。となれば、レイズ星間連合に残された機動兵力はここにいる七〇隻弱だということは簡単に計算できる」
「単純な引き算を行えば、確かにその結論を得るのに難しくないでしょう。だからこそ一二隻の増援を引き連れてきたと考えられるわ。レイズの持つ機動兵力にとどめの一撃を加えるにはじゅうぶんな規模だし、おそらくあの小艦隊はバルハザール本国の防衛を担当している戦力を引き抜いてきたものよね?」
「ならば、バルハザール宇宙軍はメキシコ星系において、十全な状態で我々を迎え撃つ準備をしていたことになる。だったら、四ケ所に戦力を分散させているのはなぜだ? おれなら、跳躍点にほど近いメキシコ・セカンドに集結させておく。フォーマン星系方面の跳躍点には駆逐艦戦隊を置いておけばじゅうぶんだろう」
しばらく、ヴィエラはリガルの説明を聞きつつ星系図を凝視していた。友人とは言えないが大抵の人間よりも緊張感を与えてくる彼女とは短い時間しか共有していない。リガルの人生に登場した多くの人物と比べて、深い部分まで理解しているとは言えないだろう。しかしEXUの一員として、カルツィオが単独で任務を依頼するほどの人材であるなら、その頭脳は明晰という言葉では足りないほどだ。
やがて前かがみになっていた姿勢を真っすぐに戻すと、彼女はため息をついて青みがかった髪を手で漉く。
「あなたの考えは正しいと思う。でも、敵の指揮官が未熟である可能性は? 内戦中に政治的手腕で成り上がった軍人に、合理的な戦術判断を下せるかしら」
「否定できない。だが敵が失敗を犯すことを前提とした計画は遠からず破綻する。こちらの考えていることは敵の考えだと仮定すべきだ」
「アステナ少将も同じ考え?」
渋面といっていいほど顔をしかめ、リガルは低く唸った。
「たぶんな。彼は本来、第三艦隊に身を置くような男じゃない。連合警備隊……いや、今は国防宇宙軍に出向しているが、組織改革に熱心な理想主義者をひとり知っている。アステナも同じ穴の貉だ。ただ、彼は自分の理想主義ですら客観的に捉えている冷徹な性格みたいだ」
「自己矛盾の塊というべきじゃない?」
「だからこそ第三艦隊司令官止まりなのさ。技量は確か、されど人格に難ありってこと。まあ、そういうわけだからアステナの戦術眼は信頼できる。ただ宇宙空間を驀進しているように見えて、彼と敵との間で心理戦が繰り広げられているんだ」
「その隙を突いて、わたしたちは超新星弾頭を無力化しなければならないというわけね」
「わたしたち?」
心に感じた疑問をそのまま口に出すと、ヴィエラは顔を赤く染めた。初めて彼女の人間味のある表情を目にし、リガルはしばらく目を丸くしていたが、やがて弾けるように笑い出す。ばつの悪そうな彼女は力を込めて彼の肩を叩いた。
「おいおい、顔が真っ赤だぜ」
「調子に乗るんじゃないわよ、リガル!」
「ヴィエラ、いつからおれたちの仲間になったんだ? もうその気ってわけか、ええ?」
彼女はふくれっ面でリガルを睨んだ後、鼻を鳴らして給湯室へと歩いて行った。すぐ後ろでいつでも彼女の首を捻れるように待機していたアキが入れ替わりにリガルの横に立ち、顔を近づける。
「大丈夫ですか?」
まだこみあげてくる笑いの発作を抑えようと頬をおさえながら、リガルは首を振った。
「ああ、問題ない」
不思議なことに軽くなった心持ちで乗組員の好奇の視線を無視しながら、リガルは星系図の中にあるはずの何かを探し始めた。
「船長!」セシルが管制セクションで叫び、慌てて声を落とす。「失礼しました。これをご覧ください」
ちょうど船長席でキャロッサの手作りサンドイッチを頬張っていたリガルは、ふがふがと口を動かしながら立ち上がりセシルの元まで歩み寄った。忙しくコンソールを打鍵していたセシルは見慣れたメキシコ星系図の一端を指さす。
レイズ艦隊はワープアウトしてから既に四日を経過しており、最も強力な敵艦隊アルファと六十度の角度で接敵する軌道を進んでいる。交戦まで残り十時間といったところで、両艦隊の位置を示すアイコンはじれったいほどゆっくりと距離を詰めていく。
だがセシルが示したのは星系内部ではなく、外縁に近いクイナレ星系方面の跳躍点だ。そこにはワープアウトしたばかりと思しき一五隻の艦艇が出現していた。
「後方のため船首のセンサー群を用いた観測は行えませんが、出力特性や船体規模、形状から見て第一艦隊のようです。今、アステナ少将にも問い合わせていますが、ほぼ間違いないでしょう」
横で話を聞いていたイーライが口笛を吹く。感心するのも無理はない、損傷した一五隻の艦艇を修復してここまで持ってくるのみならず、一糸乱れぬ動きで統率している様子から敗北に打ちのめされた将兵の尻を叩き奮い立たせたのは明らかだ。
頬張っていたサンドイッチを噛むのもそこそこに嚥下すると胸に詰まった。少しむせていると、セシルが自分の保温ポットを肘掛けの横にあるホルダーから取って差し出す。ありがたくコーヒーを一口もらい調子を整え、それを返しながらホログラフを指差した。
「編成はわかるか?」
「少々お待ちください……解析しました。戦艦一、重巡三、軽巡三、駆逐艦八です。損傷度合いは不明ですが、機動力に関してはほとんど復旧したようですね。かなりの加速度です」
「よくもまあ、あそこまで持ち直したもんさねぇ。あれだけこっぴどくやられたのに、もう戦場に舞い戻るなんて見上げた根性だ」
長い金髪を手で漉きながら、ジュリーが感心したように呟く。イーライも同意の印に頷いた。
「セイル星系から出てメキシコ星系まで、最短で十九日くらいだ。航行可能な船を選抜して、その時間で修復作業にあたらせたんだろう。ついでに将兵を忙しくさせておけば、落ち込んでる暇もないってわけだ。それに、仕事をこなす中で兵士たちは指揮官のことを知るものだ」
「なるほどねぇ。メンフィス副本部長殿は現役将官に劣らないほどの才能を持っているみたいだ。あの地位を持て余すばかりか、当然のようにこの戦場に駆け付けるとは」
「いずれにしろ」誇らしい気分になりつつあった自分を諫めるようにリガルは乗組員の会話を遮り、「これでガンマ戦隊が後方から追撃してくることはなくなった。数で勝るとはいえ、第一艦隊の練度は健在だ。順当にいけばうまく阻止してくれる。後顧の憂いを絶てるわけだ」
「となると、アルファ、ベータ、デルタの各戦隊と三連戦をうまく切り抜ければ、かなりの勝算が見込めます」
頷きながら、頭の中で素早く計算する。レイズ艦隊における唯一の不利は、弾薬の損耗だ。燃料は必要十分なだけ積載されているが、弾薬類はそうもいかない。クイナレ星系の戦いでは損害こそ軽微だったとはいえ、短時間で激しい戦闘が繰り広げられた。ミサイル、デコイを何度も使用していれば、最後には中性粒子砲とレーザー砲による砲戦しか行えない事態があり得た。第一艦隊の参戦は戦闘回数を一度、削減するということであり、物資の面でも余裕を持てる。
「旗艦は<ハーキス>か。何か言ってこないか?」
「指向性通信による通信は確認していますが、国防宇宙軍の暗号プロトコルであるため解読が……いえ、ちょっと待ってください。船長宛に公開通信です」
いったい何事か、と逡巡するよりも通信を開けば全て済む話だ。ほんの少しの躊躇いの後、リガルは自席に戻り新たに表示されているホログラフの応答ボタンに触れた。
カルーザの顔が映し出される。見覚えがある背景は<ハーキス>の艦橋か。クルーエ大佐の後任として席に座り真っすぐにこちらを見つめる二枚目の男は、それだけでじゅうぶんとばかりに軽く会釈をして挨拶する。
「<アクトウェイ>船長のリガル氏へ。第二管区保安本部より伝言を預かっている、当星系における貴殿の資産は情報軍により差し押さえられていたが、然るべき手続きを踏めば返還されるとのことだ。予てより要望をいただいていた旨であるため、本通信による報告とする。以上」
敬礼と共にホログラフが消える。リガルは船長席の背もたれに体重をかけ、消えたホログラフのあった虚空を凝視する。
明らかに身に覚えのない要望に対する報告だった。となれば、これはカルーザの勘違いではなくメッセージなのだろう。迂遠な手段ではあるが、彼は間違いなくリガルに対し何かを伝えようとしているのだ。
いや、とリガルはほくそ笑む。カルーザのことだ、そんなことではない。彼にとって目下の関心事は、戦闘艦隊を率いて姿を現した以上、メキシコ星系におけるバルハザール宇宙軍の撃滅だ。それがリガルにはわかった。となれば、この通信は要するに先に進んでいるリガルに対する援護射撃だろう。その材料となる一手なのだ。
しばらく思案した後、リガルはセシルに指示を出した。イーライを呼びつけ戦闘計画の立案を行い、ジュリーとフィリップには戦闘時の回避機動パターンやエネルギー分配計画、戦闘を見越したダメージコントロールの用意をさせる。
まるで新しい悪戯を思い付いた子供のように無邪気な様子のリガルを見て、フィリップはイーライに肩を竦めて見せた。
「どうやら一光時は離れてても、悪ガキ同士の絆ってのは健在らしいな」




