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夢現の箱庭  作者: 星咲 美夜
独りぼっちの夢魔
19/225

監禁からの解放

応接室には《窓口》、彼女の隣にはリオネットとネロ、向かい合うように護と亜夢がいた。


「主、昨日頼まれていた、子ども達全員の情報です」

「ありがとう」

「なぁ、その情報はどっから持ってきたんだ?」


護は正直な疑問を口にする。その疑問を《窓口》は、そんなのわかってるだろうにと、不思議そうな表情で答えた。


「え?もちろん《情報屋》からよ?」

「《情報屋》って、どこの?」

「どこって《星野》のあの子よ」

「あぁ、あの子か」


《星野》というのは、島一番の《情報屋》の家だ。どんな情報でも持っていると専らの噂だ。


「とりあえずリオ、ここにある子ども達覚えておいてくれる?」

「・・・うん」


《窓口》がリオネットに情報の紙束を渡す。


「しかし珍しいな、リオちゃんが部屋から出てきてるなんて」

「・・・」


リオネットの反応はない。相変わらず伏し目がちで無表情だ。


「・・・怒ってる?」

「・・・」

「大丈夫よ、気にしてないみたいだから」

「・・・あぁそう」


《窓口》が気にしてないと言うならそうなんだろうが、ここまで無反応だと、自分は嫌われてるのではないかと護は思う。


「無反応というわけではないの、ただ・・・リオは感情が表に出にくいだけだから」

「お前と違って、それ俺はわからないからな?」


それはそれで何か寂しい気はするが、護は本題に入ることにした。


「それで、一体どういう方法で子ども達を見つけるんだ?」

「リオに寝てもらったら、亜夢ちゃんに相手側には気付かれないように、傍にいてもらおうと思ってます」

「そんなんで大丈夫なのか?」

「一応、念のため鍵とかは用意しておきますよ」

「鍵ってそんなことにも使えるのか?」

「使えますけど・・・わたしがキミにあげた鍵を、キミが使ったところで、夢の中でただ迷子になるだけでしょう?」


その言葉に間違いないだろう。無言で護は頷く。


「だが、亜夢さんやリオちゃんが戦闘とかになったらどうするんだ?」

「護くん、彼女達もここの同居人ですよ?それくらいなら大丈夫です」


その言葉に亜夢もリオネットも頷く。正直、ここの女性陣が戦闘をしているのは見たことはないが、実力はあるようだ。


「で、この家で実行するのか?」

「ここはそういった夢魔とか妖魔とかは、そうそう立ち入れないから難しいんじゃないかしら」

「そうなのか?」


意外な言葉に護は少しだけ驚いた。なんだかんだ色々な人達が出入りしてるのに一応、セキュリティ対策はあるらしい。


「とりあえず、どこか良い場所があればいいんですけどね・・・」

「・・・上司にでも確認とるか?」

「できますか?」

「そもそも協力要請したのはこっちだしな」



  ✡



──夢現の街の中心部。ここは色々な組織の本部が集まる場所。今、その中心部にある一番大きな建物に《窓口》達はいる。この建物は《箱庭魔法協会》という《魔術師》や《魔法使い》、妖魔等が魔力を持たない者との共存を目的とした組織の本部だ。この《協会本部》に護が所属する《怪奇現象捜査課》もここにある。護が受付を済ます間、《窓口》達はロビーのソファーで待っていた。この《協会本部》にも日々、色々な依頼や相談が持ち込まれる。《窓口》も時々、ここにくる依頼を貰ったりしている。


「空いてる部屋があるから、使ってかまわないってよ」

「そう、ありがと」



  ✡



空いている部屋は会議室のような広い部屋だった。


「さて、始めましょうか」


《窓口》は左肩からたすき掛けにしていたバッグの中から、小さなアロマポッドと小さなガラス製の瓶を取り出す。


「その瓶の中はなんだ?」

「睡眠作用のある、特別に調合してもらったアロマオイルだとか色々」

「お前が調合できるのか?」

「ふふっ、実は相談員の中には、こういうのを調合できる人がいましてね」


脇ではネロが仮眠室から持ってきたであろう、布団を敷いている。


「リオ、準備はいいかしら?」

「うん、大丈夫」


そういうと、リオネットは布団に潜りこむ。


「なぁ、あの格好のままで寝れるのか?」


護は小声で《窓口》に聞く。


「大丈夫なんじゃないかしら?多分・・・ね」


しばらくすると、リオネットは寝たのだろう、亜夢もいつの間にかいなくなっており、部屋が一気に静かになる。


「そういえば、アロマ()いてるのに俺達は眠くならないんだな」

「だから言ったでしょう?『特別に』調合してもらったって」


特別というのは、そういうことかと護は納得する。そんな護を尻目に《窓口》はバッグから一つの鏡を取り出す。


「なんだ?その鏡」

「これは『夢映しの鏡』という、身近な人が見る夢を現実にいながら覗ける魔法の鏡です」

「へぇ、普通の鏡に見えるけどな」


鏡を机の上に起き、《窓口》が手をかざす。少しぼぅっと光り、鏡にはリオネットと、その周りの夢の世界を映しだす。


「なぁ、こういうのって詠唱とかしなくても使えるんだな」

「あぁ、それは、わたしとか夢宮だとか強い魔力を持ってる人に限られるわ」


普通の魔術師とかですら難しいことを、彼女は涼しい顔をしていとも簡単にやってのける。そんなことを知ってか知らずか、夢の中のリオネットは暗い森の道を進んでいた。よく見ると、リオネットの近くでは、一匹の藤色の蝶が飛んでいる。


「あれ?この蝶は・・・?」

「亜夢ちゃんですよ」

「これが?」

「相手側には気付かれないようにするのにね」


夢の中の森を歩くリオネット。傍らに藤色の蝶となった亜夢。


「亜夢ねぇ・・・何か、ある?」

「今のところ特にないみたいですよ?」


しばらく進んでいるが何もない。


──ねぇ。


「・・・?!」


声が聞こえる。声だけで性別が判断はできないくらいの幼い声。

周りを見ても何もない。


「亜夢ねぇ、何か・・・いるみたい、だよ」

「何かあった?」


その様子を鏡から見ていた《窓口》達もリオネットの反応に気付き『鍵』を出す。ハートの形をした金色の鍵だった。


──ねぇ、一緒に遊ぼう?


リオネットは声の主を探すも見つからない。


「・・・どこ?」


──こっち。


リオネットは亜夢の方に目をやる。


「リオちゃん、とりあえず声のする方に行って」


小声で亜夢はリオネットに指示を出す。リオネットは小さく頷いて、声のする方へ向かう。


すると目の前に《窓口》と心夜が見つけたドアと同じ色と形をした、小さなドアがあった。


「・・・」

「ご主人からの指示、待つ?」


開けて中に入れば帰れなくなるかもしれない。そんな不安からかリオネットはドアを開けない。


「《窓口》、どうする?」

「そうですね・・・亜夢ちゃんがいるから、そのまま進んでも大丈夫でしょうけどね」


そういうと《窓口》は紙とペンを取り出す。


「えぇっと・・・」

「主、貸してください」

「いつも悪いね〜」


そういってネロが小さな紙にサラサラと魔法陣を描き始める。


「滅多に使わないから、この陣の描いた紙のストックがなくて」

「家を出る前に『忘れ物はないか』とあれほど言ったのに、主はいつもです」

「まぁ、何はともあれ」


陣の描かれた紙を持って彼女は、鏡を見ながら話を始める。


「亜夢ちゃん、聞こえるかしら?」


──聞こえてます


「リオにそのドアの向こうに行ってもらって、何かあったらその時は、亜夢ちゃん」


──わかりました


そういって、鏡の中の亜夢はリオネットの髪に止まる。まるで髪飾りのようだ。


「リオちゃん、ご主人から、そのまま進んで大丈夫みたい」

「・・・わかった」


そして二人はドアの向こうへと入っていった。

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