色々な追憶
護の近所の子ども達にもお菓子を配り終えた《窓口》は、荷物をまとめていた。
「じゃあ、わたしは帰りますね」
「毎年、ご苦労なこった」
「今年は目的が一つ、ありましたからね」
あぁ、そうかとソファーに座って護は本を開く。その本に挟まれていた栞を見て《窓口》は意外そうにする。
「護くん、その栞・・・まだ持っていたんですね?」
護が本から出した、一枚の古びた薄緑色の栞。四つ葉のクローバーを押し葉にして、それを栞にしたものだ。
「せっかく、お前から貰ったものだしな・・・それにお前だって、人の事は言えないだろ?」
「そうですね・・・わたしも、護くんから貰ったこの髪飾りを、いつも着けてますしね?」
《窓口》が髪飾りを着けているのは、どこか外に行くか、人と会う時だけだが。
「大体、今はそれがなかったら、お前はどこにいるか周りの奴らが分からない状態になるだろうが」
「あら、キミならわたしがどこにいたって、きっと見つけられるでしょう?」
フフッと笑って《窓口》は玄関の方へ向かう。
「お邪魔しました〜」
「あぁ、気を付けて帰れよー」
バタンとドアが閉まる。護はため息を一つつき、また読んでいる本に視線を戻す。
「全く、アイツはどこか遠くに行くつもりなのかよ?」
《窓口》の言葉を思い出して、護はなんとなく不安な気になる。
「ま、確かにどこにいたって見付けてやるけどさ、絶対に」
一人きりになった、静かな部屋で護は呟く。その言葉は誰に言うでもないモノだった。
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《窓口》が家に帰ると、ネロ達はすでに戻っていた。
「おかえりなさい、主」
「ただいま、ネロくん」
そのまま《窓口》は部屋に戻る。バッグを壁に掛けて、ソファーに座る。
「ふぅ・・・」
おもむろに髪飾りを外して眺める。貰ってから、少しだけ手を加えているが、これは幼い頃に護から貰ったものだ。
「これ・・・何の時に貰ったんでしたっけ?」
貰った時から気に入っていたのと、今は無いと困る(主に周りが)ので着けている為、どういう状況で貰ったのか、すっかり忘れていた。
「まぁいいか・・・」
髪飾りをいつもの場所に着け、《窓口》はテーブルにある手紙の山に手を伸ばす。相変わらず、手紙のほとんどが読まれた後にボックスに放り込まれる。
「はぁ・・・それにしても、人の悩み事は尽きないモノですね・・・だからこそ、わたしもここにいるんですけどね」
ある一通の手紙を読み終えてから、《窓口》は一度、その手紙を棚にある引き出しに入れる。
「困ったことに、ここに来る手紙で深刻なのは、本当に少しだけなんですよね」
いつもの日常だなぁ、と《窓口》は実感する。
「でも・・・あんまりあり過ぎても《相談員》達も大変ですからね、意外とちょうど良いのかもしれないですね」
本棚にあるファイルを手に取り、何ページか捲る。途中のページから資料を抜き、棚から封筒を出す。
「さて、明日も通常業務ですね」
ニッコリ笑って《窓口》は封筒とファイルを本棚に入れる。そのまま作業をしていると部屋の外から、リオネットの《窓口》を呼ぶ声がする。
「あ、そういえば、帰ったらリオにお菓子をあげると約束をしてましたね」
リオネットとの約束を思い出して、慌てて《窓口》は部屋を出ていった。




