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夢現の箱庭  作者: 星咲 美夜
凶器の狂気による凶行
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創られた狂気

「また、事件ですか?」


《窓口》はため息を一つついた。ここは、いつからそういう事件を扱う場所になったのか。本来、そういう事件は協会とかに持っていくべきなのだが。


「確か『相談所』ですよね?ここ」

「あー、うん・・・お前の言いたいことは、痛いくらいにわかるんだけど」


《窓口》の横に座るネロと、前に座る護は苦笑する。何かと、護達だけでは手に余る事件を、彼女に協力してもらっている。だが、ここはあくまでも『相談所』。


「ここはどうしても解決したいけれども、普通の人間ではそう簡単には解決できないような『悩み事』とか『相談事』がある人が来る所なんですよ?」

「それは上もわかってるんだけどさ・・・どうしても、な?」


拗ねるような表情の《窓口》に護は困っている。こうなると、ちゃんと話を聞いてくれるのかが心配になる。


「まぁ、主、護の話だけでも聞いてあげてくださいな」

「むぅ・・・」


渋々《窓口》は返事をする。


「ねぇ、そんなに警察関係者や異端審問官達は無能の集まりなのかしら?」

「言っておくが、ちゃんと解決してる事件もあるからな?」



  ✡



──それは数日前のこと。この町で通り魔事件があったのは《窓口》達もニュースで観た。目撃者の話では、あまりに突然で顔ははっきりとはわからないが、犯人は女性だったらしい。そう判断したのは、走り去る犯人の後ろ姿が、黒のウェーブがかかっている長髪だったから、だそうだ。それに防犯カメラの画像にも映っていた。


「最近、こうした事件が多いですね?主」

「ただの通り魔事件なら、警察に任せておけばいいんじゃないですかね?これが呪具とかが関係するなら、異端審問官達が動きますし」


《窓口》の言葉に、ネロはそれもそうかと思う。ここは『相談所』であって『探偵事務所』とかではないのだ。ただ、今の島の外からの『悩み事』のほとんどは内容が同じようなモノなので、《相談員》の仕事の量には偏りが出ている。


「うーん・・・それはわたしも、どうにかしたいところですけどねぇ」

「心霊現象は《光里(ひかり)家》か《闇路家》くらいしか、担当するのは無理ですしね?」

「ストーカー関係は、情報操作が必要ならば《星野》だし」


《窓口》でもどうにもならないこの状況には、頭を抱えているようで。


「何も手紙は、世界の外からの『悩み事』だけではないですけどねぇ」

「そうだったんですか?」

「そうでなくては、他の《相談員》に仕事がないんですもの」


まぁ、島の外でも警察とかいるし少ないですけれど、と《窓口》はため息をつく。


「割合的にはどれくらいなんです?」

「外:島=2:8」

「島の中の相談って結構あるんですね?」


正直、意外だった。大体の島の中の『悩み事』は各地の相談員の所に直接行くか、遠い場合はお互いに連絡を取り合っており、その過程で《窓口》に来る者もいる。


「まぁ・・・島の中のことは大体、協会の方に行った方が早いですし・・・いいんですけどね?」

「それだと、望さんの負担が大きいのでは?」

「大体、あの人は曲がりなりにも今の協会の会長なんだから、暇でしょうに」


親戚で上司だというのに、この酷い扱いである。望もきっと、忙しいはずなのに。


「主」

「なんです?」

「もしも先程の事件で、護が来た場合ですが」

「その時はその時です」


そして今、二人は護と対峙している。



  ✡



「それで、なんでまた・・・わたしの所に?」

「あ、いや、まぁ・・・その・・・な」


なんでか、護の態度がおかしい。隠したところで《窓口》には、ばれるのだが。


「護、ここに特に理由なくて来たのか?」

「そうではないみたいですけどね?」

「それがな、目撃者の証言で、どうも凶器が曰く付きっぽいらしいんだよ」

「曰く付き、ですか」


そういうことならば、話は別になる。基本的にそういったモノは《現原家》が回収しているが、それでも手が回らず、もし見付けたら代わりに回収してほしいと《窓口》にも依頼されているからだ。拒否しようとしても向こうの方が上手で、とても断りづらい状況に追い詰められるので、嫌でもやるしかないのだ。


「でも、おかしいですね」

「何が」

「そういった曰く付きの刃物はあらかた、わたしの方でも回収していたはずなんですけどね?」

「新たに、何者かが造った可能性というのはありませんか?主」


うーん、と《窓口》は考え込む。


「それは、あり得るかもしれないですね」

「だとすれば、誰が?」

「協会と敵対関係にあるのは、一人しかいないでしょう?」

「・・・神狩か」

「ご名答、例え造ったのが神狩本人でなくても、間違いなく関わってきますよね・・・本当に色々と嫌だわ」


《窓口》はやれやれと頬杖をつき、さらに、ため息までついている。


「あのさ、曰く付きの刃物ってどういうのを回収したんだ?」

「んー・・・例えば『切り裂きジャックのナイフ』とかですね、あとは・・・」

「あ、もういい、それだけで大体どんなのかは予想できるから」


『曰く付き』とはそういうモノだったかと、護は聞いておいて少し後悔した。凶器になった武器や道具等は、人の血を吸っているという事もあってか、妙に殺傷能力が高くなったり、持ち主を破滅へと導いていく。稀にその凶器と相性がいい適合者と呼ばれる者もいるが。その適合者が使った場合の凶器の殺傷能力は、普通の凶器の威力の比ではない。


「そういうモノは、何かと狂気を孕んでますからねぇ・・・適合者以外が下手に触れようものなら、意識まで全部持っていかれますから」

「だが、事件の凶器となれば、俺達も触れない訳にはいかないんだぜ?」

「そしてきっと、その場にいる人達を皆殺しにするんでしょうね?」


当たり前のように、怖い話を《窓口》はする。そういえば、過去にも、似たような事件の凶器だけが見付からないことはあったが。


「全部が全部、わたしも回収はしてませんよ?」

「何も、見付からない凶器はお前が回収してるとは言ってないだろ」

「そういう風に言いたそうですけどね・・・あ、ネロくん、アレ出してください」


ネロはテーブルの隣の棚に置かれた引き出しから、一枚の札を出す。


「一応、ね?」

「これ、どう使うんだ?」


ネロから渡された札は真っ白で、何も書かれてない。パッと見ただけでは何の効果があるのかがわからない。


「条件下で自動的に発動するので、どういう効果かなどは気にしないでいいですよ」

「そうなのか」


若干、不安ではあるが、護は札を上着の内ポケットに入れる。これがどういう条件で、どう発動するのかはわからないが、彼女からしたら、この札も無いよりはマシなんだろう。


「とりあえず、今日はその事を伝えるのに来たからさ」

「そうですか」

「じゃ、戻るわ」

「戻ったらそこは既に惨劇でした、となってなければいいのですけれどね?」

「お前が言うと、まるで冗談に聞こえないからやめてくれ」


バタンと応接室のドアが閉まる。


「大丈夫ですかね?護」

「さぁね?こればかりは、わたしでもどうにもなりませんよ」

「ちなみに、あの札の効果は?」

「・・・それは発動してからのお楽しみです」


つくづく《窓口》は、何を考えているのかネロにはわからない。当の本人は、そんな事にはお構い無しだった。

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