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夢現の箱庭  作者: 星咲 美夜
独りぼっちの夢魔
22/225

幸福である日常

《窓口》が望と会っている頃。ネロは応接室の掃除をしていた。

だが、突然、外に繋がるドアが開いた。


「よお、《窓口》はいるか?」


ドアを開けたのは、護だった。


「あぁ、護か・・・彼女なら今、出掛けてるよ」

「そうだったか、悪い」

「まぁそこに座りなよ、何か飲むかい?」


ネロは応接室の隅のキッチンに向かう。


「じゃ、コーヒー」

「砂糖とミルクは?」

「いつも通りで」

「はいよ」


ネロはテキパキとカップなどの準備をしていく。その様子を見ていた護がネロに向かって言う。


「そういや、あの子はどうなるんだ?」

「彼女は出掛けるときに言ってたんだが、一応《夢幻福音の家》に預かってもらうつもりだってさ」

「ネロ、それはいいことなのか?」

「たまに、僕も手伝いに行くついでに様子を見に行けるし、それにあの夢宮の目があるし、きっと大丈夫だとは思うよ」


そうか、と護はソファーに座りなおす。しばらくの沈黙のあと、ネロが護が報告しようとしていたであろう事を聞く。


「それより、今回の事件についてはどうなるんだい?」

「あぁ、それは夢宮家からの要望で、犯人は死亡の扱いにするんだとさ」

「そうか」

「まぁ、全く何も知らない子どもで、親もいないんじゃな・・・罪は罪だが、無知である故ので、悪意があっての事じゃないし、償いはちゃんと理解ができるようになってからって事らしい」


護の報告に、ネロは一旦黙り込む。


「そうだね・・・」

「悪い」

「気にしなくていいさ」


しばらく沈黙が流れる。その沈黙を破ったのは、応接室に入ってきた真夜だった。


「あら、来客中だったのね?」

「真夜ちゃん、お邪魔してる」

「護、コーヒー入ったよ・・・真夜さんも何か飲みますか?」

「あ・・・じゃあ、ミルクがいいな〜」

「わかりました」


ピョンと真夜がソファーに飛び乗る。


「真夜ちゃん、あの子の様子は?」

「普段はリオにベッタリ、あと今まで何も知らなかったからか、リオ並みに知識を覚えていってますよ」

「教育しがいがあるようだな」

「ええ、とても・・・彼も色々な事に興味があって、それだけでかなり楽ですよ」

「真夜さん、どうぞ」


ネロが持ってきたコップを器用に前足で持つと、真夜は一気に中身を飲み干した。


「ふぅ・・・あ、そうそう、あの子ってウサギだったんですね」

「ウサギ?」

「髪も長めでボサボサだったし、所々固まるように絡まっていたから気付かなかったし、今も髪で隠れてるけど、ちゃんとウサギの耳があったのよ」

「へぇ・・・誰が気付いたんだ?」

「ご主人」


まだやることがあったのか、コップをネロに返して真夜はソファーから飛び降りる。


「じゃあ、あたしは戻りますね〜」


そういって真夜は部屋を出ていった。


「なぁ、ネロ、なんでリオちゃんにベッタリなのに、アイツが耳に気付いたんだ?」

「ここに来た時に、身だしなみをそのままにしておけないからって、彼女が髪に櫛を通してたんだ」

「なるほどな」

「たまたま、その時に気付いたんだよ」


ネロは洗い終わったコップを戻して、護と向かい合ったソファーに座る。


「アイツも色々あるんだな」

「他にも、あの子が《夢幻福音の家》に入るにも色々と必要なものがあるもんで、他の子にも頼んでるけど準備してるらしいし」

「そうなのか」

「こっちとしては、働きづめで彼女の方が倒れないかが心配だがな」


それはそれで同居人達は大変なんだな、と護は思うが口にはしなかった。


「アイツも裏でなんかやってたんだっけな」


護は前に力を制限してるときに何かしらやってると、たまに消費に回復が追い付かないときがある、と《窓口》本人に聞いたことがあった。ネロ達はそれを危惧してるのだろうか。


「今回は大丈夫そうか?」

「本人は大丈夫だと言ってる」

「そうか」


そういや力を使うと、ひどく疲れるとも言ってたなぁと護は朧気に思い出す。


「護、そういや今日は何しに来たんだ?」

「ん?ただ今回の件の報告でもと思ってただけだよ、協力してもらったからな」

「それだけか、それなら僕から伝えておくよ」

「悪いな」


護は残ってたコーヒーを飲み干すと、また来ると言って帰っていった。


「全く、ここは退屈しないよ」


ネロはクスッと笑って、自分以外誰もいなくなった部屋を片付ける。



──今日もまた、この応接室の扉は開く。誰かの『願い』や『悩み』の為に。

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